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第8話

 ともかくそういった背景もあって止むを得ない話だが、「皇軍来訪」後すぐに自分達が享受していたような生活ができるどころではなく、少しずつ技術(というか量産化というべきだろう、技術知識自体はそれなりに維持されていたのだから)進歩を進めていき、生活程度の向上が行われていくのを、自分達は事実上は待つしかなかった。


 例えば、私の記憶では1550年頃に取り敢えずは単線での試作といった趣きで、京の都から大坂の港をつなぐ蒸気機関車を使用した鉄道が敷設されるという有様だった。

(将来を見据えて、それなりに設備等に余裕が設けられており、実際に徐々に改善されていくことになるのだが、この当時はそんな惨状だった)


 又、実用化かつ量産される外洋航行可能な蒸気船(最も純粋な汽船ではなく、機帆船だったが)が登場したのは、1552年頃の話になった。

(それ以前にタグボート的な内海用の小型蒸気船は登場していてはいたが、外洋船となるとそんな感じで色々と量産化に手間取ることになったのだ)


 そんなふうに少しずつかつての自分達が暮らしていた昭和10年代半ばの生活で使われていたモノに至る歴史過程を早回しするような感じで、様々に進歩したモノが量産化等されていくことになった。

 例えば、通信手段にしても最初は郵便局網の日本全国への建設から始まって手紙でやり取りをしていたのが、有線通信網が造られて電報でのやり取りができる地域が徐々に広がっていき、(1595年の)現在に至っては電話がある家等が徐々に増えていて、一部ならば日本本土以外の国や地域とも電話でのやり取りができるようになったという現実があるのだ。


 そんな感じで生活における水準が進歩していく一方、私の記憶の中では、上里家に関する次に大きな出来事は1556年頃に色々と続けざまに起きた、


 まずは和子の婚約、結婚である。

 この世界では、武田信玄の長男の義信と和子が結婚するのか、更に二人は北米へと赴くのか、と本当に私は驚くことになった。

 この頃は北米植民地でゴールドラッシュが起きて、大量に人が北米へと向かいだしていた頃で、私の教え子の中からも北米へと向かう者が出ていたが、まさか和子まで結婚して北米へ赴くことになる等、この頃の私には想像もできないことだった。

(尚、和子は実母の永賢尼の縁から本願寺顕如の猶姉として結婚することになってもいた。

 和子が、実母は私のことをずっと想ってくれていたんだ、そして、こんな名門の御曹司との縁談を勧めて、更に本願寺顕如の姉にまでしてくれたんだ、と悦んで小声で言ったのを私は覚えている)


 それと相前後して、勝利が宇喜多直家の妹と結婚した。

 尚、私は宇喜多直家のことをよく知らず、宇喜多秀家の父としか覚えていなかったので、上里家は色々と有名人と縁があるものだ、としか思わなかった。


 だが、更に続けて正道(道平)までが、(沼田)小早川永子と中学2年生(まだ12歳)の身で婚約することになったのには、私は腰を抜かした。 

 何で、こんな12歳での婚約と私は考えていたら。


 とある新聞に、インド株式会社の経営方針が背景にあるとの解説記事を見つけた。

 インド株式会社は、瀬戸内海商圏を安定して確立するために、宇喜多家や小早川家と手を組むことにしたというのだ。

 両家共に瀬戸内海の海上交易では有名な一家であり、インド株式会社が婚姻によって関係を強めるのも当然だという解説記事だった。


 成程と私は腑に落ちて、上里松一は軍人というよりも商人なのだな、とその時は考えたが。

 今にして想えば、こんな感じで子どもをコマのように結婚させて利益を追求しては、和子があのようなことをしたのも当然の気が私はするのだ。

 例によって、本編と違う描写がありますが、佐藤希典の主観ということでお願いします。


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[良い点]  新聞記事や伝聞から推測するとヒドい父親像になってしまう松一さんの真実(周囲からの影響や環境の激変で仕方なしで主体的に立ち回ったワケでは無い)を連載の流れで知る読者にはまさに「どうしてこう…
[良い点] 上里松一さん本人から見たらトンデモな誤解ですが、第三者の事情通から見たら、正妻・元の妾・子供・縁戚総動員で金儲けと出世に邁進する奴にしか見えません。 もう少し後になりますが、婿に労働運動を…
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