1話 理想の生活を夢見る
かなた、起きて……
今の誰の声だ?
俺、どうなったんだ……
確か、女の子の声がして、それを追いかけて行ったら……
…………
もしかして、俺死んだ?
「壁にぶつかっただけで死なれたらこの先心配じゃ」
どこからか声が聞こえた。
だが、目が開かない、いや開いている……!
何故か視界が真っ暗のまま、かなたはもがいた。
おい、もしかして誰か俺の顔に抱き着いてるのか!?
かなたは必死にもがいた。
「うぅ、くるし、い……」
「はっ!ごめんなさい!」
急に目の前が明るくなった。
「はぁ、はぁ」
「大丈夫でしたか?」
起き上がると目の前におどおどしながら心配そうにこちらを見ている少女がいた。
「あ、あの、急に抱き着いてしまってごめんなさい!私を助けようとしてくれたんですよね」
「え?ま、まあそんなところかな!」
(……言えない!確かに最初は助けようと思って入ったのかもしれないけど、戻ろうとして、そしたら入ってきたところがなかったから走って逃げてたなんて絶対にいえない!)
「らしいぞ、ほっほっ」
かなたが心の中で思ったことをすべて言われてしまった。
「あら、そうだったんですか」
少女はすごく楽しそうに笑った。
「……え?」
横に視線をずらすとおじいさんがいた。
「あ、あんた誰だ!?」
「わしかい?わしはただの老人じゃ」
「そんなわけないでしょ!なんで俺が思ってたこと分かったんだよ?」
老人はかなたに触れていた右手を離すとペラペラと話し始めた。
「わしは少し特殊な力を持っていてな、振れている相手の思っている事や過去の記憶なんかも見ることができるのじゃ、どうじゃ、驚いたじゃろ」
「す、すげー!!」
かなたは不思議な力に驚いていたが、それよりも目をキラキラさせてカッコイイと思っていた。
逆に老人が驚いていた。
(まさか、怖がるどころか本当に興味を示すとは……)
「そういえば、自己紹介をしてませんでしたね!私の名前はかなめです!えーっと、大星から逃げてきました!で、こっちのおじいさんが校長先生です!」
かなたはポカーンとしていた。
「俺はかなた、あの、タイセイって何?」
「あ!大星は私たちが住んでいる星です、今は色々あって地球に一時的に逃げてきてるって感じです!」
「……ってことは異世界の人ってこと!?」
「そう?なんですかね?」
「わしが説明しよう、わしらの世界は今少し荒れておってな、かなめをその争いに巻き込む訳にはいかなくてじゃな、少しの間地球に避難しているわけなんじゃ」
「そうなのか、そっちの世界も大変なんだな」
(この少年、とても冷静じゃ……やはりこの子に頼むべきなのか)
「このことは地球のトップ層でもかなり限られたものしか知らない」
「まじか!俺とんでもないこと知ってしまったのか……!」
「そこでなんじゃが、少しの間かなめを泊めてくれないか」
「え、ぜんぜんいいけど、逆に俺でいいのか?」
「泊めてくれるんですか!とっても嬉しいです!」
かなめはぴょんぴょん跳ねながら喜んだ。
「おじさんはいいのか?部屋は空いてるけど」
「かなめを泊めてくれるだけで大丈夫じゃ」
校長はにっこり笑った。
気づけば6時を過ぎていた。
「うわっ、もうこんな時間か、家案内するからついてきて!」
「はい!ついていきます!」
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