相談
来ていただいてありがとうございます!
「はい、着地!!」
風魔法で失敗なんてしょっちゅうだったものね。バランスを崩したって怪我なんてしないわ。私は落ちながら風魔法をコントロールして地上に降り立った。あ、今、別の魔力の風が私の足元から消えた気がする。私の魔力の風の外側から守ってくれてた……?私は校舎の最上階を見上げた。リヒトクレール様がこちらを見ていたけど、すぐに部屋の奥へ引っ込んでしまった。……やっぱり。本当の彼は優しい人なんだわ。
「一体君は何をしてるんだ!どうしてあんな所から落ちてくる?!」
後ろから怒鳴るような声をかけられた。うわぁ……うるさいのに見られてた。
エイスリオが腕組みして仁王立ちしてこちらを睨んでる。下校時間はとっくに過ぎて、他の生徒はいないのにどうしてエイスリオがいるの?
「レイったら、図書棟で勉強してたんじゃなかったの?」
ロゼがひょいっとエイスリオの後ろから顔を出した。ふーん、今まで二人で一緒にいたのね。
「ロゼこそ、街で買い物じゃなかったの?」
「買い物はもうすませたんだけど、少しエイスリオ様とお話してたらこんな時間になってしまったの」
「他の子達は?」
「用事ができたって言われてしまって」
「ロゼメーア姫が一人で行くというから俺が護衛についたんだ」
ふーん護衛ねぇ……。
「デートみたい……」
「なっ!違っ!!ロゼメーア姫が必要なものがあるからと。一人では危険だから!」
「そんなに慌てて言い訳しなくてもいいのに……」
今更焦って隠す必要ないのにね。
「そ、そんなことより!君は今生徒会室から飛んできたのか?」
あ、バレてた……。
「レイ、まさかあの方に会いに行ったの?どうして?今、レーヴェ王国の方との接触はしない方がいいのに」
ロゼは心配してくれてるけど、エイスリオは途端に怒り顔になった。
「あいつには近づくな!今のリヒトクレールとレーヴェ王国は前とは違うんだぞ!!君と君の国に危険が及ぶ可能性だってあるんだ!」
「心配してくださるんですね。……意外です」
「当り前だ。君は俺の婚約者なんだ。君の恥は俺の、ひいては我がトラゴス王国の恥になる」
ああ、そういう意味ね。あれ?今何だかロゼの顔が悲しそうだった。どうしたのかしら?
「私はただ友人を放っておけないだけです」
「……」
「さっき少しだけリヒトクレール様とお話ができましたけど、明らかに様子がおかしかった。苦しんでるようにも見えました」
「え?……苦しんでいらっしゃるの?」
「自分の国があんな事をしでかしているし、その手助けをしているんだ。良心の呵責だってあるだろうさ」
ロゼは少し戸惑っていて、エイスリオは呆れているようだった。エイスリオはロゼに「貴女が気にする必要はない」なんて優しく言ってる。
「そういう事じゃないんです。上手く説明できないですけど……」
何だったんだろう?あの違和感と赤黒い何か……。リヒトクレール様なんだけど違うような……。
「一体何を言ってるんだ?」
エイスリオは吐き捨てるように尋ねてきた。ロゼに対する態度と全然違ってて腹立つ!エイスリオって前に何かで読んだ二重人格とかっていうのじゃないの?もう!
「だから、上手く説明できないんですってば!!」
自分にもよく分からないものを他人に説明なんてできないわよ!
「とにかく、私は一度図書棟に戻ります」
荷物とか読みかけの本とか置きっぱなしだしね。
「あ、おい!!」
私はなんとかエイスリオから逃げて図書棟に戻ったのだった。追いかけてくるかなって思ったけど、振り返った時、ロゼに袖を引かれて戸惑うエイスリオの顔が見えた。ロゼが引き止めてくれて助かったわ。後で寮に戻ったらお礼を言っとこう。
古書室へ戻って片付けをして鍵を閉めて図書棟を出た。
「今日の月も赤い……」
赤……。リヒトクレール様、大丈夫かしら。やっぱりあれはおかしいよね。
「でもこんなのどうしたらいいの。誰か相談できる人なんて……」
お父様に手紙を書く?返事が来るまでに時間がかかるし、レーヴェ王国とやり取りしてもらうなんて今は危ないかもしれない。でも、お父様だって国王様だし何か知ってるかもしれない。レーヴェ王国の事も。だめ元で手紙を書いてみよう。
「ロゼにも話してみようかしら……」
ロゼは私の話を聞いてくれるだろうけど、また傷ついてしまうかもしれない。せっかく最近明るくなってきたのに蒸し返すのは躊躇われてしまう。
「エイスリオ様は問題外よね、うん」
あの調子じゃあ、勝手なことするな!俺の国に迷惑をかけるな!とか言われて終わりそう。うん、無いわ。
「じゃあ、どうする?後は……先生に相談するとか……。そうだわ!パレルソン先生だ!先生ならアカデミアにも知り合いがいらっしゃるし、何か分かるかもしれない!アルガス様にも聞いてみよう。……それとリヒトクレール様ともう一度話をしたい」
それからも何度もリヒトクレール様と話をしようとしたんだけど、何故か邪魔が入ったりして全然ダメだった。そうこうしてるうちに冬の始まりの廻魂祭が近づいて来ていた。
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