1話 転校生 2話 こっくりさん
初回なので2話ありますが、基本的に1話だけになると思います。
転校生
キーンコーンカーンコーン。
この南第三小学校6年2組に、転校生がやって来た。
「彼女の名前は桜井美月ちゃん。みんなよろしくしてやってくれ」
「どうも、よろしくお願いします」
物静かそうな女の子だ。
するとクラスの問題児、健吾くんが手を上げた。
「どこから転校してきたんですかー!?」
「東小学校です」
「身長と体重はー!?」
「言えません」
健吾くんに続いて、問題児2の大地くんが手を上げた。
「ぶっちゃけスリーサイズは~!?」
「言えません」
「美月ちゃんはどこまで大人の階段を上ってるん━━━━」
「彼女への侮辱は許さない!」
先生は突然叫ぶや否や、チョークを3本大地くんに投げた。
「ぐはああああああああああっ!!」
大地くうううううううううん!
大地くんは盛大に吹っ飛ぶと、教室の後ろの壁に背中を激突させ、ずるりと落ちるとそのまま動かなくなった。
「いや、あの、先生……俺たちはそういうつもりじゃ……」
健吾くんが狼狽える。
「俺たちはただ……今時の会社の面接ごっこをしたかっただけ━━━━」
「うるさいぞ健吾!」
先生は素早いモーションで黒板消しを健吾くんに投げる。
「覚えてろよおおおおおおおおおお!」
何で悪役の捨て台詞!?
健吾くんは大地くんと同様に後ろまで吹っ飛ぶと、同じように動かなくなった。
「この子を傷つける者は誰であろうと私が許さない!」
それだけ聞くとかっこいいけど、あんたただの犯罪者じゃないか!
「ごめんな……嫌な思いをさせてしまって……。でもちゃんとお前のこと、守るからな」
先生の言葉に、美月ちゃんが頬を染める。
「あ、あなた……」
お前もあなた……じゃねえええええええええ!
僕の目の前で今、とんでもない大事件が起こってるよ!
先生は教卓の前にたつと、堂々と言い放った。
「いいか!? お前たちが美月に何かしたら、成績は最低になると思え! だが、話しかけないで仲間外れにしても、成績は最低になると思え! わかったか!?」
もう圧政じゃないか!
最悪だよこの先生! 自分の気にくわない奴を成績で脅すのと同レベルの、もうこれは教師ならぬ狂師だよ!
その時、ガラッと教室のドアが開いた。
隣のクラスの坂田先生だ。
「先生! その子うちのクラスの転校生じゃないですか! 何やってるんですか!」
「うるさい! 僕たちは一秒でも一緒にいたいんだ!」
「児童に恋しちゃってるんですか!? それ犯罪ですよ!」
「愛さえあればそんなもの関係ないんだよ!」
「頭おかしいんじゃないですか!? とりあえずその子を返して!」
坂田先生が二人に近づこうとする。
「どこまでも僕たちの愛を現実が邪魔するんだな! 美月! 愛の逃避行だ!」
「はい! あなた!」
先生は美月ちゃんを抱き抱えると、窓ガラスを割って外へ飛び出す。ここ4階ですけど!?
それを追って、坂田先生も窓から外へ飛び出した。だからここ4階ですって!
校庭を見ると二人でおいかけっこをしている。
次の日、担任の先生が代わった。
こっくりさん
「「こっくりさんこっくりさん、たかしくんが好きなのはどっちですか?」」
ある日私と文音ちゃんは、たかしくんがどちらを好きなのかということで口論になり、こっくりさんに聞こうという話になった。
私たちがこっくりさんの儀式を終えると、煙がもくもくと立ち上る。
そこから白装束の男が現れた。
『トリックオアトリィィィィィイイイイト』
「トリックオアトリート!?」
まさかのハロウィン野郎が出てきたことに私は驚愕した。ちなみに文音ちゃんはお化けが苦手だということで、こっくりさんを見た瞬間に気絶してしまった。
こっくりさんは私のことをじろりと睨む。
『で? 用件は?』
「あっ……トリックオアトリートのことは無視ですか……あ、あのっ、たかしくんが好きなのは私と文音ちゃん、どっちなんですか!?」
私がそう聞くと、こっくりさんは心底嫌そうに、
『あーはいはいまた色恋沙汰ね……お前たちも飽きないでちゅねー☆ 何でそんなに頭の中お花畑なのか僕にはわかりまちぇーん☆』
うっざ! このこっくりうっざ!
『あ、もうそろそろアンパ○マンが始まるじゃん! じゃあ俺帰るから、はいこれケータイ番号。じゃあまた後ででもかけてくれ。バイバイキーン』
ア○パンマン!? こっくりアン○ンマン見てるの!?
しかし何か言おうとしてみたけども、こっくりは既にいなくなっていた。
「仕方ない。ちょっとかけてみるか」
私はケータイに指定された番号を打ち込む。ていうか幽霊がケータイ持ってるってどうなの……?
トゥルルル……トゥルルル……ガチャッ。
「あ、もしもし? 私先程の者ですけど……」
『もしもし、ひゃっくり、こちらひゃっくりさん、ひゃっくり』
「ひゃっくりさん!? てかそのひゃっくりわざとらし過ぎですよ! もっとひっく……ひっく……みたいな……」
『……….ひっく』
「おせーよ! もう取り返しついてねーよ!」
『いきなり口が悪くなったひゃっくり。うるさいから切るひゃっくり』
「何そのキャラづけ! 語尾が無理ありすぎる━━━━」
ツー……ツー……ツー……ツー……。
「切られた……もう一度電話するか……」
トゥルルル……トゥルルル……ガチャッ。
「あ、もしもし? いきなり切るなんて酷いじゃないですか」
『アハハハハハハハハッ!』
「ちょっと聞いてるんですか?」
『アハハハハハハハハッ!』
「ってあれ、聞いてない?」
『あんパンとか不味くて食えねーよ! そんなもの貰っても困るだけだろハハハハハハハハハッ!』
「そこ笑うところ!?」
『食パンマン来たあああああっ! 食パンは美味しい! だから食パンマンが大好きなんだ!』
「テンションおかしくない!? おかしすぎて言葉が英文訳した日本語みたいになってるよ!」
『うわっこのセレナ信者うざっ! 「カスミこそ至高、セレナとか頭でっかち」と……。別にカスミ好きじゃねーけど(笑)』
「アンパン○ン見ながらカスミ信者に成り済ましてポケ○ンヒロイン叩きしてる最低野郎だよこの人! というか子供番組好きですね!」
『ん……? あれ、通話しっぱなしじゃん。もしもーし』
お、やっと気づいてくれたようだ。
「もしもし? さっきあなたを呼び出した者ですけど……」
『あーさっきのね。んであぁ、たけしくん? たけとしくんだっけ? あー今占ってあげる。ってやばっ! こいつら二人ともホモだ!』
「いらない情報をありがとうございます! たかしです! たかし!」
『あーはいはいたかしね。うむむむむむはっ! 見えた! 見えたぞ!』
「おおっ! でその人は!?」
私は先を急かす。
こっくりは一拍置くと、その答えを言い放った。
『たかしが好きなのは……郷田くんだ! つまり奴もホモだ!』
「またホモかいいいいいいいっ!」
「しかしこの二人、相当なイケメンだな……食っちまいたいぜ……じゅるり」
「お前もか!」
私はケータイを床に叩きつけた。