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剣と魔法と異世界兵器  作者: 日暮悠一
5/15

訓練開始

メイドさんのお陰で部屋に無事到着することが出来た俺は、部屋に付けられていたベッドに腰かけていた。


そこまで狭くはない部屋に、装飾も一般の物とは思えない豪華さだ。壁や床は金のラインが入った白色で、清潔感が半端じゃない。カーペットは高級そうな赤、レッドカーペットである。


大きな天蓋付きのベッドとドレッサーがあり、クローゼットも馬鹿みたいに広い。こんなに入れる服ないだろ......と思うが、王族ともなるとドレスやら正装やらで仕舞うのも大変なのかもしれない。ていうかクローゼットがあっても入れる服が無いので意味が無いような気もするが.....。着の身着のままで召喚されたのだ。着替えだけではなく、その他生活必需品すら持っていない。


この部屋に到着した時はまるで高級ホテルだとはしゃいでベッドにダイブしたりもしたが、よく考えたら制服で寝るのは少し抵抗がある。どれだけ考えても解決しないので、諦めてベッドに寝転ぶことに。一応ブレザーは脱いでいるのでクシャクシャになるのはワイシャツのみで済む。


「ステータス」



-------------------------------------------------------------------------


名前: 新谷 伊織

性別:男

年齢:17

レベル:1


生命力:20 筋力:10 速度:10

物理防御:10 魔力:15 魔法防御:10


スキル:【高速思考】


-------------------------------------------------------------------------



「はぁ.....」


一人、ステータスを見て溜息を吐く。ステータスは一度鑑定すると、何度でも見ることが出来るらしい。


何度見てもこの数字は変わらない。どれだけ目を擦っても、何度ステータスボードを消してもう一度呼んでも結果は同じ。俺のステータスは最弱のままだ。そりゃこの世界の人から見たら落ち込むほどじゃないのかもしれないが、俺の境遇からすればそれは見当違いだと言わざるを得ない。


こちらがどうかは知らないが、出る杭は打たれる。たとえ良い方にでも悪い方にでも。この場合、天笠は前者、俺は後者だ。その間には天の地ほどの差がある。


エルンペントに召喚されて、ステータスが数値化したことにより個人の能力は丸分かりになった。これから俺への対応は更に酷なものになるだろう。確実に俺はアイツらよりも下だと分かったんだ。逆に天笠は今まで以上にもてはやされる事だろうな。イケメン、文武両道に勇者まで追加されたんだ。自明の理といえる。


それに対して俺はストーカー野郎(冤罪)に加えてクソ雑魚とかいう不名誉な称号まで手に入ってしまった。評価は雪崩のように下がっただろうな。


「笑い事じゃないんだよなぁ〜」


元々低い評価が更に低く。例えるなら平民から奴隷身分に下がったようなものだ。このままではこっちの世界での身分も最下層に.....それだけは避けたい。なんとしても避けたい。


(でも、今の俺に出来ることなんてないしなぁ)


ステータス画面を見ていると気がまいる。そんな時、ふと目に入ったのは俺にとって唯一無二のスキル【高速思考】。寝っ転がっていた状態から起き上がり、ベッドに腰かける姿勢になる。.........使ってみようか。そう思い、スキルを使おうとしたが、重大な欠陥に気付いしまった。


どうやって使うんだ?これ。


まだスキルの使い方なんて習っていないし、どうやって使うのか皆目検討も付かない。とりあえずスキルを使うように念じてみる。


瞬間、俺の脳内に様々な情報が溢れ出す。


スキルについて、異世界について、自分の能力値について、考えがまとまらない。気持ち悪いくらいに頭が回転している。色々な考えが浮かび、そしてまた消えていく。異常なほどの情報量が頭にぶち込まれたみたいだ。


やばい、これ、吐きそっ...


「うぇぇぇ...」







あ、危なかった.....。吐く直前でスキルを止めることが出来たので、どうにか最悪の状況を回避することに成功。一気に頭の中は正常に戻り、少し休んだら吐き気も治ってくれた。スキルを止められなければ、トイレを見つけられずメイドさんに余計な仕事を増やしてしまう所だったぜ。新たにゲロ野郎という称号も手に入れてしまう所だった.....いやこれは本当に危なかった。


(あ〜スキルを試しただけなのに頭が痛いし凄い疲れた)


ボフン、とよく弾むベッドに沈み込み、頭を押さえる。次にスキルを使うときはもっと気をつけなけなければならないが、これで俺がどれだけ無能かが明らかになったわけだ。


大したステータスも無く、スキルも碌に使えない。こんな異世界人になんの価値がある?はい、一ミリもありません。


最悪だ......スキルはマシだと信じてたのに。これじゃあ正真正銘の無能だよ。ああ、明日が来なければいいの......に....。


広い部屋の中に、一つの規則正しい寝息が響く。


明日が憂鬱になりながらも召喚やその他で疲れていたのか、俺の意識は闇に溶けていった。









翌日、早朝六時。


俺を含んだクラスメイトの姿は王城にある訓練場にあった。


魔王との戦いに参加しないとしても、最低限戦えるようになっておかなければ自分の身すら守れないということで俺や戦闘反対の奴も訓練を受けることになったのだ。これから受けるのは剣術や槍術などの近接戦闘技術の訓練。正直言って少しそれを楽しみにしている自分がいる。剣、槍なんて俺みたいなオタクからしたら夢の武器みたいなもんだ。それを直に体験できるとなれば興奮するなって方が無理ってもんだろう。


