姉の婚カツ(ピースオブレペンス)
すみません。予約放置してたら間違って上がってしまいました。
翌日。朝一番で制服は返ってきた。
「学園生活味わえて楽しかったわ」と短い手紙が添えられていた。
制服は予備のうちの一着だったからそんなに急いで返してもらわなくても良かったのだけれど。
生徒会協力の下、数日間、昼以降の授業を姉に代わってもらっていたのだ。
もちろんタダで協力してくれたわけではない。アルミナとプリムラが用意してくれた数通の舞踏会だか夜会だかの招待状と引き換えだ。
自分が出席しない予定の招待状を紹介状がわりに知り合い(特に商人)に回すことは貴族間ではよくあるらしい。渡した人が粗相したら、橋渡しした貴族が笑い者になるので信頼できる人にしか渡さない。
二人は今までも、何枚か「気が向いたらどうぞ」と渡してくれていた。今まではおそれ多くて出席できなかったが、姉の性格と用途を伝えたら、数通選んでくれたのだ。
『同年代のいいところのお坊っちゃんとの出会いが山のようにあるあんたと違って、私は自力で婚カツ励まないと。気づいたら番頭と結婚させられたり、どこぞのじいさん伯爵の後妻に、なんてまっぴらごめんだわ』
婚カツにこだわるなら、ナイラがこの学園を受験すれば良かったのだ。
『勉強なんてめんどくさい』って返されたけれど。
作戦を知っているのは、生徒会の一部と王子・アルミナ・プリムラ・レイス様。
姉がつんつんした態度でトラブルを起こすのではないかと心配したが、ノートは完璧にとられているし、大きなトラブルもなかったようだ。昨日の一件以外は。
通学路での告白めいたことは瞬時に校内で噂になった。
「声とお日様のような顔だけはいいけど、実際は黒幕」って手紙に書いただけなのに、なんてこと広めてくれるんだ。お姉ちゃん!
お陰で王子と二股疑惑が出てるじゃないか。
「君たちを囮にしてごめんなさい」
レイス様は素直に私たちに頭を下げた。おー、素直に謝る姿は妙に可愛らしかった。
こんな弟欲しかったな~。
……謝りに来さえしないディアス様とは大違い。
結局、補充ができるまでレイス様が書記をすることになり、アズライト様もアルミナを生徒会に関わらせないことを条件に会計になった。
でも、レイス様が実質生徒会にいるのは一学期の間だけとなってしまった。
……そしてもう一人。
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「最近、あれと仲良くしているのね」
妹が冷たい声で言った。
「別にそういうわけでは。押し付けられたから仕方なく……」
「……わかっているのでしょうね」
「……うん。僕も気持ちは同じだ」
答えを口にしながら、僕は自分に問いかけていた。
『お前、俺はアズライトを生徒会に引き込めるなら、お前を勧誘するのはやめるって言ったけれどな、あいつを怪我させるなんて聞いていないぞ。生徒会室で……俺の前でだったから注意できたけれど、人気のないところで取り返しの付かないことになっていたらどうするんだ』
いつもは僕と仲良くなろうと下手に出ている王子が、その日だけは女子組が席をはずしている隙に怒りを抑えた声で言ったのだ。
彼は、僕の知る王族と……
本当に……同じなのだろうか。
ーー貴族街・・???にて