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期待しないと言われたので自由にさせてもらいます  作者: ゆきあさ


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帰国と北の神殿

来ていただいてありがとうございます!




「ただいま!お父様、お母様」

「おかえり、レイフィーネ、学園はどうだった?」

「元気そうで良かったわ」


サンサントル学園はひと月半の夏休み期間に入った。普通の生徒は馬車や船で自分の王国へ帰るけど、一部の魔法が使える生徒は魔法を使って帰ったりする。必要な荷物は予め荷馬車で送っておいて、私も魔法を使って飛んで帰った。結構疲れたから、次は魔法クラブの魔法道具を借りようかな。


バルコニーから帰って来た私をにこやかに迎える国王様と王妃様。後ろの侍従さん達やメイドさん達は青い顔で慌ててる。まあ、一国の姫君が窓から帰国したら慌てるよね。これがうちの国。ディデュモイ王国のいつもなの。


「相変わらずだな。レイフィーネは」

「学園に入ったら少しは落ち着くと思ったけれど、パワーアップして帰ってきたのね」

わっはっはっと笑うお父様と残念そうにため息をつくお母様。

「さあ、お茶にいたしましょう」

着替えた私は久しぶりに両親と侍従のカストルさんの淹れてくれたお茶を飲むことになった。


「アエラスは元気?」

「ああ。今は剣の稽古の時間だな」

「みんな変わりなく過ごしているわ」

「そうなんだ。良かった」

私にはお姉様が三人いて、それぞれ学園で出会った人と恋愛結婚をして他国へ嫁いでいった。だから私が婿を取ることが期待されてたんだけど、五年前に弟のアエラスルーンが生まれて、私への期待もなくなり、私はとても自由になった。


「カストルさんのお茶、久しぶり。やっぱり一番美味しいわ」

「光栄でございます、姫様。学園生活はいかがですか?」

「うん。概ね楽しいわ」

「そうか。それは良かった。さて……」

お父様の雰囲気が変わった。いよいよ来るわ……。私は背筋を伸ばした。


「トラゴス王国との縁談の事だか、親としてはそんな男と結婚しなくていいと考えている」

「え?そんな感じでいいの?お父様」

「が、国王としては国同士の約束事を簡単に反故にはできない」

「……ですよね」

やっぱりそう簡単に婚約解消なんてできないわよね。


「だから自分で頑張りなさい。エイスリオ王子を何とか説得するなり、この縁談を断っても自分やダメージを受けない方法を自分で見つけておいで」

「はい。お父様」

突き放されてしまった……。でも確かに安易に婚約解消したらこの国にも他国に嫁いだお姉様達にもなにか影響が出るかもしれないんだ。でもどうしたら……。


「一応、国王陛下はエイスリオ王子の態度を伝えて婚約解消の打診をしてくださったのよ。でもね」

ここでお母様の手元の扇からパキッと音がした。

「何の取柄もないはねっかえりを貰ってやるんだから、そのぐらいは我慢しろってものすごーくオブラートに包んだお返事が来たわ」

うわぁ……。そんな感じなんだ。トラゴス王国なんて行きたくない。今度はカストルさんが持ってるティーポットからピシッって音がした。


「貴女はわたくし達にとっては世界で一番可愛い娘だけど、他の王女様方と比べても抜きんでて器量がいいわけでもない十把一絡げのお姫様ですものね。エイスリオ王子は多少優秀で?まあ少しは顔もいいものねぇ」

お母様って相変わらず辛辣……。


私は一応お姫様だし、魔力は強いけどそれだけ。ロゼみたいに物凄い美人でも性格が良い訳でもないし、優秀な訳でもない。きっとトラゴス王国からしたら言うことを聞く都合のいい存在くらいにしか思われてないのね。


