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剣と魔法と異世界兵器  作者: 日暮悠一
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プロローグ

拙い文章ですがよろしくお願いします

月曜日、新たな週の始まりの日。

しかしそれとは裏腹に、人々の心が憂鬱な気持ちに包まれる日でもある。学生だろうとそれは同じだ。


かくいう俺、新谷(しんたに) 伊織(いおり) も例外ではない。むしろ月曜日など滅びてしまえば良いとまで思っている過激派だ。学校に行くために家を出たは良いものの、歩いて五分で昨日までの休日が恋しくなってくる。それでも親に心配をかけるわけにはいかないので学校を休むという選択肢は無い。


........まあ、俺が学校に行くのが嫌なのは月曜日だからというだけではないのだが。


それはさておき、休日という名の安寧に別れを告げて学校に向かう足を進める。家から近い、という理由で選んだので、登校するのに二十分もかからず学校に着いた。


下駄箱に画鋲が入っていないことに安心し、チャイムが鳴るギリギリに教室に入る。俺はギリギリを攻める男ーーというわけではもちろん無く、教室に入った途端の嘲笑を含む視線を見れば分かるだろう。いじめ、と呼んでも差し支えない行為が、この教室内では行われている。そして不幸な事にその対象は俺だ。


事の発端はある噂だった。それは、俺が学校のマドンナ的存在である 大森(おおもり) 寧々(ねね) に対してストーカー行為を働いたというものだ。絶対に俺はそんな事はしていないが、誰も加害者の言うことなんて聞く耳を持たないのは明らかだった。


そもそも、俺のような陰キャが学園のマドンナとかいう寒いあだ名の女に近づくはずがない。にも関わらず、大森はその噂を否定せず放置した。事実ではないと分かっていたのに、だ。それが更に拍車を掛けたのだろう。次の日から、俺の学校生活は一変した。


大森信者の男子からは絡まれるわ女子からは近くを通っただけで睨まれるわで散々だったと言える。


直接的な暴力に出ない分マシな方だとは思っているし、どうせコイツらと一緒にいるのも後一年半だ。我慢できない程の期間ではない。それに根本的な問題である噂を払拭することは既に諦めている。あくまでストーカー疑惑はキッカケに過ぎない。


自分よりも劣っている誰かを虐げて精神的有利を得る。よくあるいじめの原動力だ。自分が人より運動も勉強もできない事は知っている。なにせ授業を聞いていないのだ、出来る訳が無い。役に立たない事を学ぶくらいなら、今やっている仕事を進める方が有意義な時間を過ごせる。これでも小説家の端くれなので、授業時間があれば何文字書けることか。両親とも学校には行くと約束したので、途中で投げ出すことはできない。


先生に相談した所で意味は無いだろうし、耐えるのが賢明な判断だろう。そう割り切ってはいても、堪えるものは堪えるのだが。


そんな教室の雰囲気に諦観の念を抱きつつ、自分の机に座って居眠りを決め込む。机に書かれている落書きはスルー。相手をする価値も無い。ていうかこれ、学校の備品だし器物損害的なので訴えられたらどうするのだろうか?


「おいおい、クソ陰キャがまだ学校来てるぜ?」

「あんな事したのによく来れるよな、恥ずかしくないのかよ!」

「馬鹿だから恥なんて知らねえんじゃねえの!?」


恐らくこの落書きをしたであろう三人組が笑いながら俺を馬鹿にする。


斉藤(さいとう) 篤志(あつし)十勝(とかち) 義直(よしなお)五十嵐(いがらし) 真也(しんや)の三人は、この学校ではある意味有名だと言える。一年の頃からクラス内でこのような行為を繰り返していたらしい。俺の耳にも入っているということはかなり大きな噂だったということだ。


面倒な奴に目をつけられたという自覚はあるが、そんな五十嵐達でも暴力は振るってこない。小心者なのか俺など相手にしていないのか。証拠を残さないためとかそんな所だろう。変に頭が回る奴だ。


それに馬鹿、というのも間違ってはいない。テストの順位も下から数えた方が速いのだから、言い返す事もできない。ストーカー云々は完全なる冤罪だけど。変に言葉を返せば突っ掛かられることは分かっているので、狸寝入りは続行だ。


「伊織ー!教科書貸してー!」


が、教室のドア方面から元気な声が俺を呼ぶ。


そこにいるのは、茶色のミディアムヘアに丸っこい目。大森に負けないほどの美貌を持つ少女の名前は 市薗(いちぞの) 鏡花(きょうか) という。学園のマドンナとかいう寒い異名を持つ大森でも、彼女には負ける。


「なんで俺の所に来るんだよ......天笠(あまがさ)にでも借りてくれ」


フレンドリーな性格から友人と呼べる人間が多い人種で、俺とは大違いだ。その人当たりの良さはどこか犬っぽさがあると俺は思っている。そんなまさに陽キャを体現したような彼女がなぜ俺に話しかけたのか?


