昼頃
来ていただいてありがとうございます!
「つまり三つの神殿や遺跡の中心にこの都市があるんだね」
「はい。今回の件はこの地に封印されていた悪霊達のせいだと思います。祖父も同じ考えです。」
「やっぱり悪霊か!そして超古代の王の怨霊!素晴らしい!」
「でもまさか、解き放たれた悪霊がレーヴェ王国に入り込んでいたとは……」
「まだ確証はないが、恐らく王子ではなく国王もしくはそれに近い者にとりついているものと推論するよ。時にパレルソン教授はご一緒ではないのかね?」
「今は会議場に行っています」
「そういえば彼の趣味は会議の傍聴だったね」
「いえ、今日は傍聴のためではなく、シュティーアの国王にお会いして話すためです」
「そうか。確かに今十二か国で一番力を持っているのはシュティーアだな」
天文の塔の部室へ行くとアルガス様とファンタス様が真面目な顔で話し合っていた。ファンタス様、もう起きてらしたのね。
「アルガス様、すみません。お待たせしてしまって」
「ううん。もう大丈夫ー?ロゼメーア姫に聞いたよ。大変だったねー。やっと神像が完成してねー、今南東の神殿に運んでもらってる所なんだー。お昼過ぎには到着すると思う。レイフィーネ姫には聞いてもらおうと思って呼びつけちゃった。ごめんねー」
「いいえ!教えていただいてありがとうございます!」
「あの封印はねー、北の神殿とエリン高原の遺跡と南東の神殿の三つで強力なひとまとまりの封印になってたみたいでねー。魔のもの全てを封じ込める力があったみたいだよー。だから封印が戻れば力の弱い影霊達は出てこれなくなると思う」
「そうですか!良かった。これで今夜は安心できますね」
私が喜んだのと反対に、アルガス様は少し顔を曇らせた。
「うーん」
「何か問題が?」
「一番の大元もおとなしく封印されてくれればいいなーって思ってね。昔の人達は封印するのにとても苦労したって文献に記載があったからー」
アルガス様はあれからも超古代の文献を調べ続けていてくれたのね。
「大元……超古代の王様の悪霊ですか?」
「では、父や僕にとりついているのは超古代の悪霊ということなんですね」
「リヒトクレール様!」
最初にこの部室でリヒトクレール様と会った時のように、床の一部が光ってリヒトクレール様が現れた。…………リヒトクレール様、顔色があまり良くないみたい。ちゃんと休めてないのかもしれない。
「……そうですか。封印が壊れてそれでその悪霊が出てきたということなんですね。あの遺跡の石碑にそんな役割があったとは。でもそれが一体どうして父や僕に……」
「血統……かな?」
それまで黙って聞いていたファンタス様が口を開いた。
「古代の王国の血を一番色濃く受け継いでいるのはレーヴェ王国の王家だからね」
「そういうことですか……」
リヒトクレール様は深くため息をついた。
「そろそろ昼食の時間だ」
ファンタス様の一言で私達は一度学園の食堂へ行くことになった。今日は廻魂祭のために学園はお休みだけど、授業が無い日でも長期休みの期間以外は勉強やクラブ活動をする学生のために食堂は開かれている。食堂へ行くために外へ出た私達の目に驚きの光景が飛び込んで来た。
「わあ!お祭りが学園に来ちゃったねー」
アルガス様の言うように学園の園庭のあちこちで炊き出しが行われてる……!屋台も出ていて本当にお祭りみたい。ファンタス様は食堂へ向かい、アルガス様とリヒトクレール様と私は食べ物を買って天文台へ戻ることにした。
「それにしても、リヒトクレール王子は久しぶりだねー」
「すみません、アルガス先輩。クラブの集まりに顔も出さずに……」
「ううん、そんなことはいいよー。大変だったね。相談してくれたら良かったのに」
アルガス様は労わるようにリヒトクレール様に笑いかけた。
「…………自分でも自分の状況が良く分かってなかったようです。情けないことですが……」
少し目を伏せたリヒトクレール様は元気がない。食事もあまり進んでいない。
「リヒトクレール様、顔色が良くないですよ。まだお休みになっていた方がいいのでは?」
「体は大丈夫だよ。……部屋に一人でいると嫌な胸騒ぎがしてね。ここにいる方が落ち着きそうなんだ」
「ここにいるっていうか、レイフィーネ姫のそばにいる方が落ち着くんじゃないー?」
「ア、アルガス様っ?!」
いきなり何を言ってるの?それじゃあ、まるで……。そんなわけないわよね。
「そうかもしれない」
「へ?」
リヒトクレール様?我ながら間抜けな声が出ちゃった……。
「春の魔法適正審査の時、レイフィーネ姫の魔力は水と風の魔法石以外にも反応していた。その中に聖なる魔法石もあったと思う」
「ああー!なるほど!だからレイフィーネ姫はお守りのブレスレットとか魔よけの飾りとかリースに興味を持ったのかもねー」
「ええ?」
どういうこと?確かに魔法適正検査の時、風と水以外にも魔法の天秤が反応する魔法石はあったけど、使えるほどじゃないって言われたような……。
「魔力が成長しているのかもしれない。今また調べてみれば使える魔法が増えていると思うよ」
「そ、そういうこともあるんですか?」
「あるあるー!僕も三年生になるまでに使える魔法が増えたよー」
「そういえばアルガス様のブローチは見たことが無いですけど、どんな魔法が使えるんですか?」
「ほぼ全部ー!」
「……えええええ?!」
そんなことってあるの?!
