光の雨と眠り
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「封印を破壊せよ」
四体の影鬼のうち二体を倒した時、レーヴェ国王の中の悪霊が最悪な命令を下した。
他の三体を氷魔法で足止めしているうちに、残った一体に一斉攻撃するっていう作戦でなんとか頑張ったけど、もうみんな疲労困憊だった。そして二体目を倒した時に氷魔法を使える兵士さんを含む三人の兵士さんが倒れてしまった。
レーヴェ国王様の中の悪霊は影鬼を倒されて焦ったんだと思う。まだ二体も残ってる影鬼に加えて、更に影霊を呼び出されたらどうなるか……!私達は顔を見合わせた。飛び去ろうとする影鬼をこの場に足止めしなくちゃならない。一瞬でも氷が解けたらこの場から封印の場所に飛ばれてしまうかもしれないから。
氷魔法が使えるアルガス様とエイスリオが足止めに回るけど、私達の力が弱まっているのか、残った二体が他の影鬼より強いのか中々倒す事ができない。戦力が減って私達の魔力も体力もどんどん削られていく。
「まずいねー。何とか一気に倒せないかなー?」
アルガス様が玉の汗を浮かべながら苦しそうに呟く。
「僕、炎魔法が一番得意なんだけど、ここで大魔法なんか使ったらまずいよねー」
「僕もですね」
そっか、リヒトクレール様もアルガス様も得意なのは炎魔法なのね。ここは建物の中だから、炎なんか使ったら私達も危ないわ。風魔法だってかなりコントロールを気を付けてる。周りを見回したら、壁際にいたはずの各国の王様達はもういなくなってた。ハワード隊長が連れてきた兵士さん達が外へ逃がしてくれたんだ!良かった。良かったけど、これからどうしたらいいの?
「ううむ。これはもう使い物にならんな」
ファンタス様はいくつめかの魔法道具を床に投げ捨てた。
「もう少し時間を稼げれば、トラゴス王家も他の国と一緒に何か対策を講じてくれるはずだ」
エイスリオも魔法を連発しているせいか肩で息をしている。
「間に合えばいいがな……」
さすがのファンタス様も表情に余裕がない。
「何だか雨の音みたい」
会議場内に兵士さんが石の礫をぶつける音が響く。土魔法で光の礫を作り出して攻撃してくれてる。雨……そうだ!水魔法を使えば人を巻き込んだりしないし建物にも被害はそんなにないかもしれない!風魔法ほど水魔法のコントロールは得意じゃないけど、たくさん集めるだけならなんとかなるかも。とにかくやってみよう!思い付いた私は両手を広げて水を集めた。集中、集中……。
「レイフィーネ姫?それは水魔法か?いや……まさかそれは聖なる……!」
誰かが何か言ってる気がするけど水の底で聞いてるみたいな遠くに聞こえるような感じがした。昔ロゼが見せてくれた魔法の雨と虹。それを思い出しながら、この場の水を集める。
ああ、これが終わったらまたロゼとピクニックに行きたいな。今年は廻魂祭だって行けてないんだから。もう!何でこんなことになってるの?!もっともっと集まれ!水ー!!
