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第20話 秘密ガチャ、再び。 3



「秘っ密ガチャ~秘っ密ガチャ~」


 俺はソーダのジュースを口にくわえながら、歌う。百円を入れて秘密ガチャを回してみた。

 ガチャポン、と黒いカプセルが出てきた。


【レア度】

 N:★☆☆☆☆

【秘密】

 新妻優子は、休日は総明図書館で過ごしている。

【一言】

 よく学校に図書館で借りた本を持って来てるよ!


「新妻さんが休日を総明図書館で過ごしている……?」


 これはまた新たな発見だ。新妻さんが普段いる場所を教えてくれるとは、なんと頼りになるガチャなのか。

 いや、普段新妻さんが読んでいる本に貼ってあるシールを見ればこれは自明なのだろう。レア度も高くない。より言えば、秘密ガチャを使わなくても、俺が少し目ざとくなればすぐに気付くようなレベルの代物だろう。


 だが、こうして秘密ガチャを通して教えてもらえるとは僥倖だ。もし何か機会があったら総明図書館に行ってみよう。いや、気持ち悪がられるだろうか。一応の知識として、俺の脳内に保管しておこう。

 仕方なく図書館に行かないといけないこともあるんだからね。

 そして俺は再び秘密ガチャに金を入れた。


「良いの来いっ!」


 一回目のような銀色の、レアリティの高いガチャが出て来ないだろうか。新妻さんの秘密は嬉しかったが、驚くような秘密を見てみたい。

 ガチャポン、とカプセルが出てくる。


「これは……」


 黒いカプセルでは、ない。銀色に塗ってあるカプセルが、出てきた。


「レアガチャ、キターーーーーーー!」


 黒沼先生の時は気付かなかったが、これはレアガチャだ。俺は目を丸くして、カプセルを手に取った。銀のカプセル、これは黒沼先生レベルの、相当良い秘密が入っているに違いない。何か面白い秘密なら良いな。

 俺は銀のカプセルをゆっくりと、開け、中に入っている紙を取り出した。


【レア度】

 SR:★★★★☆

【秘密】

 水瀬里緒菜みなせりおなは、「ミオナ・フリューゲル」という名前でブイチューバ―活動をしている。

【一言】

 同じクラスの個人勢ブイチューバーだよ! 


「水瀬里緒菜」


 同じクラスの女の子だ。控え目で、とても人前で何かをするようには見えない女子高生だ。


「ブイチューバー……?」


 ブイチューバー、ミオナ・フリューゲル。


 アバターを使ってゲーム実況などをする配信者の総称。そこまでブイチューバーに詳しいわけではないが、どうもSRにあたるほどの重要な秘密らしい。


「おっと」


 俺は時計を見た。残り時間一分。まだ眠気はやって来ていない。


 実験は成功だ。資金が底をつけば意識が刈り取られると予想したが、やはりその推測はあっていたらしい。今俺の手元には十円が残っている。

 これで制限時間が来て眠くなるかならないかが問題だ。意識が飛びそうにならなかったら、この十円を使うとしよう。

 この制限時間がこの世界にいられる制限時間かどうかを試す必要がある。


「三、二、一」


 制限時間が来た。


 ピピピ、ピピピ、ピピピ、と腕時計から音が鳴る。


「あぁ……」


 意識が朦朧としてくる。抗いようのないほどの、強烈な眠気。


「眠くなってきた……」


 やはり、制限時間はこの世界での制限時間だったか。唐突な眠気に襲われるたびに思うのだが、人間は眠気をコントロールできないのだろうか。

 授業中に眠くなるくらいなら、寝れない夜にその眠気を……。



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