4:家庭教師と
執事とお手紙経由でお父さまに絵の禁止事項を教えてくださる知識を教えてくださる先生を着けてほしいとお願いして1か月、
今までの家庭教師の先生(基本的な文字と計算を教えてくれていた)とは別に新たに雇われた先生はまだハッディ・インディーゴというメガネをかけた藍色の髪の方で、先生をやるにはまだ若いように見える方でした。
歴史と絵を教えてくださいます。
「ハッディ・インディーゴと申します、
リリアーヌ様の絵と歴史の教師に選ばれました
これからよろしくお願いします。」
「リリアーヌ・ファサ・エッジワーシア・クリサンタと申します、
インディーゴ先生、これからよろしくお願いします。」
紺色のドレスの両側を持ち、腰を落として6歳の私に挨拶をしてくださるその物腰は、楚々として落ち着いた大人の女性で、私は初めて会う新しい大人その方に少し緊張しながらカーテシ―を返した。
カーテシ―はゴールドリーフ王子様に初めて逢う前くらい、つまりまだ前世の記憶を思い出す前にさんざん家庭教師の大人たちに叩き込まれた所作です。
素の6歳で覚えた割に、というか6歳という「ものごとや動作や言葉をおぼえる」のに適した年齢だからなのか、吾ながらなかなか上手にできていると思う。
インディーゴ先生は私のカーテシ―をみて、少し表情を柔らかくしてかすかに頷いたように見える。
「リリアーヌ様は絵の描き方、歴史・情報はもちろん、
描いて良いこと、悪いことを知りたいとか、
タブーを知りたいというのは、
それも描いて顰蹙を買ってしまわないように知りたいとはそのお歳で珍しい意見だと思います、
ですが今のお歳で座学から、それもすべて知ることはできないと思いますので
まずは実技を優先で……実際に絵を描きながら、
知識の方も学んでいっていただければと思います」
物静かなしゃべり方をする方でした。
そしておそらく、いえ、まちがいなく、子供相手の教示になるのは初めなのでしょう、ひんしゅく、なんてこの年の子供にはたぶん解らないのに。
「……お判りいただけたでしょうか?」
返事を求めるように小さく首を傾げられたので私は元気よく
「はい!まずは絵を描きながら、少しづつ知識を教えていただくというわけですね!」
と6歳児らしく復唱してみた。
ひんしゅく、の意味について訊くのはとりあえずスルーしました。
この宣誓の性格がまだわからないので、
先生の質疑応答の予想外からの質問は突っこみ、つまりいちゃもんとも受け取られかねないのでしません。
前世の経験をいかすのです……!!
(トラウマとも言うか)
……どうせ前世のお陰で何となく伊美は分かりますしね。
きちんとした意味と形はその内国語の教師にならうでしょう。
「……そうです、
お嬢様は6歳なのに大変理解の、頭の良いお嬢様です」
その日、先生はクロッキー帳を持ってきてくださり、基本的な絵の練習ということでリンゴの絵の練習から始めました。
よく見て、書き写す、リンゴの特徴はただ単純な丸じゃない、意外と凸凹しているからよく見る、影を忘れずに足す、と6歳児に求めるには少々レベルが高い気がしました。