表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

地震のあとで。

 私は地震が起きてから、市の配布広報誌やウェブニュースサイトや新聞で災害関連の報道をずっと読んでいた。

 「やはり僕の言った通りだった。こんな日はいつかやってくるんだ」モグラ男はこの日に関する準備に余念がなかった。私の父は生活日用品や地下シェルターを揃えていた。たとえば当日朝の食事から数えて少なくとも半年以上は生き延びていける分だけの備えを蓄えていた。

 「それだけあれば、僕たちは生き延びていけるんだよ」私は友達に学校でその話をした。

 「なんか知っていたみたいな言い方だよね、それって」かえるちゃんはそう言った。

 「本当に知っていたのかもしれないし、そうじゃないかもしれないけど。準備はしていたんじゃないかな」

 「でも、シェルターってどうやって作ったんだろ」香深はそう訊ねた。

 「穴を掘ったんだよ。不思議の国のアリスみたいにさ、どこかに繋がる穴が元々あったんだよ。私の父さんはそれをより深く掘り進めただけなんじゃない」実際に私はそう思っていた。私はその穴に惚れ惚れするぐらいの好意を持っていた。いつかそこに潜ってみたいとすら。

「じゃあもしその穴からヴィランが出てきたら、どうする」

「出てこないよ。せいぜい小さな虫とかミミズぐらいじゃない」

「違うわ。モグラ男よ」私たちは以前見たアメコミ映画に出てくるモグラ男のことを考えた。確かに共通点はある。地中に住んでいるところと、人間よりも生活品を揃えることに余念がないことと、ほんとに人を食べるところである。モグラ男はグルメなんだってことも私たちは知っていた。豊富なタンパク質を欲していることも。人が一番含有率の高いってことも。

「変なデマとかじゃなくて」

「変なデマとかじゃなくてさ」かえるちゃんはそう言った。

 「もし何か欲しかったら言ってね。私が頼んでおいてあげるから」話題を変えるつもり私は言った。

 「杏は友達だから、ちゃんと言うけどさ。あなたの父さんがモグラ男だったんじゃないの」私は初めてそう言われて、父親がモグラ男であることに気づいた。そのことに疑問にすら思わなかった。

 私はそうした疑問を払拭したかった。双葉さんやかえるちゃんが言ったことは、本当は私自身も考えていたことではあったし、もし確かめることが出来るなら、そうしたかった。

 「じゃ、決まりね」と彼女は言った。

 「何をするの」私は言った。

 「シェルターを調べるの」

 「マジで」香深は言った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