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剣と魔法と異世界兵器  作者: 日暮悠一
2/15

異世界召喚

目の前が真っ白に染まり、俺は目を瞑る。


瞼の裏の明るさが消え、光が収まったことを確認してから目を開いた。座っていたはずの椅子は消えて床に尻餅をついてしまう。教室のタイルではなく、大理石のような床に、驚きながら顔を上げると、まず視界に入ったのは荘厳な王座だった。


金色の王座、簡単に言うなら金ピカのでかい椅子だ。周囲を見渡すと、白色の壁に細やかな彫刻があしらわれており、その様風はまさに中世のお城といったところか。実際に見たことはないが、ベルサイユ宮殿のようだと思う。


俺達がいる部屋は異常なほど広く、一クラス四十人近くが入っているというのに狭さというものを感じない。連なるように太い柱が建てられていて、円形の天井を支えている。王座から真っ直ぐ後ろの出口に伸びた道の両脇には鎧を着て槍を持った兵士達や、長いローブを纏い、杖のような物を持っている人物が立っていた。


(まさか......異世界召喚とか言わないよな....!?)


異世界系のラノベは好きだが、実際に自分が行くとなると話は変わってくる。違うはずだと信じたいが、学校の教室にいた俺達全員をこんな所に運ぶ術は現代には無い。集団で白昼夢を見ているとしたら別だが、この質感や空気感は本物だと自分自身の五感が訴えている。それに、本当にここが異世界だというならこの状況にも納得がいく。


「痛ってえ....どこだよ、ここ!」


その言葉で初めて林道や天笠の存在に気づく。他クラスだったはずの彼らがここに来ているということはやはりクラス内にいた全員がいると考えて良さそうだ。それに、いないとは思っていなかったしな。


「なによ!ここ....」

「誰!?あの人達!教室はどこなのよ!」

「なんだよ!ドッキリか!?」


林道の発言によって我に帰ったのか、クラスの奴らが騒ぎ始めた。このままじゃ収拾がつかないと判断したのか、王座に座っていた人物が立ち上がろうとする。


「落ち着いて!皆!静かにするんだ!」


口を開こうとした瞬間、天笠の声が広間に響き渡る。こういう所でリーダーシップを取れるからこそ天笠は超人なのだ。先程のように騒いでもおかしくない状況で他の誰かを気にかけることが出来る、それが可能な人間は決して多くはないだろう。ただ、口を開けたまま所在無さげに突っ立っている国王のようなオッさんには同情を禁じ得ない。


「オホン!」


静まり返った広間で咳をして注目を集めるオッさん。全員の視線が自らに向いたのを確認して再度話し始める。


「異世界の勇者達よ!よくぞ我が呼びかけに応えてくれた!ここはエルンペント、そなた達の世界で言うところの異世界じゃ!」


やはりここは異世界だったようだ。推測が当たっていたのを喜ぶべきか、それとも悲しむべきか。俺は可能性として考えていたのでそこまで驚きはしなかったが、他のクラスメイトは違う。異世界と聞いた途端、またさっきと同じような問答を繰り返している。


その騒めきが鎮まった頃、男は話を進める。


「余の名前はアルグラッド・レアルロード。この国、レアルロード王国の国王にあたる!」


それと同時に俺達の両脇に立っていた兵士達がザッと音を立てて膝まづいた。生徒達はその音にビクリと身体を震わせ、目の前の男が本物の王であるということを思い知らされる。


そんな中、スッと手を挙げる者が一人。もちろん天笠だ。この雰囲気の中で意見を言おうなんて奴は天笠くらいしかいないので、間違えようが無い。


「む、そこの少年よ。どうした?」

「はい、僕は天笠 勇樹 という者です。幾つか質問をよろしいでしょうか?」

「うむ、よかろう。なんなりと質問するが良い」


(今の少しの情報でもう質問をまとめたのか。流石、学年一位は違うね)


他のクラスメイトなんて思考放棄状態だ。自分で考えようともせずに、全て天笠任せ。ま、そんなことを言っている俺もアイツに頼っているんだけど。


「それではまず一つ目、何故我々はここに呼ばれたのですか?」


初手から核心を突く質問をする天笠。それに対し、国王は説明を始めた。


長いので要約すると、それはなんともテンプレな話だった。


この世界、エルンペントには魔王というものが存在する。そもそも、人間族の他にもエルフ族やドワーフ族などもいるらしいが、中でも問題なのは魔族だった。魔王は童話の存在よろしく人間族を根絶やしにするため、魔物を解き放ったという。


