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期待しないと言われたので自由にさせてもらいます  作者: ゆきあさ


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不安な月

来ていただいてありがとうございます!




「まん丸なお月様……綺麗」


観月のダンスパーティーは文字通り

「美しい月を見ながら秋の夜長にダンスをして交流しましょう」

っていう催しで、十二か国の王族貴族達が一同に会する数少ない機会だ。年に何度か会議をすることはあっても、こういう楽しいイベントは観月のダンスパーティーと春の園遊会くらい。(園遊会は大規模なお茶会みたいなものね)主催は各王国が持ち回りでやってて、今年はヴァーデ王国だったかな。


「観月っていってもだーれも月なんて見てないのにね」

私は一人暗いバルコニーで休んでた。結局来ちゃった。嫌だったけど。観月のダンスパーティーは毎年この秋の季節に、サントル市の大会議場で行われる。今年から私にも招待状が来てたけど、本当は参加するつもりはなかった。でも頑張ってドレスアップして参加したのには理由があるの。決してエイスリオに頼まれたからではない!アルガス様のアドバイスがあったからなんだ。



エイスリオに待ち伏せされた翌日、私は魔法クラブの部室でアルガス様にエイスリオの事を愚痴っていた。エイスリオが私を誘ったのはロゼの事が気になってるからだよね、絶対に。そんなのにどうして私が付き合わなくちゃいけないの?!


『観月のダンスパーティー?うーん、それは出席しておいた方がいいかもー。僕も行くし』

『え?アルガス様も?私はスルーしようと思ってました』

確か未成年の参加は自由だったはずだし。

『色々な人が参加するからねー。アカデミアの研究者や学者も招待されてるから紹介してあげるよー。彼らの話を聞ける貴重な機会だよー。それに()()もできるかも。』

『うう……』

『婚約者か保護者と一緒の参加が普通だよー』

『ううう……』



そんなこんなで、私は着たくもないドレスに身を包み、似合いもしないアクセサリーを身につけて、あまつさえ少々のお化粧までしてこの観月のダンスパーティーに参加しているのだった。寮の部屋で一人で身支度して、エイスリオと学園の門の前で待ち合わせて一緒に会議場までやって来た。


『……なんだ、やればできるじゃないか……どうなることかと思ってたが、まあ及第点だな』

ホッとしたように笑うエイスリオにムカついた。けど正装したエイスリオは確かにカッコよくて、明らかに私は釣り合っていなかった。悔しいから言わないけど。

『はあ?何言ってるの?とにかく、私達が一緒にいるのは入り口まで!あとは自由行動!ってことでよろしく!』

『……中身は変わらないか……』

何?そのため息。私は更に腹が立って、その夜はもうエイスリオと口をきくことは無かった。



その後はアルガス様と無事に合流して、知り合いの研究者さんや学者さん、更にはアルガス様のおじい様のパレルソン先生の紹介で、アカデミアの学長先生に会うこともできた。緊張してとても疲れたけど、たくさんの興味深いお話を聞けてとても楽しかった。目的は達成したし、もう帰ろうかなって思ったんだけど、会場の熱気のせいで秋なのにすごく暑くかったし、せっかくだから何か飲んでから帰ろうと思って今バルコニーにいる。バルコニーの手すりにはジュースのグラスが二つ。一つは空っぽでもう一つは半分くらい残ってる。


「これを飲んだら帰ろうかな……」

私は会場の中央にチラッと目をやった。そこには各国の王族の人達が集まるひときわ華やかで賑やかな空間がある。お父様とお母様もあそこにいるはずなんだけど、人が多すぎて近づく気になれなかった。アカデミアの人達は招待はされてるけど会場の端の方に固まってた。それにあそこにはロゼやリヒトクレール様がいるはず。私は誰かをエスコートしてるリヒトクレール様を見たくなかった。



