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1:感謝することは色々あるが出自と平和と紙とペンとインクの質に感謝したい。

見切り発車!

書きたいことを書きたい部分だけ書いていくスタイルです。

 どうもはじめまして、公爵令嬢リリアーヌです。


 フルネームは「お嬢様」もしくは「リリアーヌ」としか呼ばれないのでよく理解してませんでしたが、ここ最近、

 毎日毎日『初めて会った方への挨拶』を叩きこまれて、「リリアーヌ」と「と、申します」の間に挟まれていた部分が残りの名前だな、と先日理解しました。

 それによると私の名前はリリアーヌ・ファサ・エッジワーシア・クリサンタです。


 “前世”というモノは『銀河系第三惑星地球という星の日本という国』の一般平民でした。

 職業は横に置いておいて、趣味はぬるい歴女とディープなアニオタの二束わらじでした。


 そんなわけで己の現状と前世の自分の記憶差で、異世界転生したのだな、と冷静に理解できる私の部分と本当にあるのかよと驚く私の部分と、

最初に前世の記憶を思い出したときから一通り今の私になるまで『ぜんちぇってなに?ギンガセイってなに?』と色々自問自答を繰り返して色々思い出したというか色々知ったというかで知恵熱出しちゃった私の部分が融合するまで七日七晩、よく熱を出してうなされました。


 これだけ長い間熱を出してよく生きていたものだなと思います。

 よく面倒を見てくれたメイドさんたちと屋敷常駐の治癒しに感謝です。


 感謝することは他にもたくさんあります。


 まず公爵……貴族の令嬢であること。


 これで前世と違い、いじめられっ子になる恐れはありません!!

 いや、貴族のご令嬢でも前世の読み物によればメイドたちに嫌われてお世話してもらえないとかひそかに虐待されるとか読んだこともありますが、少なくとも私にはそれは当てはまりませんでした、 

 今生き延びているこの状況と覚えている限りの記憶が証明してくれています。


 次にどうやらこの世界、中世ヨーロッパ風ファンタジー世界らしいのに、

 衛生・生活環境レベルが令和日本並みに良いようだということです。


 毎日奇麗なお布団で眠れる至福よ……。



 次にその、「中世ヨーロッパ風ファンタジー世界らしいのに衛星・生活環境レベルが令和日本並みな生活水準」を支える一助である原因として魔法がある、ということ。


 筆頭メイドが汗をかいた私に洗浄の魔法をかけてくれていましたし、熱で寝こんでいたころも私に毎日治療師が治療の魔法をかけてくれていたらしいです。



 次にこんなことを悠長に気づくまで安穏と寝て過ごしていられたくらい、生活に余裕と平和がある状況。


 革命の足音が迫っているのに気づいていないという可能性はありますが、少なくとも戦禍の音とかは窓を開けてもらっても聞こえません、家の塔で私の行動範囲で許される一番高い塔に上って街を見下ろしても平和に炊事の煙が上がっているところを見ると、へいみんたちの生活も朝餉とお昼ご飯を食べる余裕があることは確かです。

 ちなみに夕飯が食べられているのかは日が沈むころになると塔に上れないし(許されない)降りなければならない時間帯なので分かりません。

 まあ暗くなったら塔の階段の上り下りが危険ですしね、私を連れて上り下りしてくれるメイドさんたちに無理を言っちゃいけないわよね。


「お嬢様、よろしいですか?」


 思考にふけっていたら傍で王子様にお出しするお手紙の内容を読み上げてくれていた書記係のメイドさんが私に確認をとってきました。


「はい、それでお願いします」


「ではこちらにサインを」


 さて、差し出された手紙の末尾にようやく習い覚えたばかりのこの世界の文字での自分の名前を書きこみます。


 本文は字の奇麗なおつきメイドの一人が書いてくれました。

 手紙に書かれた自分の字は末尾のサインだけとなります。


 ふと、思い出したことと茶目っ気をだしてメイドに確認をとってみる。


「王子様へのお手紙に、この余白のところで良いのだけど、

 ちょっとだけ、絵をかいてもかまいませんか?」


「絵、ですか?」


「はい、あなたの文字はキレイで素敵なのですが、

 私の書き込むところがサインだけというのは少し寂しい気がして……」


「本文はお嬢様が考えられているのですから寂しいということも無いと思いますけれど、

 よろしいのではないでしょうか?」


「良かった!」

 

 しきたりとして描いてはいけません、とか言われなかったので私はちょこっとだけ、

 サインの末尾に幸運のクローバーを描いて、さらに余白に小さく自分のデフォルメ似顔絵を描いた。

 小さすぎて顔のパーツは笑顔であることしかわからない、単純で簡素な絵だけれど、縦ロールの髪の毛で私だとわかるだろう。


 そして書き心地にしみじみ実感する。


 この世界の良かったこと、感謝することの一つ、

 紙の質と、ペンの質と、インクの質。


 ペン先が紙に引っかかるということも、インクがだまになって変な絵になるということも無い、にじむということも無い。

 きれいに思い通りの曲線が描ければ、奇麗に思い通りの絵がかけたし、線の太さは手に力を入れたり抜いたりした通りに素直に思い通りの線が描けた。


「良く描けたわ!!」


 紙が安く手に入るかどうかによるけど、お絵かき帖をおねだりしても良いかもしれない。

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