「それにしても……、エイスリオ王子の顔合わせの時のあのにこやかさは嘘だったってことね。婚約が成立してから本性を顕すなんてとんだ卑怯者ね」

ああ、お母様も私と同じこと思ってくれてるんだ。

「あちらは貴女を貰ってやったくらいに思っているのでしょう。在学中に名を成して貴女の価値をみせつけておやりなさい。負けては駄目よ!」

「はい!やってやります!」

お母様って意外と負けず嫌いだったんだわ。でも私も同じ気持ち。

「お前達は本当にそっくりだよ……」

お父様は満足したようにお代わりしたお茶を飲み干した。


甘えたことは言っていられない。私は一生懸命考えて、やっぱり得意な魔法を伸ばす事にした。ちょうど魔法クラブに入って古代魔法の研究を始めたところだったし、その道のエキスパートを目指す。そのためにもいつもは気が乗らない普通の勉強も完璧にこなすことにした。


お父様に頼んで夏休みの前半は家庭教師をつけてもらい、遊ぶこともせず魔法の練習も最低限にして猛勉強したの。













「風が涼しい……」

大きな湖に浮かぶ島に真っ白な神殿が建ってる。私が今いるのは湖の畔の街イオス。湖の名前と同じ名前の街は白い石でできた建物が並ぶとてもきれいな街だった。

「アステールスケーネ地方でも北の方だから、夏でも暑くないって聞いていたけど本当ね」


街の入り口から真っ直ぐに道が伸びて橋に続いてる。橋の先には島と神殿があって参道沿いにたくさんのお店や宿屋がある。観光客や参拝者がたくさん歩いていて、街はとても賑わっていた。私も観光客に見えるように簡素な白いワンピースを身につけてお店を見て回った。


「目的は星水晶と白い香木だけなのに、色々珍しいものがあって目移りしちゃう」

絵本に載ってた小さい丸い星水晶を見つけていくつか購入した。

「後は白い香木だけど……」

大きいサイズのものしか置いてなくて、自分で小さく削り出すしかなさそう。

「うーん、これくらいでいいかしら」

両手のひらに余るほどの大きさのものを手に取った。ふわんととても良い香りがして、気分が良くなる。

「神様が好む香りなんだっけ」

私は手に取った比較的小さめの香木も購入した。


「レイフィーネ様、私がお持ちします」

流石に私一人でここまで来ることは許されなくて、ディデュモイ王国から護衛騎士が三人ついて来てくれていた。その中のリーダーの老年の騎士が荷物を預かってくれた。

「ありがとう、クシフォスさん」

「いえ、レイフィーネ様のお勉強の役に立てるとは光栄です」

ちょっとかたいけど優しくて強くていい人なんだよね、クシフォスさん。



買い物は無事に済んだけど、他のお店もゆっくり見てみたい。私は端から順にお店を見て回ることにした。

「いい石あった?」

近くの店で大きな星水晶を見ていると突然声をかけられた。お店の人?振り向いて物凄く驚いた。

「え?え?リリー様……?」

じゃなくてリヒトクレール様だ。えっとリヒトクレール様だよね?黒髪ロングのリリー様の姿だ。私はちょっと混乱した。眼鏡が変わってる。そうか、自前で用意したんだわ。ってそこじゃない!


「ど、どうして貴方がここに……」

「来ちゃった。一緒に北の神殿の文献を見せてもらおうと思って。駄目かな?」

「それは構いませんけど」

一般的に王族や貴族は夏の間は交流や社交で忙しいはず。

「リ、リリー様は大丈夫なんですか?お忙しいのでは?」

「大丈夫。やるべき事は済ませてきたから」


「失礼ですがどちら様ですか?」

遠慮がちに声をかけてきたクシフォスさんに、リリー様が学園の友人だって説明した。

「そうですか!学園のご友人ですか!」

嘘はついてないけど、私に友達ができたことを喜んでくれたクシフォスさんの笑顔を見て罪悪感がすごい。中身は女の子じゃないんだもの……。


「見物をしてるんでしょう?私もご一緒させて。さあ行きましょう」

リリー様、とっても楽しそう。友達ならここで断るのも不自然?困惑しながらも私はリリー様と一緒に参道の街を見て回ることになってしまった。








ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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