ちなみにこれは王様が直々に言っていたことらしく、俺が食事部屋を去ったあとに知らされたことだ。ネルムさんという心優しいメイドさんが教えてくれた。昨日俺を部屋に案内してくれた人だ。


そして、俺達の訓練を担当する人が来る。はずなのだが、開始時刻を十分過ぎた今でもまだ現れない。不真面目な男子なんて中々来ないからバックレようとしているのもいるくらいだ。


「まだ来ないのかよ!遅すぎるだろ!」


最早お約束と言わんばかりに食ってかかる五十嵐。


「申し訳ありません、もう少しお待ち下さいますよう」


対する答えは淡白なものだ。下手な態度を取れば面倒なことになると分かっているのだろう。


「本当に申し訳ないと思ってんなら俺にちょっと付き合えよ姉ちゃん」


いつもなら五十嵐を諌める天笠達は勇者としての訓練で違うところに行ったので今ここにはいない。結果としてコイツの暴走が起こっているわけだが.....


「今は勤務時間内ですので」


一瞬で即答されてるし、よっぽと嫌なんだろうな。まあでも五十嵐が彼女を誘いたくなる気持ちも分からんでもない。金髪、碧眼、それだけでも高得点だというのに顔立ちも整っているときた。控えめに言ってもかなりの美人だ。


「ああ?俺は勇者だぞ!?」


いや、お前は勇者じゃないだろ。そんなツッコミを入れる間もなしに、タイミング良く訓練場に一人の男が姿を現した。


「おお〜すまんすまん、会議が長引いてな。で、コイツらが件の異世界人か?」


鎧の上からでも分かるほど発達した筋肉、素人目でもこの人が強いと理解できる。見た目だけではなく、その纏う雰囲気が強者のそれなのだ。それを感じたのか、五十嵐もいつまにか元の位置に戻っている。無精髭と磨かれていない鎧がそれを台無しにしている気もするが、悪い人では無さそうだ。


「はい、あとはよろしくお願いしますね。私は仕事があるので。ーあ、あとやり過ぎないように、と王から伝言です」


「了解了解、任せとけって!」


不穏な言葉が聞こえた気もするが、爽やか(?)にサムズアップする男。


「じゃ、まずは自己紹介からだな。俺の名前はカルガロット・サースティン。一応この国で騎士団長をやっている者だ。これからお前達の訓練を担当するのでよろしく!」


そう言って、カルガロットはニヤリと笑った。


騎士団長!道理でこんなにオーラがあるわけだ。王様から直接伝言が届いているというのにも頷ける。


自分達を指南してくれるのが王国最強の一角だと知って興奮しているクラスメイトも少なくは無かった。俺もその内の一人だが、強い人から教えてもらえるというのは心躍るものがある。


「まあまあ落ち着け、お前ら。まずは気になっているであろう俺のステータスから教えてやる」


カルガロットはステータスボードを呼び出し、それを俺達に向けて読み上げた。



-------------------------------------------------------------------------


名前:カルガロット・サースティン

性別:男

年齢:32

レベル:252


生命力:880 筋力:790 速度:770

物理防御:750 魔力:500 魔法防御:640


スキル:【剣王】【毒耐性】


-------------------------------------------------------------------------



絶句、そうとしか現せないステータスだ。まずレベルが252!?100が限界じゃないのかよ!それに全ての能力値が500を超えているなんて天笠以上の化け物だ。スキルも強そうだし。なんで【毒耐性】だけあるのかは分からないが。とりあえず強そうだ。


彼がステータスを読み終わったあと、それを聞いてクラスのオタク軍が手を挙げて質問を始めた。


「す、すいません。レベルの上限って、100じゃないんですか?」


武人を前にしてビクビクとしながら質問するオタク軍幹部 山田 健太 通称ヤマケン。


「そんなこたぁねえよ。人間族で1000を越えたって話は聞いたことねえがエルフ族には何人かいるぜ?馬鹿みたいな強さだけどな!つーか敬語はやめろ!どうせ長い付き合いになるんだ、もっとフランクにいこうぜ!」


レベル1000というのは置いておいて、敬語無しか。この人、凄い人当たりが良いな。なんか悪っぽいけどちゃんとしてるっていうか。面倒見が良さそうなんだよな。


「ま、他の質問は後にしてくれや。ただでさえ俺が遅れて来ちまったってのに更に時間が無くなる。早速始めるぞ!」


そうして、俺達の訓練は始まったのだった。


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