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期待しないと言われたので自由にさせてもらいます  作者: ゆきあさ


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騒乱とファンタス

来ていただいてありがとうございます!



「ん……今何時……?」

目を覚ますとリヒトクレール様の姿がない……?暗い古書室の中を見回したけど誰もいない。影のおばけが入って来るといけないから明かりをつけずにいた。だから光源は月明りだけ。

「全部夢だったとか?」

窓の外をそっと見下ろすと影がゆらゆらと歩き(?)回ってる。やっぱり夢じゃなかった……。


急激に不安が襲ってきたその時、ドアがかちゃりと音を立てた。

「ああ、起きていたの。ごめん、一人にして」

リヒトクレール様がワゴンを押して古書室へ入ってきた。ワゴンの上には湯気の立ったカップが二つとお皿にのった焼き菓子。見た途端お腹がぐうっと鳴ってしまった。

「わわっ!」

は、恥ずかしい……。

「ふふ、お腹が空いたよね。僕もだよ。もう深夜だけど、万が一のために軽く食べておこう」

「このお茶とお菓子は……?」

「司書さん達の休憩室からいただいてきた。後でレーヴェ王国の名物のお菓子を送っておくよ」

リヒトクレール様は苦笑した。

「今は非常時だからね」

リヒトクレール様は私にカップを一つ手渡すと、自分も窓辺に立ってお茶を飲み始めた。

「あったかい……」

寒さが厳しい季節では無いけれど、少し手が冷えてしまっていた。カップで手を温めながら熱いお茶を飲んだ。


「見てごらん」

リヒトクレール様の指差す方向を見ると、街の明かりが所々消えていた。

「え?あれって……」

おかしい。廻魂祭の期間中は家々の明かりが絶やされることがないはずなのに。

「街で何かあったのかもしれない」

「もしかしてあの影のおばけが街にも……」

「有り得るね」

「そんな……ロゼ!みんなも……!大丈夫でしょうか……」

「街には警備の兵士達もいる。幸いなことに今は十二か国の王達も集まっているから警備は増強されているはずだよ」

「そ、そうですよね。大丈夫ですよね」

「ただ……あれをどうにかできる術があるかどうか……」

そうだった……。あのおばけには魔法も効かなかったんだ。ロゼ……どうか無事でいて。


私達は不安の中交代で仮眠をとりながら、何とか朝まで過ごした。












賑やかな祭りの喧騒は悲鳴に変わっていた。


地面から這い出てきた人型の影達が人々を襲い始めたからだ。襲われた人々の症状は様々で動けなくなる者、目は開いているものの訳の分からない言葉を叫ぶ者、虚ろな表情でふらふらと彷徨い歩く者……。


そして楽しそうに笑いながら街を走り抜けていく男性が一人。


「なんと興味深いことか!!!」


彼の名はファンタス。天才秀才の集う天上のアカデミアでも変人と名高いおばけ研究者だ。






「くっ……魔法が効かない……。倒したと思っても復活してくる!」

「エイスリオ様……」

「ロゼメーア姫、俺が時間を稼ぐからその隙に逃げるんだ」

「そんな!私だけ逃げるなんてできませんっ!」

「ロゼメーア!聞き分けてくれ!」

廻魂祭を楽しんでいたエイスリオとロゼメーアは、人混みを避けた裏路地で休憩中に影に遭遇していた。


「また来た!」

どうやら髪の長い女のような影はロゼメーアに狙いを定めたようだった。エイスリオは氷魔法で影を凍り付かせる。しかし少し時間が経つと、影は氷の中から抜け出してきてしまうのだった。

「警備の兵士は何をしているっ!」

聞けばあちらこちらから悲鳴のようなものが聞こえてくる。

「同じような化け物が現れているようですね、エイスリオ様。きっと対応に追われているのではないでしょうか」

ロゼメーアの震える手がエイスリオの服の背中を掴んでいる。

「貴女だけは俺が守ります」

「エイスリオ様……!」

潤んだ夜明け色の瞳がエイスリオを見上げた。


「君達、盛り上がってるところ悪いが、普通の魔法じゃあれは倒せないぞ?」

突然、手に奇妙な道具を持った初老の男性が二人の前に現れた。

「それっ!」

その道具はどうやら魔法道具であるらしかった。カラフルな杖の形状をしており、男性がふるうと復活しかけた影が霧散した。

「うむ。やはり影霊には個体差があるようだ。今の個体は一振りで倒せた」

男性はやおら胸ポケットから帳面を取り出し、携帯筆記具で何やら書きつけ始めた。


「すごいわ……。私達の魔法は効かないのに……。あの、助けていただいてありがとうございました」

ロゼメーアが男性に近づいてお礼を言うと、エイスリオもやや不本意そうながらも頭を下げた。

「いやいや、礼には及ばんよ。私のフィールドワークであるからして。おや?君はどうしてそれを使わないのだね?魔法道具じゃないのか?」

「え?これですか?」

男性が指差したのはロゼメーアがレイフィーネから渡されたお守りのブレスレットだった。可愛らしいデザインだったのでロゼメーアの今一番のお気に入りになっていた。


「これが魔法道具……?」

「そらまた一体来たぞ!やってみたまえ!」

「え?え?ど、どうやってでしょうか?」

「魔法道具には魔力を込めるものだ」

やや呆れたように男性は教えてくれた。

「魔力を込める……」

ロゼメーアは「影霊」と男性が呼んだものに向かって手を突き出し、親友からもらったブレスレットに魔力を込めた。

「それはレイフィーネ姫が作ったものだろう?そんなもので…………っなんだと?!」

驚くエイスリオの目の前で、ブレスレットから放たれた光の水のような魔力が影霊を消し去ったのだった。


「すごいわ……!レイ!」

「素人が作った魔法道具なんかでこんな……」

「ふむ。そのブレスレットはレイフィーネ姫が作ったものだったか。なかなかに素晴らしいぞ。弟子に欲しい!だが、今はこの好機を逃すわけにはいかぬのだ!」

三人でロゼメーアのブレスレットを見つめていたが、男性はその場から走り去ろうとした。

「待ってください!貴方のお名前をお聞かせください!」

「私はファンタス!ごきげんよう美しい姫君!また後ほど~~」

ロゼメーアの問いかけに答えながらも男性は足を止めなかった。














ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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