4話 雨降る夜のヒーローごっこ
2月2日午後5時
すっかり周りは暗くなり、雨まで降り出した。
かなたは廃工場の裏口から中に入るとかなめがいるであろう中央の部屋に向かった。
周りはホコリだらけでここ数年間は誰も訪れていないだろう。
屋根が一部抜けている所から月の光が差し、歩くとホコリが舞う。
雨の音で他の音が全く聞こえない。
雨はどんどん強くなり、雷までなりだした。
かなたはバレることなど気にせず、片っ端から部屋のドアを開けた。
使われなくなってから数十年もたっているためドアを開けるとギギギッと音が鳴る。
「ここにもいないか……」
ドアを開けようとした時だった。
「おい、動くな」
かなたの足音も聞こえないなら、もちろん誘拐犯の足音も聞こえない。
すぐ後ろに誘拐犯の男がいるが、どうやら1人らしい。
「今すぐ帰れば見逃してやってもいいぞ、帰ったら警察にでも通報するといい、そのころには俺たちはここにはいねぇけどな!」
イラっとなった、ならなくても逃げたりするつもりはなかったが、今ここでこいつをぶっ飛ばしてやる、そのことしか考えられなくなっていた。
「ねえ、おじさん……」
「あ?なんだ?帰る気になったか?」
誘拐犯はケラケラと笑った。
かなたはパッと振り向くと、右手に思いきり力を入れて誘拐犯の脇腹めがけて殴り掛かった。
誘拐犯はなめていた、子供なんかに自分が負ける訳ないと。
見事に脇腹にクリーンヒットすると誘拐犯はしゃがみこんだ。
「うぅぅ」
小学生に殴られただけではないほどの痛みが襲う。
かなたがトドメをさそうとした時、最後のあがきと言わんばかりの勢いでポケットから小型の拳銃を取り出し頭めがけて発砲した。
バンッ!!
音は雨と雷の音でほぼすべてかき消された。
一方、かなめと残った誘拐犯の方からは何も聞こえていなかった。
「あいつ、どこまで行ったんだよ」
ギギギッ、とドアの開く音がした。
「やっと帰った来たか、な?誰もいなかっただ……ろ……?」
開いたドアの向こうに立っていたのは仲間ではなく子供だった、右腕かずれてら血を流し雨に濡れ、今にも倒れそうな様子の。
「おいおい、待ってくれよ!あいつ子供なんかにやられたのかよ!」
まだ余裕があるようでこの誘拐犯もケラケラと笑っていた。
「よく撃たれたのに生きてるな」
「撃たれるとき、雷が鳴っておじさんが目をつぶった。そのおかげでずれた」
「なんだ、あいつのへまか」
誘拐犯は顔色をころっと変えると言った。
「これで10憶は全部俺のものか、まったく最高の展開だなぁ!!……俺は外さねえぞ」
拳銃を構えると容赦なく発砲してきた。
バンッ!バンッ!
流石によけられない、そう悟ったかなたは立ったまま動かなかった。
(もう少しで助けられたのにな、俺じゃ無理か……)
バンッ!
ありがとうございます。
良かったら評価、ブックマークお願いします!