「だって幼馴染じゃん!貸してよ〜お願い!」


両手を合わせてウインクというあざといポーズが許されるのもまた美少女だからだろう。俺みたいなのがやってみろ、飛ぶぞ。もちろん悪い意味でな。まあ市薗のポーズはどうでもいいが、彼女は一応俺の幼馴染なのだ。一家が昔から隣というだけだが、幼馴染といえば幼馴染なので貸すのもやぶさかではない。


しかし、そういうわけにはいかない理由があるのだ。市薗が現れてから俺に向けられる視線は確実に増えている。主に男子のもので、それは「お前みたいな陰キャ犯罪者が市薗さんに近づいてんじゃねえ」と物語っていた。これ以上は会話を続けているだけでも命取りになりかねない。どうにかしないとーーそう思った時、俺にとっての救世主がドアから入って来るのが視界に入った。


ソイツが入ってきた途端、女子達は色めき立ち黄色い悲鳴が上がる。アイドル顔負けの顔面偏差値を持ち、かつ運動でも数多くの結果を残した超人高校生、天笠(あまがさ) 勇樹(ゆうき) だ。


「鏡花、もうすぐホームルームが始まるよ?教科書なら僕が貸してあげるから教室に帰ろう」


優しい口調でそう声をかける天笠。その目は温かなものだが、俺を見た瞬間冷ややかなものに変化する。


「そんな奴に教科書を借りる必要なんて無いよ。代わりに何を要求されるものか分かったものじゃない」


天笠も俺のストーカー疑惑を真に受けている一人だ。しかもコイツは市薗に好意を抱いているらしく、彼女が俺に話しかけているというのだから我慢ならないことだろう。だからといって俺に当たるのはやめて欲しい。俺から話しかけたのでなく、市薗の方から話しかけて来たのだから。


「えー?でも天笠くんも次その教科書使うでしょ?だからやっぱり理央に借りるよ!」


(うわぁ......バッサリいったな市薗...)


天笠からの誘いをこんなバッサリ断るのはこの学校ではコイツくらいのものじゃなかろうか。天笠も少し頬が引き攣っているように見える。ご愁傷様。


「おーい!勇樹!何やってんだ?」


そんな事をしている内に三人目の登場だ。


快活な口調に、逆立った髪の毛。天笠に劣らず整った顔立ちをしているが、その格好からヤンキー感が滲み出ている。名前は 林道(りんどう) (じん) という。天笠と合わせて運動ではこの学校一番といっても過言ではない。


「おはようございます」


更に続けて四人目が教室に入って来た。


黒色の髪に可愛いというよりも綺麗、という言葉が似合うような大和撫子。どちらかといえばつり目な瞳が、クールな雰囲気を醸し出しているその女子は 三条院(さんじょういん) 三葉(みつは) 。三条院グループの一人娘で、天笠と共に校内模試ランキングでトップ2を独占している人物である。


「おはよう、三葉」

「おっす!三条院!」

「おはよう〜!」


分かるとは思うが順に天笠、林道、市薗の挨拶にあたる。


三条院は話したことが無いので内心どう思っているのか分からないが、少なくとも林道は俺のことを好いてはいない。四人揃って面倒なことになるのは避けたいので、この二人に天笠と市薗が気を取られている間に俺は机に突っ伏して寝ている感を演出。チャイムが鳴るまで耐え切れば俺の勝ちだ。


残りの分数を確認しようとチラリと時計を盗み見て、俺は戦慄を禁じ得なかった。


「なっ.....!?」


床に広がっていく幾何学模様。教室の床全体に張り巡らされたそれは勢いよく発光し、俺達を包み込む。逃げなければ、そう思った時にはもう遅かった。






光が収まった教室には、倒れた机や椅子がポツリと残されているのみ。開け放たれた窓から入り込んだ風が、深緑色のカーテンを揺らしていた。

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