そんな希望と不満をぶつけるように集まって来た水を空へ(天井へ)放った。
「えーーーーいっ!!!」
大きな水の塊が風魔法で浮き上がり天井のシャンデリアにぶつかってはじけて、光の大雨が降った。
「うわぁっ!!」
誰かの悲鳴が聞こえた。バタバタバタッとまるで滝みたいな音の雨が床を叩きつけてる。あれ?これって私達も危ないかもしれない……?思ったよりずっとたくさんの水を集められたみたい。私にも衝撃が来る!そう思って身構えたけど、え?痛くない?座り込んだ私の事をリヒトクレール様が覆いかぶさるように守ってくれていた。
「まったく……。君はいつも無茶苦茶だね」
驚いたことにリヒトクレール様は、全然濡れることなく笑っていた。魔法で雨を弾いてくれたみたい。アルガス様もエイスリオもファンタス様も同じだった。ただ、
「やるならあらかじめ言っておいてください……」
ずぶ濡れになったハワード隊長さん達にはちょっと睨まれちゃった。
「すみません。ここまでできるとは自分でも思ってなくて……。ご無事でよかったです。……あ、影鬼は?!」
二体の影鬼はレーヴェ国王様をアーチのようになって庇っていた。一体は私達が見ている前でどんどん薄れやがて消えて行った。もう一体もかなり影が薄くなってる。
「やったー!あとちょっとだー!レイフィーネ姫すごいよー!」
「ありがとうございます、アルガス様」
リヒトクレール様が私を支えてくれて、やっと立ってるけど全然足に力が入らない。
「だがどうする?敵さんの親玉はまだレーヴェ国王陛下の中にいる」
ファンタス様が眉をしかめた。そうだった。まだ終わってないんだった。
「僕が行きます」
リヒトクレール様が私を座らせると、決然と立ち上がった。
レーヴェ国王様は片腕を横に上げて手のひらを上に向けた。その瞬間消えかかっていた最後の影鬼が手のひらの上で黒い丸い影となってから、剣の形を取り始めた。
「父上!もう止めてください!影鬼達は全て消えました。貴方に勝ち目はありません」
「お前の父などもういない。お前は我が人形としてただ動いておればよかったものを……」
レーヴェ国王様、ううん悪霊の王は瞳に赤い光を宿らせて、前に進み出たリヒトクレールを睨んだ。そして次にその視線はまだ立てないでいる私の方を向いた。あ、嫌な予感がする……。
「またお前か。小娘」
赤黒い剣先を向けられて体が震えた。「また」って意味が分からない。そんなことを言われても、私はレーヴェ国王様と個人的にお会いしたことは無いし、悪霊なんて見たこともない。とてもそんなことを言える雰囲気じゃないけど。
「レイフィーネ姫!」
アルガス様達が走り寄って私と王様の間に入ってくれた。ホッとしたのも束の間、王様の剣の一振りで、壁に叩きつけられてしまった。
「アルガス様っ!ファンタス様っ!エイスリオ様っ!ハワード隊長っ!」
「うっ…………」
痛そうに呻いてるけど、みんな動いてる。生きてる!アルガス様に至っては手を振って答えてくれた。
「良かった……」
「安心していてよいのか?小娘」
良くなかった……。とりあえず逃げなきゃ。でも立てない。情けないけどずりずりと足を引きずって距離を取ろうとした。
「父上!止めてください!」
リヒトクレール様が王様の腕を掴んだ。
「どうしても止めたければ私を殺せばいい。さあ、レーヴェ国王を殺せば私も消えるかもしれないぞ?」
「お前の言う事は信用しない」
「父殺しの大罪を犯す勇気がないだけだろう!」
悪霊の王は嫌な笑みを浮かべてる。何とかもう一度魔法で弱らせられれば……。駄目、力が入らない。
「無理しないで、レイフィーネ姫。ごめん。後は頼むね」
「え?リヒトクレール様?何を?」
私は力の入らない足をしかりつけて何とか立膝になった。リヒトクレール様が何か魔法を使おうとしているのは分かる。でもどうして足元にブレスレットとお守りが落ちてるの?
「来い……」
紫色の魔法の光。あれは何の魔法?レーヴェ国王様の体から毒々しい程の赤黒い影が抜け出て、そのままリヒトクレール様の体に入った。国王様の体はゆっくりと床に倒れていく。
「嫌……ダメです!リヒトクレール様!!」
何が起こってるのかわからないまま私は叫んでいた。だってこれって絶対に良くないことだから。
リヒトクレール様は苦しげな表情で制服のポケットから何かを取り出した。
「まうつつの鏡?」
ねえ、そんなのどうするの?
「眠れ」
リヒトクレール様は鏡の中の姿に向かって命じた。まさか!もしかしてそれって洗脳の魔法?
「待って!リヒトクレール様!やめて!!」
何が起こっているのか理解した時にはもう遅くて……。目の前で膝をつくリヒトクレール様の元へ必死で這って行き、倒れるリヒトクレール様を抱きとめた。
「泣かないで、僕の姫君……」
エメラルドグリーンの瞳が閉じられる前に聞こえた最後の言葉。
こんなの嫌……リヒトクレール様…………
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