栞と黒船にドキドキ
新入部員2ー1
「お疲れ様でーす」
部室のドアを叩き3度目の入室をする。
「あ!はじめちゃんお疲れ様」
笑顔で挨拶の返事をしてくれるマドカさん。
しかし、その隣に見慣れない女性が立っていた。
身長はマドカさんより低い。多分150前後だと思う。髪をポニーテールにして何故か体操服のジャージに身を包んでいる。
だがそのジャージの上からでもわかる。ジャージを前に押し上げる豊満な胸。
マドカさんもそれなりにあるようなのに、さらにドンっと主張している。
「えーと、、、新入部員の方ですか?」
「はじめちゃん、彼女は私の同級生で野球部のマネージャーよ。棗って言うの。
だから、私の友達に鼻の下伸ばすのやめておきなさい」
「あー!!あなたが噂のはじめちゃん!佐々木 棗って言います!
マルが言う通り確かに可愛い顔してるね!」
「ナツメっ!!」
マドカさんが棗さんを勢いよく止める。
「えーと、、、まるって…?」
「まどかのアダ名。まどかって円って書くでしょう。だからマル」
「具体的に説明しなくてよろしいッッ!!」
2人のやりとりを見ていると凄く仲が良いことがわかる。
「じゃあ目的も果たしたし、そろそろ部活始まるからもう行くねー!!
はじめちゃん、マルのことよろしくねー!!」
小さな体ながら台風のように過ぎ去って言った。
「何だったんですか?今の先輩は、、、?」
「気にしない方がいいと思うわ、、」
文芸部の部室は通常の教室のようなつくりになっており
真ん中に3人がけの長机が2つくっつけられ、それぞれ椅子が三脚と両側に一脚づつ置かれている。
マドカさんは前回来たときど同様に窓側の背面の椅子に座っている。
おそらくマドカさんにとっての定位置んだろう。
どこに座ればいいか若干悩んで、この広い空間で彼女から遠くの位置に座るのは失礼かと思いマドカさんの正面に座ることにした。
「ここいいですか?」と念のために聞いて見ると「えぇ」とだけ答えが返って来た。
そこで、見覚えがあるものにきづいた。
「マドカさん、その栞って、、?」
「あぁ、つい可愛くて同じの一緒に買っちゃった。お揃いね」
パンダ柄の栞がマドカさんの手元に置いて会った。
可愛らしい栞でお揃いだといらぬ疑いをいかけられる可能性があるが、どうせ2つ揃うのはこの空間のみなのだから良いだろうとグッと堪えた。
「すみませーん!文芸部に入部しにきましたー!!」
途端にガッと勢い良く開いたドアの音がそんな沈黙を破った。
遠慮や礼儀などないように無作法に開けられたドアにビックリしてしばらく固まった後、首だけ回してマドカさんの方を見てみた。
しかしマドカさんも他の新入部員に期待していなかった事もありドアほ方を見て固まっていた。
そのまま再び首を回して入口に目線を戻して見る。
1年生のためやや小柄だが、肩までかかるほどの髪はクルクルとしていて目を引く。そしてその顔はシンプルだがしっかりと化粧をしており可愛さを引き出している。
服装も入学してまだ1ヶ月も経っていないが首元のネクタイを緩くし、上から2つのボタンを外すといった先輩方がよくしている制服の着崩しかたをしている。
、、、ギャルだ!
文芸部にギャルがきたぞ!?
あれか、黒船の到来なのか!?文明開化の時なのか!?
しかしこのギャル。先ほど会った佐々木棗先輩と同じくらいの戦闘力をお持ちのようだ。
黒船は本当に大砲を積んでいたんだ、、、
「あれ、、、?もしかして高橋、、、はじめ君?」
「あれ?東さんだっけ!?」
派手な彼女は、驚いて気づかなかったけど同じクラスの東 凛花だった。
「高橋君文芸部だったんだー、意外ー。運動部だと思ってたー。
あ、先輩ですかー?高橋君と同じ1ー7の東 凛花って言いますー。よろしくお願いしますー」
東さんは屈託のない笑顔で挨拶をした。
短くも静かだった部室がこれから騒がしくなる予感がした。
余談だが、その後クラスメイトということもあり俺は彼女のことをアズマ。彼女はハジメと呼ぶようになった。
そして何故か急におはようからおやすみまでマドカさんからのメールが届くようになった。