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理想の生活を夢見るのは間違っている  作者: らびみぃ
第2章 理想の生活編
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31話 人工の魂

 「勢いよく飛び出したはいいものの、研究所はどっちなんだ」

 (がはは!やっぱり迷ったか!)

「水竜!道分かるのか?」

 (俺が分かるわけないだろ)

「だよな」


 しばらく立ち止まっていると、正面から龍輝が走ってきた。

「龍輝ー!迷っちゃった!」

「やっぱりか……」

 龍輝はあきれた表情をした。


「場所は俺がわかる、着いてきてくれ」

「はーい」

 かなたは手をあげて返事をした。


「それと、研究所へ行く前に話しておきたいことがある」

「お、なんだ?」

「桜がなぜ狙われているかだ」


 龍輝は真剣な表情で話始めた。


「桜は、『人工の魂』を持っている」


 


 ――


「桜ちゃん、立てそうですか?」

「ええ、平気よ」

「それならよかったです!ゆっくりでいいので二人を追いましょう」


 二人は立ち上がるとゆっくりと研究所へ向かって歩き始めた。

 歩き始めてからしばらく沈黙の時間が続き気まずい雰囲気になっていたころ、何を思ったのか、かなめが突然ぶち込んできた。


「桜ちゃんってお兄ちゃんのこと好きですか?」


「ええっ、えっ、急にどうしたの!」

 桜は明らかに動揺し始め頬を赤らめた。


「わ、私は別に何とも思ってないわ」

「ええー?ほんとうですか?お兄ちゃんは桜ちゃんのこと好きだと思いますよ?」


「ははは、はぁ!?そんなことない、あくまでかなめがそう思ってるってだけでしょ!」

 桜はピタッと立ち止まり両手で顔を隠しながら叫んだ。


「だって私、可愛くないし、弱くて逃げてるときもずっと足手まといだった、普通の女の子ならまだしも魂も持ってる……私にいいとこなんてないわよ……」

「そんなことないです!桜ちゃんは可愛いし私よりもずっと強いです、それに魂を持っているとかいないとか、お兄ちゃんが桜ちゃんを好きか嫌いかに関係ないですよ!」

「そ、そうかもしれないけど……」

「それに!お兄ちゃん、桜ちゃんが好きだから助けに来たとか思いません!?」

「えっ!?」

「もしそうだったら、いいな~桜ちゃん!私もピンチの時好きな人に助けてもらいたいです!」

 桜は我慢できなくなりかなめの話をさえぎって止めに入った。

「も――――!かなめ!この話おしまい!おしまい、おしまい、お・し・ま・い~~!」


「え~もうおしまいですか?」

「今日はもうしない!」

「分かりましたよ、それじゃあまた今度しましょうね!」


 気づけば桜の表情は少し明るくなっていた。

「……気が向いたらね」


 


 ――

 一方そのころ、かなたと龍輝は研究所入り口まで来ていた。


「やっと着いたな、にしてもデカいな~この大樹」

「なん前年も昔からあるからな世界で一番デカいんじゃなかったか?」


 研究所の場所は大樹の真下だった。


「ちなみにかなた、俺の説明で分かったか……?」

「なんとなく分かった!」


 ほとんど分かっていない。

 酷いことにこの二人、説明力もなければ理解力もなかったのだ。

「……俺の説明が下手すぎた、すまない」

「……いや、龍輝は悪くない、俺がバカすぎるだけだ」


 二人は少しだけ落ち込んでいるようだ。


「でも龍輝、一つだけ分かったことがある」

「なんだ?」

「桜は俺たちの友達だ、だからエターニティと研究所ぶっ壊すぞ」

「ああ、勿論だ」


「ハックション!」

 不意に龍輝がくしゃみをした、それと同時にかなたは勝負のことを思い出した。


「あ、勝負は続いてるからな、ルールは誰も殺さないこと!それだけ!」

 そういうと、かなたは剣を素早く取り出しそそくさと走って中へ行ってしまった。

 龍輝もすかさず追いかける。

「あ、おい!抜け駆けは許さないぞ!」



「侵入者だ!殺せ!」

 中に入ると早速エターニティの構成員たちが襲い掛かる。


「うひょー!めちゃくちゃいるな!」

 (かなた、戦い方とか覚えているのか?)

「昔死ぬほど特訓したからな……水竜に教えてもらったことはほとんど覚えてるよ……」

 (やっぱり俺の指導がよかったからだろうな!)

「いや、間違ったりサボったりしたらずーっと語り掛けてきて頭痛かったからな……」

 (いいじゃないか!そのおかげで今戦えるのだからな!がはは!)

