13 子作り騒動
今回はセンシティブな内容のオンパレードです。ご注意を。
この手の話が苦手な方、不快に思われる方は本話を飛ばして、次話の前書きに掲載される「あらすじ」をお読み下さい。
「(飲み会での猥談みたいなノリっすから。正直、朝っぱらから読んでもらえるような話じゃないっすね)」
「うほっ(それな)」
※この小説はフィクションであり、実在の人物、団体、民族、国家とは一切関係ありません。
―ユリウス暦一〇八〇年以降、蝦夷地ト・マクオマ・ナイ。帰還後の出来事と動き。
「酷い目に遭った」
宴でのタケルの何気なく言った一言から大騒ぎに発展した「オタウシメノコの婿取り騒動」ではあったが、暴走した若衆達をタケルが(物理的に)黙らせた事と、コタンラムを始め各コタンの長達が皆を諭す事でなんとか事態は収まった。
「とは言え将来の為に子供は作りたいんだよな。でもなぁ」
「(何をもだもだ悩んでるんすかね。ちゃっちゃと創れば良いじゃないっすか。材料は有るんすから)」
今日のタケル付きの当番はイマヌエルである。肘枕をしながら横になって、面倒臭そうに尻をボリボリ掻いている。ロボゴリラのくせに芸が細か過ぎる。
「いやな、私に準じたダウングレード版のアンドロイドの作製条件がな……」
「(なんか特殊な材料とか機器とか手順が必要なんすか?)」
言葉を濁すタケルにイマヌエルが面倒臭そうに言うと、タケルの顔が真っ赤になった。耳まで赤いぞ。そこまで感情表現を仔細に再現するか異星の技術、恐るべし。
「それがな、種を仕込まないと作製プロセスがな……」
「(まどろっこしいっすね。てかその情報、自分ら知らないっすよ? 具体的に言って欲しいっす)」
傍から見たら寝そべったまま鼻を穿る無言のゴリラに一方的に話し掛けている危ない人の図である。
「だから! ✕✕✕して□□△○○○されないと下腹部に内蔵されている作製用器官が起動しないんだっつーの!」
「うほっ!?(ファッ!?)」
思わず二重音声を発して起き上がるイマヌエル。下を向いてプルプル震えるタケル。
「しかも●●●●●の遺伝情報を胎内のセンサーが検出して正常と判断されないと✕✕✕しても作製が開始されないという謎の二段階仕様だよ……」
「(なんすかそのエロい、いや面倒臭い仕様)」
イマヌエルの問いに、タケルはハイライトの消えた目で説明を始めた。
調査用アンドロイドは人類に紛れて活動する必要があり、怪しまれない為にも性行為をした、或いはされた場合にF型の場合はダウングレード版のアンドロイドを妊娠に偽装して子宮様の器官でランダムに作製する機能が備わっていた。(但しタケルが転生或いは憑依した事で偽装妊娠のタイミングはランダムからタケルの意思による任意のタイミングへと機能が変わっている。アレしてナニされないとダメなのは変わらないので気休めにもならないが)
このF型アンドロイドの胎内で作製されるのは、骨格が生物と同じリン酸カルシウム、身体を造るのは母体となったアンドロイドと同じ複合ナノマシンによる人工細胞による人工臓器群と人工筋肉、頭脳に関しては空間量子メモリ・コンピュータではなく同人工細胞による疑似ニューロン・ネットワークになる。基本はタケルと同じで飲食不要。寿命は母体となったF型が自在に設定出来る。解剖されたとしても見た目は殆どヒトと変わらない。
クマレンジャーやサンゴリランとは若干異なったアーキテクチャなのだ。
このダウングレードされたアンドロイド(以降は子アンドロイドと記す)は、ヒトの妊娠期間と同程度の時間で胎内で組み上げられ、出産によって外界に出ると、経口にて必要材料を摂取して人類と同じ程度の速度で成長する。頭脳には知識等をプリインストールしておけるが、柔軟性を持たせる為に学習機能を備えている。
タケルが転生或いは憑依したこのF型も、調査期間中に何体か所謂『出産』しているのだ。
尚、それで産まれた子アンドロイド達は、このF型が回収される時、既に自壊させられている。それらに自我や自意識が無かったのが幸いと言えば幸いか。
「(ご主人、経産婦だったんすね)」
「自壊コマンド食らわすぞ! しかもだぞ、人間で言うと一歳位までは成長の為の材料の経口摂取はだな、授乳行為で偽装するんだぞ、おい」
チ○コ型異星人、設定に凝り過ぎである。擬態して紛れ込むと言う目的には適ってはいるのだろうが。
「(しかし、それならこの辺のコタンの若い連中を選り取り見取りじゃないっすか。一声掛けたらわらわら群がって来るっすね)」
「キミは私をパウチカムイにするつもりかね? 彼らの貞操観念は軽くないよ」
「(そう言えば、ご主人のアンドロイド体の、その件の記憶と言うか記録って……)」
「一度、興味本位で覗いてみたさ……。聞きたいか?」
焦って話題を変えたイマヌエルであったが、タケルの地雷を踏んだらしい。益々、ハイライトの消えた目が据わり、より暗い雰囲気になるタケル。一体何を見たと言うのか。
「(ご主人、自分が悪かったっす。ごめんなさい)」
おちゃらけていても空気の読めるゴリラ、イマヌエルは土下座をするのであった。
取り敢えずその場は収まったが、とは言え今後を考えるとF型やM型のアンドロイドは何体か必要になるだろう。疑似人格だったとしてもだ。ただクマレンジャーやサンゴリランの例もあるので『自我』が生まれる可能性は極めて高い。
