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00 プロローグ

初めまして。

この物語はフィクションになります。

よろしくお願いします。



空が、地が裂けていた。


 大きな黒い亀裂が王冠のように空へ浮かび、重力そのものを歪ませているようだった。


 大地は割れ、風は吹き荒れる。まるで世界の終わりみたいな中心に一人、平然と俺たちを見下ろす存在。


 《戴冠の魔王》ルシフェリア


 漆黒のツノは赤くひび割れ、そこから漏れる高密度の魔力は人間を殺そうと漂っている。

 小柄で華奢な体躯からは想像もできないほどの威圧感。絶対的な支配者であることを証明するように彼女がこの場にいるだけで冷や汗が止まらない、これまでの経験は無駄だと囁くようだった。


「《異世界の勇者》」

「まだ、立つのか」


 その声は呆れにも似た、確かな侮蔑だった。

 そう、俺は勇者だ。現代の日本から突如この世界へ転移させられたただの一般人天城(アマギ) (ヒカル)。けれど今はこの世界を救う、救わなければいけない。

 決意を胸に聖剣を握り直す。

 俺の”仲間”はもう満身創痍だ。いつも飄々とした剣士のレオスは頭から血を流し膝をつき、争いを苦手とする聖職者のローナは顔を青ざめ回復魔法をかけているが明らかに間に合っていない。

 いつも淡々と状況を分析する参謀役の魔法使いケインは魔王の威圧感に当てられてまともに詠唱なんて出来ていなければ、魔力も枯渇寸前だ。

 全員がボロボロで勝てないのは誰の目でも明らか。それでも逃げの選択肢なんか無い。踏み出した地面がジリと鳴る。

 これが最後になっても良い、その想いでもう少なくなっている魔力を込めると聖剣が光を放つ。

 剣撃を放とうとした次の瞬間、魔王が首を傾げた。


「勇者、ヒカルといったか?」

「お前たちは何故そんなにも”非効率”な戦い方をする?」


 愚かだと言わんばかりの声色。手を顎に当てすこし考えたような素振りを見せると、嘲笑うように呟く。


「あぁ、そうか。あの男が居なかったか」

「後ろで静かに、全部こなしていた男」


 ドキリと心臓が跳ねる。

 あの男、それをなぜこの魔王が知っている。それに先ほど”非効率”と言った、それは聞き馴染みのある言葉だ。旅を共にした時間の中で耳にタコができるほど幾度も聞き、交わした声がよみがえる。

 遥か昔、このパーティーにいた青年。思い出すことは何度もあった、もしかしたら本当は……と思うこともあった。


 「誰の、話をしているッ……!」


 魔王は少しだけ困ったように笑ったかと思えば、冷酷で見下した表情で再び口を開く。


「ライシス・ジョシュ」


 その名が溢れた瞬間、静寂が満ちた。

 ライシス・ジョシュ。

 その名はかつて勇者パーティーとして旅を共にしていた青年の名だった。

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