「……そうなんだけど、一応三年間のブランクがあるからな」


 水竜との会話に気を取られているうちに、一人後ろに回り込んでいた。


「もらった!」

 背後から大振りの攻撃。


「……!ぐはっ!」

 その横から龍輝の拳が脇腹に直撃。


「ま、頼もしい味方がいるから大丈夫そうか!ナイス龍輝」

 (龍輝と龍王かなり強くなっているな)


「かなた、油断しすぎて死ぬなよ」

「もちろん」


「よし、もうこの辺りにはだれもいない先に進むぞ」


 その後も、何事もなく順調に進む、ここまでで凡そ三十人ほどの構成員を二人で戦意喪失まで追い込んだ。

 龍輝の実力はもちろんのことながら、かなたも悪くない活躍を見せた。


「結構やったんじゃないか」

「ほぼ壊滅状態だと思う、さっき倒した奴が四十人ほどの構成員が今ここにいると言っていた、研究員ってのが数十人いるらしいんだがそいつらは戦えないらしい、だからさっきの奴らで戦闘員は全滅だろうな」

「戦いながら敵から情報まで手に入れてるなんて、龍輝さん、さすがっす!」

「かなた、さん付けはやめてくれ……違和感が、すごい……」

「そうか?なら妹の様呼びも何とかしてほしいんだが……」

「それは、俺は何とも」



 誰もいない静かな研究所で弓を探し歩いていると、奥の方から足音が近づいて来る。

 龍輝はすぐさま戦闘態勢になった。

「かなた、多分だが、ここにいる中で一番強いやつが来た」

「まだいたのか、どっちからだ?」


 今までとは明らかに違う殺気を龍輝は感じていた。

「何も感じないのか……?」


「何も感じないぞ?」


 正面からゆっくりと近づいてくる足音、静まり返った通路に足音だけが響く。


 龍輝は確認する。

「もうやるか……?」

「いや、もう少し待って研究員ってやつかもしれない、戦う気がない奴だったら弓の場所を聞けるかもしれない」

「研究員でも一応敵だからな、油断するなよ」


 

 暗闇の中から男が話しかけてきた。

「二人とも強いですね。まさか全員やられちゃうとは思ってなかったですよ」

「いや、あいつらは全員俺より弱かったので負けて当然ですか」


 ブツブツと一人で話しながら近づいてきたそいつは、左手に弓を持っていた。

「あんな奴ら倒せないようじゃ、俺と戦う価値すらないですからね」

 ギョッと睨みつける。


「君が龍輝さんですか?」

「違う、龍輝はあっちだ」

「そうですか、では――」

「ちょっと待て、その左手に持ってるの桜の弓か?」

「あ、これですか?はいそうですよ」


 男はすんなり答えると、聞いてもいないのに一人で語りだした。

「二人に聞いてほしいことがあるんですよ、そして納得してもらいたい」

「まず、ナインさんの件は失礼しました、あの人いくつに見えます?――あの感じでもう三十代!いい年したオッサンが女の子追い回してしかも捕まえられない!なんてみじめな奴なんでしょうか!あれが上司の俺可哀そうじゃないですか?」


 かなたは表情を変えることなく相槌を打つ。

「確かにあれが上司はちょっと嫌だな」

「おい、かなた!何普通に返事してる……!」


「俺は、なんな上司嫌なんです、だから二人とも協力してください!俺が桜さんを手に入ればあいつを消すことができ、俺が昇格する!昇格した暁には二人にも何か……そうだなぁ」

「俺の部下にしてあげますよ!」


 『断る!』

 二人は同時に殴りかかった、幸い男が自分から近付いてきたおかげで確実に攻撃を当てることのできる範囲にいた。

「倒すことはできなくても確実龍王の一撃を当てることができる!」


 龍王の一撃が男の顔面に当たった、はずだった。

 血がぽたぽたと垂れる。


 その血は龍輝のものだった。


「龍輝!」

 かなたの剣も当たっている、しかし相手にはダメージがないようだ、距離を取ろうとしたが間に合わず顔面に一撃、カウンターを食らった。


「二人ともあんまりですね……最後まで話を聞いてくださいよ、全く俺たち年齢も近いはずだから気が合うと思ったんですけどね、ちなみに俺は二十九歳です」


「あんたも三十近いじゃねーかよ……あとな、俺たちはまだ十五だ……なんで桜狙ってるかはよくわかんねーけど、あんたらに渡したら――」

 ナインの傷もあり、かなたはその場で倒れた。


「なんだ、そんなに若かったんですね、ってもう死にかけですか……」

「――で、龍輝さん、あなたはどうしますか?腕から血が出てますよ」


「桜は渡さない、弓も取り返して、全員でまた、昔みたいに――」

「随分呼吸が荒いですね、あなたももう死にますか」

 龍輝はその場にしゃがみ込んだ。


「二人とも死ぬ前に教えてあげますよ、桜さんがどれだけ重要な研究対象か、ね」

よろしくお願いします

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