遭遇
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「集いて呪え」
廻魂祭の前日、サントル市の会議場に集まった国王達の前でレーヴェ王国に対する抗議と非難の声が次々と上げられた。それに対するレーヴェ王国の国王の返答はその言葉だけだった。
「……うん。綺麗にできたわ!」
私はお祭りを楽しむ気持ちになれず古書室にこもっていた。本を流し読みしたり、役に立たないとは思いながらも、北の神殿から送ってもらった材料でブレスレットを作ってみたり、花を買ってきて廻魂祭のリースを作ってみたりした。もっともっと勉強をしなくてはとは思いつつ、気になることが多すぎて手につかずにいた。
「ロゼはエイスリオ様と一緒にお祭りに出かけちゃったのよね。二人きりで。まあ、私が一緒に行くのを断ったからなんだけど……」
エイスリオは随分と頑張ったみたいだし、ロゼも満更でもなさそう。この分なら私との婚約もじきに解消してもらえるんじゃないかなって思っちゃってる。
リヒトクレール様を救う方法については今の所情報無し。ただ、アルガス様から一度連絡があって石碑については修繕が終わり、石像はもうじきに新しいものが完成するみたい。そうしたらリヒトクレール様にとりついているものが離れて、また封印できるかもしれない。今はそれに期待をかけてる。
「そういえば今日は十二か国会議だっけ。どうなったのかしら」
レーヴェ王国は元々アステールスケーネを統一したいようだったけど、現国王であるリヒトクレール様のお父様は違う考えだったのよね?
「どうしていきなり考えを変えてしまったんだろう」
私は窓から会議場の方を眺めた。何となく胸がざわついて、少し外の空気を吸おうと思った。
私は作ったリースを持ち出して図書棟の出入り口にかけた。
「うーん、せっかくだから女子寮の玄関用にも作ればよかったかしら。…………なんだか今日の月も赤いのね」
見上げた空の月は普段よりも赤く見える。最近はこういうことが多い気がする。
「明日はロゼ達と一緒にお祭りに行こうかな。お邪魔になっちゃうかな」
明日の廻魂祭の当日は学園は一日お休みになる。今日は前夜祭で一番街の中が賑やかだろう。ディデュモイ王国の城下でもそうだったから。もちろん私も毎年お城を飛び出して誰よりもお祭りを楽しんでたわ。そんなことを思い出しながら人影の無い学園の庭を歩いた。
「なんだか暗くて怖い……。まだ夕方なのに」
見慣れた学園の庭のはずなのにどうして足がすくむんだろう。
「やっぱり、図書棟に戻ろう……。女子寮に戻った方がいいかしら」
迷ってやっぱり荷物を取りに古書室へ戻ろうと振り向いたその時、
ゆらり……
何かが目の前の地面から湧き出した。
夏休み明け、国から追従してきた者達に監視されている。
リヒトクレールは薄暗い生徒会室で一人、書類の整理をしていた。他の役員達はすでに下校し祭りを楽しんでいる頃だろう。父である国王の命に背き、シュティーアの姫君の洗脳を解いてレーヴェ王国の監視下から逃がしたことを彼らには感づかれているだろう。リヒトクレールはそう考えていた。
「レイフィーネ姫……」
思い出さないようにしまい込んでいたブレスレットは今リヒトクレールの左手首にある。あの日、レイフィーネがこの生徒会室にやって来た時、ずっともやがかかっていたような頭が一瞬晴れた。レイフィーネの無事を確認した後、すぐに寮に戻り机の奥にしまってあったブレスレットを身につけた。
「自分が自分で無くなっていくようなこの感覚は何なのか……」
今でも父の命に逆らってはならないと頭の中で誰かが告げてくる。その声にリヒトクレールは苦しんでいた。頭を振り、こめかみに走る痛みを散らそうとした。額を押さえた左手のブレスレットの重みがリヒトクレールを繋ぎ止めていた。
「レイフィーネ……姫」
あの日レイフィーネが飛び込んで来た窓に近づいた時、
「きゃぁっ!来ないでっ」
やや遠い悲鳴が聞こえたような気がした。
「レイフィーネ?!」
確信に変わる前にリヒトクレールは窓を開け、空へ飛び出していた。
風魔法で空を飛ぶ魔法はもう見て知っていた。だからリヒトクレールは彼女のように飛ぶことができた。だからリヒトクレールは光を放っているようなアプリコットネクター色の髪をすぐに見つけることができた。
「なんだ?あれは。人じゃない……影に襲われている?!」
リヒトクレールが纏う風は速さを増した。
「何これ?煙……?」
目の前のゆらゆらはだんだん人の形の赤黒い影になっていく。なんか、このままだとまずそう……。直感がそう告げてる。
「に、逃げよう……」
動きづらい足を何とか動かして走ろうと思うけれど、背中を見せるのが怖い。じりじりと後退り、少し距離を取ってから走り出そうとした。だけど影の方が一瞬早くてなんと覆い被さろうとしてきた。
「きゃあっ!来ないでっ!」
私は右腕を振って無意識に風魔法を放っていた。魔法の風が人型の影を吹き飛ばした。
「やった!倒せた!?」
喜んだのも束の間、影はまた人の形に戻っていく。
「嘘、効かないの?!」
と、とにかく誰か人のいるところに行かなくちゃ!走れ、私!何とか走り出した私はお約束というかなんというか、つまづいて転んでしまった。そうしてあっという間に追いつかれてしまった。
立ち上がれずに座り込む私に影がまた襲い掛かって来る。
もうダメ……。
目をつぶってしまった私は何かしらの衝撃が来るのを覚悟した。
「レイフィーネ姫!!」
え?この声は……!
「リヒトクレール様?!」
目を開けた私が見たのは、私の前に立つリヒトクレール様が炎の魔法で影のお化けを焼き尽くすところだった。
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