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頭痛
「あたまが痛い」
「病院へ行きなよ」
「何も原因がないと言われました。ストレス性だろうと」
「なるほど。ストレスの元を断つのが一番だね」
「宝くじが当たって働かずに済むようになりました。早く結婚しろと詰める母も亡くなりました。悠々自適の生活をしています。なのに頭痛がするのです」
「運動は?」
「日に一時間散歩をしています」
「ご飯は?」
「料理は好きです」
「わかった。じゃあこの子を貰ってくれるかな」
「子猫、ですか?」
「そう」
子猫を連れ帰った女は、数日後また訪ねて来た。
「壁はひっかくし、高いところに登るし、なによりあの子病気だったんですよ。共同で面倒を見てくれる人を探し回ったし、蓄えでは足りなくて自宅作業の仕事をしています」
「頭痛は治ったかい?」
「痛みを気にする暇すらありません。あの子のことしか頭になくて」
「それはよかった」
女は子猫の待つ家へ帰っていった。