「ブローチは重いからつけてないんだよー」
全属性っていくつくらいになるんだろう?もういっそひとまとめにして金色とかのブローチを作ったらいいんじゃないかしら?
「アルガス様は得手不得手はあるけれど、全属性持ちだよ。学園では魔法の勉強はさほど重要視されてないからあまり知られてはいないけれど」
「す、すごい……」
「あははー。僕の事はいいよ。それよりもレイフィーネ姫の事だよー」
「そうでしたね。たぶんレイフィーネ姫は聖魔法を使える。僕の中の悪霊を抑え込んでくれてるんだと思うんだ」
リヒトクレール様の言葉に私は思わず持っていたサンドイッチをお皿に置いて、両手を見つめてしまった。本当に?
お昼ご飯の後、残ってる材料を持ち込んでブレスレットや魔よけの壁飾りを作ることにした。アルガス様の提案で、壁飾りは小型化して持ち歩き出来るようにしてみた。
「会議が終わるのは昼過ぎだ。もう少ししたら会議場へ向かおうと思う」
「私も一緒に行きます」
リヒトクレール様が心配だもの。絶対に一緒に行く!
「駄目だよ。レイフィーネ姫はここにいて。何が起こるか分からないから」
「でも……!」
言われるとは思ったけど、ここは何とか説得しなくちゃ。ここで思わぬ助け船が出た。
「僕はレイフィーネ姫が一緒に行くのは賛成ー」
「アルガス先輩!」
リヒトクレール様がアルガス様に非難の目を向けた。私もまさかアルガス様が賛成してくれるとは思わなかった。
「だってさー、王子の中にいるものが暴走したら困るでしょ?お父君の中のものに触発されて」
アルガス様がリヒトクレール様の胸の辺りを指差した。
「それは……しかし……」
「だいじょーぶ!僕も一緒に行くからさー。僕が二人を守るよー。はい決まりー」
割と軽い調子で決まってしまった。アルガス様って結構押しが強い人みたい。
お茶を飲みながらファンタス様が戻って来るのを三人で待っていたら、思わぬ人が部室に入って来た。
「失礼する。ロゼメーア姫からここにいると聞いたんだ。……ここでブレスレットを作っているのか」
「エイスリオ様?どうしてここに?」
「君が作ったあのブレスレットを俺にも分けてくれないか?」
「え?でも……」
「俺もあの化け物と戦う力が欲しいんだ。昨夜はロゼメーア姫に守られてばかりだったから情けなかった」
「確か君はレイフィーネ姫の研究や勉強を馬鹿にしていたのでは?」
「それはっ!……申し訳なかったと思っている。だから、その」
リヒトクレール様に指摘されて、慌てた様子のエイスリオはしどろもどろになってる。でも特に意地悪するつもりは無いわ。せめてロゼには安全でいて欲しいから。エイスリオがこのブレスレットを持てばロゼの安全度は格段に上がるもの。不公平だって分かってるけど、ブレスレットも小型化した魔除けもとても全員分は用意できない。
「いいですよ。どうぞ。さっき出来上がったものですけど。この魔除けも持っていってください。ロゼのこと守ってあげてください」
「い、いいのか?!タダで?!すまない……ありがとう」
「私を何だと思っているのよ!」
心底意外そうな顔のエイスリオに心底イラっときたわ。本当にこの人無理なんですけど!ブレスレットを受け取ったエイスリオが部屋を出ようとした時、また部室に入ってきた人がいた。
「た、大変なことが起こってしまった……!」
息を切らせて酷く慌てた様子のパレルソン先生がドアの所に立っていた。その後ろにファンタス様がついて来てる。
「おじい様!そんなに走ったら体に良くないよー」
「パレルソン先生!大丈夫ですか?」
ふらふらと倒れそうになってるパレルソン先生に、アルガス様とリヒトクレール様が慌てて駆け寄った。
「パレルソン先生?それに後ろの男は誰だ?」
エイスリオはファンタス様を睨むように見てる。とても失礼な態度だけどそれを正す暇は無かった。
「レーヴェ国王陛下が、巨大な影霊二体を呼び出した……!」
ここまでお読みいただいてありがとうございます!




