第44話 【特賞 SSR】新妻優子の罪禍 3
「よ」
「お~」
数日の調査を終え、ススキ野原の秘密基地で、俺は班目と待ち合わせをした。
「今回の新妻さん救出作戦だが――」
俺は新妻さんに関して、手に入れた情報を班目に開示した。
「そっちは?」
「ん~……」
班目は腕を組む。
「新妻さんがこの団地に住んでるって話を聞いて調べてみたんだけど、休日に図書館に行ってる以外は、やっぱり何もなかったよ」
「何も?」
新妻さんが虐待されているのなら、そんな噂の一つや二つあってもいいものだが。
当初は班目が他人に興味がないから何も知らないだけなのかと思ったが、本当に何もないらしい。不思議だ。
「休日は何時から何時まで図書館に?」
「朝から夜まで行ってるらしい」
「なるほど」
新妻さんは朝から夜まで総明図書館に行っている、とメモに書く。
「十上君、もしかして新妻さんが行ってる図書館がどこか知ってたりしないよね?」
「……」
総明図書館である。
「それはさておき、新妻さんの両親の罵声も聞こえたりしないのか?」
「十上君⁉」
「あるいは物を落としたり暴行したりの音が聞こえたりとか」
「怖いからもう聞かないでおくよ。どうだろう」
「新妻さんの父親は何時くらいに家に帰って来るんだ?」
「二十時くらいだったかな」
「新妻さんは休みの日、いつ帰って来てるんだ?」
「それも二十時くらいだったと思う」
「ふむ」
休日は一日中新妻さんは家にいない、か。
だが、これで一応必要な情報は集まった。いち早く決行に移すべきだろう。
「やっぱり新妻さんが暴力を受けてるとか嘘なんじゃない? 全然そんな様子は見られないんだけど」
「いや、それは確かだ」
「やらなくてもいいことなんじゃない?」
「新妻さんが暴力を受けてないと信じ込んで新妻さんが事件に巻き込まれるようなことになれば、俺は一生俺を責め続けるだろう。後になってから後悔しても遅いんだ。起こってからじゃ物事は対処できない。だから起こる前に対処するんだ。例えそれが俺たちの手前勝手な妄想だとしても。例えそれが根も葉もない噂だとしても。行動することだけが、後悔をなくす唯一の手段だ」
いつ何が起こるか分からない。手遅れになってから後悔したって、もう遅い。俺は俺の人生を、後悔をしないように生きている。
仮に新妻さんが両親に暴行を受けていることが俺たちの勝手な妄想だとするのなら、それで済むのが一番だ。他人に少しの迷惑がかかるだけだ。
「分かったよ。こうなったらヤケだ。最後まで手伝うよ」
「ああ、決行は次の土曜日の二十時、新妻さんが図書館から帰って来る時だ」
「分かった」
俺と班目は綿密に計画を立てた。