魔王によって生成された魔物の軍勢は、人間を蹂躙した。力を持たない一般人など、格好の餌食でしか無かったということだ。それでも、人間というのはただでは転ばない生物だ。神に祈りを捧げることで、人類は「スキル」と呼ばれる超常的な力を手にした。


その力によって魔物は退けられる。多くの人々が救われ、この戦いは終わったかに思えた。が、一度一つの種族を絶滅させようとまで考えた奴がそこで諦めるはずもなく。最近になってまた魔物が活性化した。


前回の侵攻時、冒険者という職業が出来たためスキルに対する理解や考えが深まり、魔族といい勝負をしているらしい。しかし、それでは決着が着かない。数百年前からの禍根を絶つために、各国の王族は異世界から勇者を召喚することを決定したのだった。


魔王は勇者の持つ《聖剣》でしか殺すことは出来ず、今この時代に勇者はいない。ゆえに異世界から召喚するという身勝手な行動に出た。


エルフ族やドワーフ族も魔王の被害に遭っており、双方から魔王討伐の援助を貰えることを確定している。


その話を聞いていて、俺はいわれの無い違和感に襲われた。どこか話が噛み合い過ぎている気がする。考え込んでいると、どうやら話が終わったようでクラスメイトの声が聞こえる。


「ふざけるなよ!無理矢理召喚して戦えだって!?」

「そうよ!戦争なんて嫌!」

「戦うなんて冗談じゃない!早く家に返してくれ!」


まあ無理も無い。突然勇者召喚なんてものに巻き込まれて家族と離れ離れに、その上種族間の戦いにまで参加しろと来たもんだ。この反応でもおかしくない。


国王に対して怒号が飛び交う。あまりの態度に、兵士が動く素振りを見せるとそれを見かねた天笠が立ち上がる。


「皆の言うことももっともです。僕達はあなた方に勝手にここに呼び出された。その責任はどう取るおつもりですか?」


敬意を払いつつも、少しばかりの敵意を含んだ声音で天笠が問う。


「もちろん、こちらに召喚された君達に無理矢理戦えとは言わない。有志の者だけで戦ってもらいたいのだ。他の者にも、この王宮での最高待遇を約束しよう」


思ったより悪くは無い、と俺は思う。従わないなら殺すとか言われないだけマシだし、魔王なんてのがいるってことはラノベのように隷属魔法なんてのが有ってもおかしくはない。


「話は分かりました。でも、僕達は向こうの世界ではただの一般人です。魔王と戦うのにお役に立てるとは思いませんが?」


天笠の言う事は間違っていない。確かに俺達は一般市民で戦闘経験なんてまったくといって無いだろう。逆に有ったら驚く。しかし、ここは異世界である。


「それは問題ない、この世界に来る際なんらかのスキルを授けられているはずじゃ。アリアナ!」


王様が王座の横にある扉に呼びかけると、そこから一人の少女が入って来た。


国王と同じ美しい金髪が、円形の天井から降り注ぐ太陽の光によって美しく輝いている。端正の取れた目鼻立ちは、市薗にも負けないほどの美貌を映し出しているようだ。控えめに言って物凄い美人である。


それを表すように、男子達の視線は一斉に彼女の方に向いていた。こんな状況でも欲には忠実なんだな、その状況を俯瞰しながらそんな風に感心する。


「これから、ステータス鑑定の儀を執り行う!」


国王が声を張り上げそう宣言する。「スキル」と聞いてある者は喜び、ある者は何か分からないような顔をする。


俺は、一抹の喜びと不安が混ざり合った表情をしていたのでは無いだろうか。そして、その予感はすぐに的中することになるーー
















一方その頃、何も無い空間にポワリと浮かび上がる光があった。


それは自らの感知領域内に()()が入ったことへの合図。即座にその者の位置の特定を開始する。時間にして約二秒にも満たない時間で、それは判明した。


場所はレアルロード王国王城、謁見の間にて反応は確認される。


待ち続けた存在がこの世界に現れたことへの期待からかボソリと機械音声が空間に響く。


『............やっと、ですか』


その声には、どこか喜色が滲んでいた。

見返してたら思ったんですけど三人が発言しているシーンが多いですね。文章力の無さが露見してます。

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