DUM SPIRO SPERO
●耽美で暴力的な迷宮に閉じ込められる。
【収録曲】
1.狂骨の鳴り
2.THE BLOSSOMING BEELZEBUB
3.DIFFERENT SENSE
4.AMON
5.「欲巣にDREAMBOX」あるいは成熟の理念と冷たい雨
6.獣慾
7.滴る朦朧
8.LOTUS
9.DIABOLOS
10.暁
11.DECAYED CROW
12.激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇
13.VANITAS
14.流転の塔
5人組バンド・DIR EN GREYが2011年にリリースしたアルバム。今作を聴くまで、私は彼らに対して「ダークな雰囲気のビジュアル系バンド」という何となくのイメージしか無かったのですが、実際に作品に触れてみたところ、そういう単純な言葉では片付けられないことを実感できました。
何といっても特徴的なのはそのボーカル。いわゆる「ビジュアル系」的な耽美性のある鼻にかかった歌い方をしたかと思いきや、こちらを地獄に引きずり込むようなデスボイスを繰り出してきたり、はたまた脳天に突き刺さるようなホイッスルボイスを響かせたりと、声一つで様々な表情を見せてくれます。また、バンドサウンドに関しても基本的にヘヴィネスを維持したまま複雑な展開を見せる場合が多く。まるで怪物が跋扈する迷宮をさまよっているかのような感覚をリスナーに突き付けてきます。特に、『欲巣にDREAMBOX~』に関しては途中で曲の雰囲気が急に変わるので、最初聴いた時は軽く混乱してしまいました。
ただ、こういった複雑さを持ちながらも所々で耳に残る要素を差し込んでくるのが興味深いところ。先程挙げた『欲巣にDREAMBOX~』の曲調の変化もある種のインパクトになっているように思えますし、『DIFFERENT SENSE』『激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇』『流転の塔』においてはデスボイスとクリーンボイスの対比のさせ方が見事。最後から2曲目の『VANITAS』は「激しい曲が続いた後に来るメロディアスなバラード」という立ち位置そのものが「分かりやすさ」を強調させているように感じられます。
キャッチーさは少な目なので、最初聴いた時は「凄いけどよく分からない」と思うところもあったのですが、何度か聴くうちにその一筋縄で行かない世界観にはまってしまいました。決して万人受けする作風ではないですが、独自性に裏打ちされた実力を充分に体感できるアルバムになっているのではないでしょうか。
評価:★★★★★