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第三話 好きと推しと

 あの女子高生に声をかけようと決心し迎えた朝。彼は女子校の校門が見えるいつもの場所で、彼女を待った。


 頭の中で、何度もシミュレーションをした。イメージは完璧で、あとは彼女を待つだけである。


 しかしその日彼女は現れなかった。少し、ホッとした。その気持ちに気づいた時、なんだか不思議な感覚に陥った。


「本当は……あの女子高生と話したくなかったのかな」


 急にバカバカしくなった。冷めてしまったような気がしたが、それは違うという気もした。


 彼はモヤモヤしながらも登校した。しかしなぜだろう、そのモヤモヤがなんだか少し心地よく、今までよりも彼女が尊い存在になった気さえした。


 いつもより、彼女が常に意識の中に粘着している様に感じた。一日中、彼女がすぐ近くにいるような、そんな感じであった。一日中、どこか上の空であった。


「おーい、どうしたんだお前? 今日なんか元気ねーぞ?」


「具合悪いのー?」


 ある時クラスメートらに声をかけられて、ふと我に返った。


「大丈夫。心配かけてごめん!」


 そう言って笑うと、クラスメートは安心したようであった。そしてクラスメートは聞いてきた。


「なぁ紳助、お前祭り来んの?」


「あ、あぁ……そういやもうすぐゴールデンウィークか」


「行くなら一緒に行かね?」


「まじ? 行く行く!」


 ゴールデンウィークは、伝統ある祭りが行われる。普段から人でごった返す地方都市だが、それでも祭りとなると、更に人が増える。

 いつもは家族と言っていたが、子供だけでお小遣いを片手に街を練り歩くというのは、ワクワクした。


「なぁ聞いた紳助? アイツあの子を祭りに誘ったらしいよ」


「マジかよ。それで返事は?」


「イェスだってよ! まぁ二人きりじゃないらしいけど!」


「それじゃイェスに決まってるだろ」


「紳助の推しはアイドルだったよな。推しを近場のやつに取られなくてよかったな。推しには幸せになって欲しいとは言うけどさぁ。近場だったら嫌だよなぁ。真面目で頭がいい堅物のお前がアイドル推しなんてビビったけど、それなら俺のこの気ち、分かってくれるよな?」


「もちろん。推しには幸せになって欲しいよ」


「てかさぁ告れるのって勇気あるよなぁ。あいつにとってあの子は推しであるクラスのマドンナ……じゃなくて、もう好きなんだろうなぁ」


「好きかぁ。はえぇ……」


 その言葉は彼の胸に響いた。まさに金言であり、こんなにも言い得て妙な言葉があるのかと感心した。

 彼はあの女子高生を推していたのではなく、あの女子高生に恋をしていたのだと、初めて気がついた。

 あの女子高生に興味を持っていることを隠したくはないが、だが近場で誰かの推しが誰かのものになるかもしれないという現実を想像した時彼は、あの女子高生が誰かの手に渡ることが悔しいとそう感じてしまった。

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