間奏
「最近、ずっと考え込んでるね?」
そこはいつものバスケットボールコート。ティムはコートの外に座り込んでいた。
「邪魔だったか?」
「いや、全然。でも、今日も試合には出てくれないんだよね?」
ティムは遠い目をして、軽くため息をついた。
「そうだな……。いや、遠慮しておこう」
スティーブは呆れた、というジェスチャーをしながらも俺の隣に腰を下ろした。彼は「元気がないティムなんてつまらないよ」とは言いながらも、毎日のように俺に声をかけてくれる。
「……」
気にかけてくれるスティーブに対して悪い気はするが、それでも俺の心は晴れない。
(何でこんなにモヤモヤしてるのか……。いや、原因はわかっているんだがな)
「この前のライブでしょ。ティムが塞ぎ込んでる理由は」
「……」
そうだ、その通り。俺だって原因がライブにあることはわかってるんだよ。
「あのライブで何かあったの?」
それだ。俺もわからないのはそれなんだ。
モヤモヤの原因がライブにあるとして、何故あのライブが俺にこんなにも影響を与えてしまっているのか。それがわからないのだ。今、俺の心にあるのは圧倒的な『不快感』だ。特段不思議なことだったわけじゃない。普通に感動したし、たくさんのインスパイアは受けたけども、それはマイナスなことではない。むしろ俺の気分を良くしてくれる時間だったはずだ。
「何、なんだろうな?俺にもさっぱりわかんねぇや」
「そんなこと言ったって、こればっかりはティムにしかわからないんだから。何か普通のライブじゃありえないようなこととかなかった?」
普通のライブでは起こりえないといえば……。
(……そういえば、キスされたな)
「――ハッ!」
あの場面は思い出しちゃいけない。そう思って、かぶりを振った。
(じゃなくて、やっぱりあれかな……)
頭の中に浮かぶのは、スッポットライトに照らされたステージ。そして大歓声の観衆。それらがステージ上の俺に向かって飛ばしてくる、声援。あの時の衝撃は今も体に残っている。
「……いや、やっぱりわかんねぇ」
あれが自分にあたえた影響がわからない。それにあんなことをスティーブに話す気にもなれなかった。
時間が……ありませんorz