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5章 15話 天に轟く雷

「ッ~~~~~~~~~~~~~!」

 蓮華の能力により帯電した血液が月読を濡らす。

 月読の体が一瞬痙攣した。

 ほんの一瞬。

 だが、それで充分。


「――――《悪魔の四肢》」


 天の右腕に光の血管が走る。

「させませんよ……!」

 見えない斬撃が天の大剣を破壊した。

 天の武器は一瞬で両断され、武器としての役割を奪われる。

 ――だからどうした。

 剣を失っても、今の天ならば拳一つが十全の武器となる。

「っらぁぁぁぁぁッ!」

 脳のリミッターを外し、強化された腕力が打ち出される。

 月読は腕をクロスさせてガードの姿勢をとるが、

「ぎ、ぅ……ッ!」

 両腕が交差した部分を打ち抜く右ストレート。

 それは月読の腕をへし折り、吹っ飛ばした。

 空中で回転しながら軽々と飛ばされる月読の体。

 彼女は空中で態勢を整え、脚を床に触れさせてブレーキをかけようと試みるも意味をなさない。

 彼女の勢いは衰えることなく、そのまま壁に突っ込んだ。

 壁が壊れた衝撃で砂煙が舞う。

「大丈夫か蓮華!」

「油断しないでッ!」

 負傷した蓮華へと駆け寄ろうとする天。

 だがそれを制したのは蓮華自身だった。

 彼女は傷を感じさせない動きで――折れた天の大剣へと向かって跳んだ。

 蓮華が手にしたのは刃の部分。

 そこに雷撃を纏わせ――

「トドメよ」

 ――刃を高速で射出した。

 おそらくレールガン、あるいは電磁加速砲と呼ばれる攻撃。

 あれほどの金属片を高速で撃ちだせば、それが発揮する威力はもはや武器というよりも兵器に近い。

「《無色(インビジブル)の運命(・フォーチュン)》」

 しかし高速の金属砲は砂煙の中にいるはずの月読に到達するよりも早く、見えない斬撃によって縦に引き裂かれた。

 左右に分かれた刃はそのまま壁を貫く。

 もしもあれが当たっていれば、人体など肉片となっていただろう。

「迎撃のせいで、奇襲し損ねてしまいましたね」

 晴れた砂煙の中で月読は微笑んでいた。

 折れた両腕を垂らしながら。

 彼女はあの砂煙の中で、天たちへと見えない斬撃を放つ準備をしていた。

 しかし蓮華が攻撃をしたことで、月読はその対応として一手を浪費することとなったのだ。

 蓮華の攻撃は、月読が狙った起死回生の機会を潰したのだ。

「痛い、ですね」

 月読は折れた腕を見下ろす。

 腫れあがっている腕。

 力が入らないのか、彼女に腕を持ち上げる様子はない。

「でも残念ながら、わたくしの能力に両腕は必要ありませんよ?」

 そう微笑む蓮華。

 きっとそこまで織り込み済みの防御だったのだろう。

 彼女の攻撃に動作は必要ない。

 命さえ守れたのなら、両腕など捨てても支障はないのだ。


「いいえ。もう終わりよ」


 そう宣言したのは蓮華だった。

「もう、アタシたちの勝ち」

 蓮華はそう突きつける。

 一切の迷いなく。

「勝負は、最後まで分かりませんよ?」

 しかし月読は態度を変えることはない。

 天は武器を失い、蓮華はもう動ける体ではない。

 一方で、月読も両腕を使うことは難しい。

 状況を羅列するだけなら、まだ勝敗の行方を断定するのは時期尚早。

 しかし蓮華の瞳にはゆるぎない確信があった。

「いいえ。もう分かってるわ」

 蓮華は笑う。

 その時、バチリと音が鳴った。

 その出所は、さきほど蓮華が撃った刃の破片。

 真っ二つにされたそれが紫電を纏っているのだ。

 帯電した二つの刃。

 それは互いに干渉しあい、磁石のように引き寄せあう。

 そして――結集した。


 ――月読を左右から挟み込んで。


「ッ……!?」

 月読の脇腹へと左右から刃が突き刺さる。

 彼女の口から血が弾けた。

「良かったわね。さっきの攻撃を縦に斬り裂いてて。もし横に裂いてたら、頭と股に刺さっていたもの」

 月読によって両断された刃。

 蓮華はそれをとっさに利用したのだ。

 すでに対処を終えた攻撃だと、月読はそれを意識から外していた。

 しかし蓮華は、そこからさらに手を打った。

 彼女の戦闘視野が、月読の対処能力を上回ったのだ。


「さよなら。月読先輩」


 蓮華が、最大出力の雷撃を放った。


 次回、決着です。


 それでは次回は『衝き穿つ雷閃』です。



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