アイヌには頼れないなら近場だと和人(日本人)しか選択肢が無いかも知れない。その為には本州にまで渡らないとならない。
この時期、史実では津軽半島に中央からの拠点になる城があったよな、とタケルは日本史の知識を思い出す。
『シンタ』が使えない今、動力船は『シンタ』に積んでいた電動ボートしか手持ちが無い。航続距離的に往復ギリギリである。
平安中期のこの時代、春を鬻ぐ生業を営んでいたのは『遊女』や『傀儡女』だと言われている。彼女達は芸能を披露しながら同時に客も取っていたと言われている。(東北地方に於けるこれらの資料を作者は見付けられませんでした。平安後期の京都・大坂ならあったのですが)
自分が転生憑依したこの身体は一時期は傀儡師一座に属していて、客を取っていた事もある。その記憶・記録を元にして、それらに化けて客を取って✕✕✕して来れば良いんじゃないか、とテンパってグルグル目で語るタケル。
「うほっ、うっほうっほうほ。うほほうほうほうほ?(ご主人、思考が明後日の方向に行っている様に思われますが。まず気心の知れたコタンラムにでも相談したらどうです?)」
今日の当番のアルトゥルに諌められてタケルは正気に戻る。因みにクマレンジャーとイマヌエルは種苗保管育成の建物の建設作業に励んでいて、ルイは相変わらず『シンタ』に詰めて植物の世話に勤しんでいた。
「……そうしてみるよ」
タケルは取り敢えずコタンラムを訪ねてみる事にした。
※ ※ ※ ※ ※
相談に訪れたタケルの話を一通り聞き終わると、コタンラムは眉間に皺を寄せて考え込んだ。
「ううむ、子を産みたいので子種は欲しい。だが婿取りも嫁入りも、所帯を持つのも不要か。それも子が五人か六人出来たら終わりと」
「はい、とは言っても、こればかりはアイヌの民に迷惑は掛けられないし……」
「オタウシメノコはパウチカムイでは無いのであろう? ただ子種が欲しいだけで淫欲淫蕩に誘い、惑わす訳ではあるまい。それに婚姻前に良い仲になり、そのまま婚姻せずに別な相手と婚姻を結ぶ者達も、まあ、居ないこともない」
「意外と大らかだった!?」
「節度は守らせるがな。それでだ、儂の方でも考えてみよう。オタウシメノコには世話になっているし、ぜひ貴女の子を見てみたいからの」
「ありがとう。お願いします」
頭を下げて礼を言い、コタンラムの元を辞して帰路に着いたタケルであった。
その後、コタンラムが周辺コタンの長を巻き込んだ結果、トンデモ祭りが出来上がってしまった。
各コタンの独身の腕自慢を集めて腕試しをさせて、上位の成績の者から女衆が一人を選び、その者を『神の婿』として特別に作られた祠に籠もらせる。その祠に籠もる者は、中で何が起きてもその事は決して口外しないと固く誓わせ、閉じ込めた後は外では皆で宴を開いて騒ぐのだ。
つまり、皆が騒いでいるその隙に祠の中で遠慮無くよろしくやってしまえと言う事である。但しタケルが毎回中に居る訳では無く、子がタケルの望む人数になれば、以降は選ばれた者は宴にも出られずに閉じ込められ損になるのだが。
「いや、確かに考えられてはいるんだけど……」
「一度やってみるのも良かろうて」
実にイイ笑顔でコタンラムが返す。現代人なら同時にサムズアップでもしてるんじゃなかろうか。
「中に居るのが私だって分かったら、相手の人は(気持ち的に)萎えないかねぇ」
タケルの言に、コランラムはチラリとタケルの乳と尻を見て朗らかに答える。
「それは心配要らんと思うがな。オタウシメノコを相手に(身体的に)萎える奴は居らんだろう。決して口外せんように誓わせるし、不名誉にはならんだろう。おっと、中での事を口外せんのはオタウシメノコ、貴女も同じだぞ?」
「そりゃそうですけど……」
何かすれ違っている感が物凄いが、かくして後世に残るかも知れない奇祭が誕生してしまったのかも知れない。
※この小説はフィクションであり、実在の人物、団体、民族、国家とは一切関係ありません。大事な事なので(ry
――ここから真面目な言い訳――
一応、真面目に弁明しておきます。
主人公に子供をって言うのは最初から決めていました。そしてその手段について色々と調べながら考えに考え抜いていたら、こんな形になってしまったのです。
作者が調べた限りですが、中世のアイヌ民族の風俗習慣は不明な点が多く、男女関係や婚姻について、これだと言う確かな物が見つかりませんでした。近世近代以降は結構な資料が有るんですけどねぇ。
そこで日本にも古くは『夜這い』と言う婚前交渉の習慣があった事(貴族では作法があったらしいですが、庶民の場合は不明です)、それが女性主体で相手を選ぶ手段であったと言う説と、アイヌ民族も許婚が幼い頃から決められてはいても、最終的には女性が相手を選んでいたと言う事の類推から、婚前交渉に関しては大らかだったのではないのかと推測妄想して話を膨らませて書いているだけで、彼らを貶める意図は全くありません。
また、現代日本人の貞操観念は明治以降に西洋から輸入されたキリスト教的なものが多分に含まれているのは周知の事実だとは思いますが、それを批判し貶める意図もありません。
あくまでも『物語』であり『フィクション』であります。この物語を進める為の作者都合の大嘘なのでご容赦のほど宜しくお願い致します。




