星祭りと邪魔者
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街は星祭りの飾りつけで普段よりもキラキラしてる。
星の形のランタンや看板、窓ガラスに星の装飾、花壇の花の配色が星だったり、星のブローチやイヤリングでおしゃれしてる人や、中には星の形の洋服でなりきってる人もいる。
「あの服、どうやって作ったんだろうね」
「そうですね、リ……リリー様!」
危ない危ない!まだ慣れなくてついリヒトクレール様って言ってしまいそうになる。
「…………」
苦笑いの黒髪ロング、長身眼鏡のリリー様は実は魔法で変身したリヒトクレール様だ。彼女は魔法クラブのメンバーの知り合いだとロゼ達には紹介してある。
「あ、「星の子」達がいるわ!可愛らしいわね!」
「本当だわ。お菓子をあげましょうよ」
ロゼと同じクラスの友人達、モニク、ナタリー、キトリーは子ども達に駆け寄り、用意していた小さなお菓子の包みを子ども達の持つかごの中に入れた。子ども達は笑顔でロゼ達にお礼を言ってる。
「これで私達にも幸運がやってくるわね」
「そうね!良かったわ!」
星祭りでは子ども達が頭に星の飾りをつけて、白いスモックを着て、星の提灯を持って「星の子」として街を歩く。星の子、つまり流れ星は私達に幸運を与える存在として昔から大切にされてきた。大人は星の子の持つかごにお菓子を入れて、笑顔(幸運)をもらうという風習がある。
「あちらにも星の子達がいますよ。リリー様」
「そうね。私達も行きましょう」
変身魔法はリヒトクレール様の声も変えてくれた。そしてリヒトクレール様もノリノリで女の子らしい話し方をしてる。しかもとっても楽しそう。リヒトクレール様って演技もできるのね。
私がリリー様と一緒に通りの向こうへ歩いていこうとしたら邪魔が入った。
「あまり離れないでくれないか?女性だけで行動するのは危ないと言っただろう?」
不機嫌そうな声の主はエイスリオだった。
「私、貴方に護衛なんて頼んでないです。行きましょ!リリー様」
「あ、おいっ!」
エイスリオの声を無視して、リヒトクレール様と一緒に星の子達にお菓子を渡しに行った。エイスリオは私達とロゼ達を見比べてその場に留まった。ついてくる気は無いらしい。
「もう!なんであいつがついてくるのよ!楽しい気分が台無しだわ!」
「……きっとレイフィーネ姫が心配なんだよ」
「絶対違うと思います!」
リヒトクレール様は断言した私を困ったように笑いながら見ていた。
星祭り前日
「俺も一緒に行く。いくら警備の者達がいても、女性だけで街へ行くのはこの時期は少し危ない」
私とロゼ、モニク、ナタリー、キトリーが何時に星祭りに行こうか、もう一人魔法クラブの知り合いの女の子を連れてきてもいいかと相談していたら、突然エイスリオが口を挟んできたのだ。
ちなみにモニクはピシース王国の侯爵家のご令嬢で、ナタリーとキトリーは双子の姉妹でやはり侯爵家のご令嬢。ロゼとは幼馴染なんだって。手紙のやりとりが多かった私とは違って、ずっと一緒だった幼馴染ね。
「まあ!良かったわね、レイ。私達はいいからお二人で行って来たら?」
ロゼが頬を染めて嬉しそうに提案した。
「それは……」
「結構です」
エイスリオと私の声が被った。
「そんな……!レイったら、せっかくエイスリオ様が誘ってくださってるのよ?」
いやこれ、私を「誘って」ないよね?目的は明らかだよね?
「別に一緒に行動しなくてもいい。護衛として勝手についていくから」
ちらりとロゼを見るエイスリオ。やっぱり……。心配なのはロゼのことなんだわ。いくら馬鹿な私でもそれくらいは分かるんだから。私をダシにしないで欲しいわ。
「貴方がいたら楽しくないんですけど」
「…………」
嫌われる覚悟ではっきりと断った。でも意味が分からない。なんで傷ついたような顔をするの?
「レイったら、素直じゃないんだから!みんなで行きましょう?その方がきっと楽しいわ!」
ロゼの一言に他の三人も賛同してしまったから、多数決でエイスリオも一緒に行くことになってしまった……。
納得はいかなかったけど、せっかくの楽しい雰囲気を壊したくなくて、エイスリオがいることは我慢した。空気だと思うことにしてやり過ごすことにした。実際に街を歩き始めるとエイスリオの事は気にならなくなって、私達は色んな屋台やお店を見たりお芝居や大道芸を見たりしてとても楽しく過ごす事ができた。
夕暮れになって歩き疲れた私達はみんなでベンチに座って果実水を飲んだ。気温が高いから冷たい果実水がとても美味しかった。お菓子屋さんで買った星祭り限定のクッキーも食べた。
「買い食いなんて初めてだわ……」
左隣のリヒトクレール様は嬉しそうに果実水とクッキーを味わってる。楽しめてるみたいで良かった。
「実は私、リヒトクレール様を誘ってみたの」
右隣に座ったロゼが小さな声で呟いた。危うく果実水をこぼしそうになる。隣のリリー様(リヒトクレール様)の体もビクッとなったのが分かった。
「……っ、そ、そうなの?」
「でもこういうイベントは少し苦手だからって断られちゃったの」
ロゼは俯いて靴の先で石畳をつんつんと小突いた。そんな仕草も可愛い。リヒトクレール様はロゼの事、どう思ってるんだろう?こんなに可愛い女の子に好かれたら、男の子は悪い気はしないんじゃないかな?
「そ、そうなんだ……。残念だったね」
罪悪感に襲われながらもなんとか言葉を返した。
「だからせめてレイにはエイスリオ様と仲良くして欲しいわ」
私は周囲を見回した。他の三人は果実水を飲み終えて近くの露店でアクセサリーを見ているし、護衛のつもりはあるのかエイスリオはこちらを気にしながらも三人についてる。大丈夫そう。
「ロゼ……この際だから打ち明けておくけど、私はエイスリオと結婚するつもりはないから」
私はなるべく小声でロゼに囁いた。
「ええ?!」
「彼の方から私と仲良くするつもりは無いって言われたの。だから私達をくっつけようとしないで欲しいの」
「そう。そうだったのね……。それは残念ね……。でも大丈夫なの?一度決まった縁談なのに」
「うん。私も色々考えてるから、ロゼは心配しないでね」
私はなるべく明るく笑って見せた。
「……わかったわ」
そうは言ってもロゼは優しいから心配させちゃうんだろうけどね。
やがて日が沈んで、空が暗くなり星が流れ始めた。
「星祭りの本番ね……」
隣のリヒトクレール様が呟いた。てっきり空を見てると思ったんだけど、何故か彼は私の方を見ていた。
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