露見と告白
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最近、天文の塔の魔法クラブの部室にふかふかの座りごごちのよい大きなソファが設置された。学園の設備拡充かな?何故か図書棟の古書室にも。古書室に出入りするのは私くらいだから、そっちは私専用ソファみたいになってる。ただ、読み疲れるとあまりに気持ちが良くて寝ちゃうことがあるから、なるべくいつも通りの木の机と椅子で勉強をするようにしてる。
「うーん……」
アルガス様がそのふかふかソファに座って難しい顔で考え込んでる。
「どうかなさったんですか?アルガス様」
「あー、ごめんねうるさくして」
「そんな、うるさいなんてことはありません!ここは皆さんの部室ですから」
私とアルガス様以外はあまり部室に入り浸りはしないけど、それでも時々部員が出入りしてるから、集中して勉強や研究をしたい時には図書棟へ行くことにしてる。
「そっか……。それなら良かった。うーん。レイフィーネ姫にはやっぱり話しておこうかな。古代友達だし」
「古代友達ってなんですか?」
「ほら、僕は古代の遺跡巡りが好きだしレイフィーネ姫は古代の魔法が好きでしょ?だから古代友達!」
「確かに……。言われてみれば古代友達ですね」
「レイフィーネ姫は今魔除けの魔法道具について調べてるんだよねぇ?」
「はい。そうなんです。昔の人達はおうちの中にも魔除けの魔法というか、おまじないみたいなものを設置してたみたいで。それが結構可愛くて。今度作ってみようかなって思ってるんです」
幸い材料はこの辺の森で採取できそうなんだ。
「へえ!それ、できたら僕にもくれる?あのブレスレットみたいに」
「もちろん!いいですよ」
夏休みにいくつか作ったあの魔除けのブレスレットはロゼやアルガス様にもお土産代わりにお渡ししていた。
「それでねー僕は夏休みの間、ずっと遺跡巡りをしてたわけなんだけど。今は初心に戻って学園の近くの遺跡も見直してみてるんだ。そうしたらさ……」
アルガス様によると南東の神殿で神像が壊されていた。樹木に囲まれた静かな裏庭にひっそりと佇んでいた美しい神像が無残な姿になっていたそう。
「ずっと誰も気が付かなかったんだ。大事な古代の遺物の一つなのに……」
アルガス様は悔しさと悲しさが入り混じったような顔で膝を抱え込んだ。
「南東の神殿というと……」
「うん。サンサントル学園の生徒が清掃を担当した場所なんだよね。僕は神殿内部の書類整理を頼まれてたから全然気が付かなかったんだ」
アルガス様は悔し気に唇をかみしめた。私の脳裏には咄嗟にあの三人の顔が浮かんだけど、証拠もないのに疑うのは良くないと思って考えを打ち消した。
夕暮れの頃、本を抱えて寮の部屋に戻ったらロゼが頬杖をついて窓際に座り込んでいた。
「もう暗くなってきたよ。明かりもつけないでどうしたの、ロゼ?最近ずっと元気が無いみたい」
「う……ん。そうでもないわよ?」
「…………観月のダンスパーティーで何かあった?」
「いいえ。リヒトクレール様とダンスできたし、お話もいつもよりたくさんできてとても楽しかったわ」
嬉しそうに少し恥ずかしそうに話すロゼはとても可愛らしかった。リヒトクレール様とダンス……ズキンと胸が痛む。ああ、こういうの嫌なのに。
「でもやっぱりキャスリーナ様の方がリヒトクレール様のそばにいる時間が長いのよ」
ロゼは悔しそうに固く握った手を唇に押し当てた。
キャスリーナ様はシュテーア王国の姫君でリヒトクレール様の周りにいる女の子達の中でも一番婚約者に近いって噂されてる方だ。
「順番を待っている時間が長くて辛かったわ。エイスリオ様達がずっと気遣ってくださってたけど」
ああ、やっぱりエイスリオはずっとロゼの近くにいたんだわ。それにトラゴス王国はピシース王国と仲が良いから、ロゼがレーヴェ王国に嫁いだ方が都合がいいんだろうな。
「途中、リヒトクレール様がご気分を悪くされて中座された時もずいぶん待ったけどエイスリオ様やお友達が励まして下さったのよ。エイスリオ様って楽しい方よね」
ロゼはそう言って少しだけ笑った。たぶんそれはロゼに対してだけだと思う。
……それに中座ってたぶん「リリー様」になって私と話していた時の事だよね?あの後、私は騒ぎを避けて会場から連れ出してもらって、馬車に乗せてもらって学園の寮まで戻った。だけどリヒトクレール様は婚約者候補の方々をお待たせしてたんだ……。リヒトクレール様は何を考えていたんだろう。一人でいる私を見かけて心配してくれたのかもしれない。優しい人だものね。
「リヒトクレール様ってお優しいわよね……。でも誰にでもお優しいから、正直少し自信がなくなってきちゃったわ……」
「っ……」
悲しそうなロゼの顔を見て私はこれ以上黙っていることはできないって思った。
「ロゼ……!ごめんなさい。私もリヒトクレール様の事、好きかもしれない。ずっと言えなかったんだけど……」
「リリー様」の事とか、詳しいことは言えなかったけど、私も何度かリヒトクレール様とお話する機会があって、惹かれてることに気付いた。ってロゼに正直に話した。
「なんとなくだけど、気が付いていたわ」
「え?そうなの?」
「ええ。レイ、私がリヒトクレール様のお話をする時にいつからか悲しそうな顔をするようになってたもの」
「ごめんなさい……。今の私がこんな気持ちになるのは間違ってるんだけど」
「気持ちに間違いなんて無いと思うわ」
「え?怒らないの?」
「当り前でしょう?誰かを好きになるのに制限なんてかけられないもの。リヒトクレール様は素敵な方だしね。でもごめんね。私、負けないから」
ロゼは片目を瞑って艶やかに微笑んだ。資格のない私を同列に扱ってくれるロゼの優しさに涙が出そうだった。やっぱりロゼは素敵なお姫様だわ。私なんてとても敵いっこない。
「リヒトクレール様が誰を選んでも私達はずっと親友よ」
そう言って小指を差し出した。指切りをしたロゼの手首には私があげたブレスレットが光っていた。
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