「なんだか、今日の月、赤い……。昇りたてだから?」

もう一度月に目を戻すと、ふわりと背中が温かくなった。何?誰かが背中に覆いかぶさるように立ってる?誰?咄嗟に大声を出そうとしたけど


「エイスリオと一緒に来たの?」

耳元で聞こえた声はとても馴染みのある声だった。

「え?リヒトクレール様?どうして……?」

「あんなに婚約を嫌がってたのに、エイスリオと一緒に来たんだね。彼はどこに?」

え?私、なんか責められてる?リヒトクレール様の声が何だか怖い。彼の腕とバルコニーの手すりに閉じ込められて身動きが取れない。


「エイスリオ様とは入り口まで一緒でしたけど、それ以降は知りません。そういうお約束だったので」

「入り口まで?じゃあどうしてこんな所へ来たの?」

「えっと、アルガス様にアカデミアの研究者の方を紹介してもらったんです」

「アカデミア?……そうか。レイフィーネ姫はアカデミアを目指すんだね」

「はい。そうすれば私はエイスリオ様と結婚しなくてもすみますから。厳しいけど頑張ろうと思って……できることは何でもやろうと思ってます」

遠い遠い目標だから、コネでもなんでも使いたい。


「そうか……」

私を閉じ込める腕が少し緩んだ。同時にリヒトクレール様が近くにいすぎることに今更ながらに恥ずかしさを覚えた。

「あ、あのリヒトクレール様、こんな風にここにいるのは良くないのでは?」

誰かに見られたらまずいと思う。特に今夜のリヒトクレール様は婚約者選びの件で注目されてるんだから。

「平気だよ、ほら、今はリリーだから」

「え?!」

慌てて振り返った。


わあ!月の女神様みたいに綺麗なレディがいる!

「ほわぁ!!とてもお美しいです!!リリー様!」

「何?その反応……」

リリー様の姿をしたリヒトクレール様が苦笑してる。

「艶やかな黒髪に煌めくダイヤのネックレス、シックなワイン色のマーメイドスタイルのドレスがとても素敵で」

「はい、ストップ。全部魔法で変身してるだけだから。それにしても……」

リリー様の手が私の髪に触れた。

「今日はいつもと雰囲気が違うね……。化粧もしてるの?」

「あ、はい。ドレスの時は少しはしないとってロゼに言われて。ほんの少しだけですけど」

「僕は化粧は苦手なんだけど……」

「あ、すみません!!私も匂いが嫌いなんですけど」

「ううん、そのくらいなら大丈夫。レイフィーネ姫はとても綺麗になってると思うよ」

それは、少しは見られるようになってるってこと?普段はダメダメってことよね?

「あ、ありがとうごさいます」

複雑な気持ちだけど、一応褒められた!嬉しい!ってことにしとこう。


「その薄黄色のドレスはエイスリオが選んだの?」

「え?いいえ!自前です!だってエイスリオ様が贈って来るのは水色のドレスばかりで私には全然似合わないので」

水色はロゼの色。エイスリオの好きな色なんだろうなぁ……。


「そんなことは無いと思うけど……。じゃあこれはどうかな?」

「綺麗な髪飾り……カーネリアンのお花と真珠ですか?」

「うん。空を飛んでも落ちないように魔法がかけてあるから」

そう言うと今つけてる髪飾りを外してつけてくれた。

「ああ、やっぱり似合う……。きっとバラ色も似合うだろうな」

良かった……。いつも通りのリヒトクレール様だわ。


「ちょっと安心しました」

「え?」

「最近、元気が無いように見えていたので。魔法クラブにもいらっしゃらないですし、きっとお忙しいんでしょうね」

「クラブにも顔を出したかったんだけど、……揺らぐから」

リヒトクレール様は片手で顔を覆ってしまって、最後の方はよく聞こえなかった。

「え?」

「そろそろ行かないと」

「リヒトクレール様?瞳の色が……」

顔を上げた時、一瞬赤くなったみたいに見えた。

「ん?」

「い、いえ……何でもありません」

気のせいだった?いつもの優しいエメラルドグリーンの瞳。でも……。


ガシャンっ


グラスが割れる音が響いた。



「おいっ!!今何と言った!私を侮辱するつもりか!」

「いい、決してそのようなことは……ですが……」

「この私に口答えをするつもりかっ!」

「何をっ!!」

「…………っ!」

「…………っ!!」


響く怒号。突然、会場の片隅で騒ぎが起こった。

「何か争いごとでしょうか?」

こんな和やかな場所で喧嘩?こんな事ってあるの?

「騒がしいね……」

「リヒトクレール様……?」

まただ。またリヒトクレール様の顔から表情が消えた。冷たい無表情。

「全く……。君はこんなの見なくていい。さあ、送っていくよ」

リヒトクレール様は私の飲みかけのジュースを飲み干した。

「あっ……!」

私は色々戸惑いながらもリヒトクレール様に手を引かれて会場を後にした。











ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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