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第1話 天女達の街

初めての投稿です!!おかしな所あるかもしれませんが温かい目で見ていただけたら嬉しいです(❁´ω`❁)

「ごめんね…美幸…!」

「すまない…」


涙を流しながら謝る両親。

私の手を引く両親に"せげん"と呼ばれていた人。

私は何が起こっているのかなんて分かっていなかった。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈




「わあ…!」


"せげん"と呼ばれた人に連れられ、華やかな街へ来た。

大きな門をくぐると多くの人達が行き交い、格子のようなものの中には天女と言える程の美しい女性達が並んでいる。


「ねぇ、せげんさん。ここはどこ?あの人達は天女さま??」


「ここは吉原だ。お前もあの天女さまになるんだよ。」


「私もあんなに綺麗になれるの?!」


「そうだ。お前はあの人達を超えれるよ。」

(この子は下級武士の子だし、芸は一通り出来るだろう。顔も美しい。)


「お前は吉原一の大見世、稲光楼に連れて行ってやろう。」


「?」


美幸はこの人が何のことを言っているのか分からなかった。

ただ、あの美しい天女さまのような人達の中に入れることを喜びに感じていた。





ここがあの美しい人達にとっては地獄なのだと知らずに。




しばらく周りを見渡しながら歩くと、女衒が口を開いた。


「ついたぞ。稲光楼だ。」


そこには見たこともない程大きく、美しい建物があった。

扉をくぐると、美しい衣を身にまとった女性達が忙しそうに動いている。

美幸が口を開けて驚いていると、そこそこ年配の女の人が話しかけに来た。


「まぁ!平八さん。久しぶりだねぇ。また美しい子を連れてきてくれたのかい?」


「あぁ。久しぶり女将さん。この子は武士の出だし、よく見てくれ、顔も綺麗だろう。」


「ま〜。貧相な衣に貧相な体。でも凄く綺麗な顔してるじゃないか。」


「女将さん、この子は売れるぞ。」


「そうだねぇ。喜瀬川んとこにつけさせようか。」


「おお、喜瀬川花魁の禿になれば出世間違いなしだなぁ。良かったなぁ。美幸。あの天女様になれるぞ。」


あまりに早い展開に美幸は戸惑っていた。

両親は居ないし、ここがどこかもイマイチ分からない。

でも楽しそうなところだなぁ、と美幸は思った。


「あんた、美幸って言うのかい。年はいくつになる?」


「はい。9つになります。」


「受け答えもはっきりしていていい子だ。天女さまになりたいのかい?」


「はい。」


「よしよし。きっとなれるさ。」


「ちょっと!そこの!」


「へい」


女将さんは近くの下働きの男性を呼び止めた。


「喜瀬川を呼んできておくれ。」


(きせがわ??人の名前なのかな)


女将さんと話をしていると、せげんさんはお金を貰って帰って行った。美幸は大金を前に、何故あんなに貰えたのだろうかと不思議に思っていた。


その頃、襖が開いた。

奥の部屋から、この世のものとは思えぬ程の美しい人が入ってきた。赤く豪華な着物を着、金地に白の刺繍が施された前帯を締めている。その女からは、なんとも言えぬ妖艶な雰囲気が漂っていた。


「あぁ、喜瀬川。来たのかい。」


「おかさん、何の用でありんすか。わっちは花魁道中があるので急いでいるのでありんすぇ。手短にお願いしんすよ。」


喜瀬川と呼ばれたその人は、鈴のような声で凄く美しい言葉を話した。その姿だけで人を魅了し、口を開けば視線を集める。まさにトップの花魁であった。


「あぁ、そうだったねぇ。じゃあ要件を話すが、この子を喜瀬川の禿にしてやってくんねえか。」


「わっちゃあ嫌でありんす。わっちは3人の禿と3人の新造を抱えているのでありんすぇ。おかさんも知ってるでありんしょ。」


「じゃあ1人禿を減らしてこの子を入れなせえ。」


「そこまでしてこの子を入れようとしんすか?

小さい時からわっちの元にいて、一緒にやってきたあの子達6人を手放すつもりはありんせんよ。」


「この子を入れないのは許しませんよ。断る前にこの子を見てみなせえ。ほら、美幸。琴でも弾いてみんか。」


いきなり話をふられて美幸はびくっとした。

しかし、芸の中でも琴は得意分野だ。自分を睨む、この美しい人を驚かせてみたい。


「はい。」


「ほら、そこの!琴を用意せんか。」


そうやって美幸の前に琴が準備されている間、喜瀬川は黙ってその様子を見ていた。


「さあ、美幸。花魁の御前だ。失敗すんでねえよ。」


美幸は息を吐き、集中した。これ程美しく、妖艶で、どこか恐ろしい人の前で弾くのはすごく緊張する。美幸は今このタイミングが、己の人生に大きく関わっている感じがした。


〜♪


美幸は素早く、慣れた手つきで弦を弾いていく。その音色は、そこにいた全ての人を魅了した。


喜瀬川は目を大きく見開いて美幸を見ていた。

(わっちは6つでここに来た…それでも9つの頃こんなに琴が上手かったでありんしょうか…?)

この子は才を持って生まれたのだ。この子の成長を近くで見ていたい。喜瀬川はそう強く思った。


「…わかりんした。こなたの子をわっちの禿にしんしょう。」


「…お、おお。良かったなぁ。美幸。」

女将さんは、9つの子供がしたと思えぬ演奏にまだ戸惑っているようだ。


「…かむろとはなんですか?」


「この喜瀬川の見習いとしてお前は働くんだよ。いずれこの喜瀬川のようになるためにな。」


「…うれしいです。喜瀬川さま、よろしくおねがいします。」


「様付けなんてするものじゃありんせんよ。これからわっちは美幸の姉でありんす。姐さんと呼びなんし 。」


「…わかりました。喜瀬川姐さん。」


先程までとは打って変わって、優しく微笑みを浮かべて喜瀬川は言った。少しの微笑ましい会話の後、女将は喜瀬川に訪ねた。


「…さてと、喜瀬川。この子の名前はどうする??」


「あぁ、、"しゆき"はどうでありんすか?なるべく本名に近い方が早く馴染むでありんしょ。」


「そうだねぇ。美幸。お前はこれから"しゆき"だ。また名前が変わることもあろう。美幸という名は捨てるんだよ。」


(なまえを…すてる?この、お母様とお父様からから貰った美しい名前を。)


「…はい。」


嫌だったが、反抗など出来ず、暗い表情で返事をした。


「あと、言葉も直すでありんすぇ。これからはわっちの言葉を真似しなんし。」


「…わかりんした。」






こうして美幸は新造までのあと5年を、喜瀬川花魁の禿"しゆき"として生きることとなった。




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