6話 世の中とは自分の知らないところでも回る
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
一泊というには長い時間いたような気がするがそろそろ捕虜の人達の所に行かなければ心情的に休めん。
そしてまさか必要な犠牲だったとしても間接的に命令したため殺す事になるとは思わなかった。残念ながらもう遅いのだが。
「ヒカリ。捕虜の人達がどういう人か分かるか?」
「うん!多分ねーエルフと獣人、吸血鬼に人間あとはドワーフだね。」
うん。うん。俺はびっくりだよ。そんなにいっぱいとは聞いていないよ。ヒカリさん?良心を残して教えてくれませんかね?
だが…そうか。この世界は俺が思っていた以上に酷い世界なのかもしれない。略奪、強盗などが朝飯前なら認識を改めないと行けないな。
「よし。ヒカリ。会おうか。楽しい時間に成りそうだな。」
「うん!マスター!頑張ろうね!」
あ。そうそう話していなかったが基本捕虜達には牢屋の地面に寝かせている訳では無いぞ?
聞いた感じ服もボロボロで首輪も付いているらしいので服は新しく牢屋の中だがベッドも付けて皆と離れないように配慮はしている。
首輪に関しては会ってみないことには分からないので保留にし一回会ってみることに。急に殺しに掛からないといいな。怖いし。
ダンジョンワープを使い、捕虜の間から少し離れたところにワープをした。流石に目の前にワープするには初対面の人達の心象が悪くなりそうだ。
とは言っても捕虜なのには変わりは無いため初めから悪くはなりそうだが。
そんな事を考えつつ歩みは止めない。これでも数時間は立っているだろう。捕虜の人達がどんな人であれ、余り待たせるのは前の経験で良くないと知っているからな。
俺は捕虜の間に近ずくと、わざと靴の裏から音を出しゆっくり歩く。恐怖と牽制のつもりでやっているが果てさて。効くか?
そして目の前に付き捕虜となった人達の事を軽く見る。服はちゃんと着ておりそれぞれの個性が出ていて見ているだけでも楽しい。が。それはそれだな。
「まず。ここのダンジョンマスターをしている。ユウだ。君達には捕まってもらった。」
俺は笑顔でそう切り出す。皆はそう切り出すとは思っておらず困惑をした顔でこちらを見る。
「聞いて良いか?」
一人のおじちゃんがそう答える。
「話せることだったらいいぞ。」
「なら。お言葉に甘え、ここはどこにいるのでしょうか?」
見た目、執事に見えるので前職はそういう系だったのかもしれない。今は残念ながら奴隷だが。
「ここか?ダンジョンの中。何らなら地下101階層。ここから出るつもりならやめた方がいいぞ。」
「な…なるほど。」
流石の執事も動揺はするか。まぁ。そうだな。俺だってダンジョンに入ったばかりなのにいつの間にか地下101階層にいたら卒倒しそうだしな。
これに関しては頑張って納得してくれとしか言えないな。俺からすればそもそもこの世界が有り得なかった訳だからな。
「もう終わりか?」
「い…えいえ。」
執事がギリギリの笑顔で踏ん張っている。もうお腹の中はいっぱいなのかもしれないがこちらも事情があるしな。
「私から…いえ。私達からお願いがあります。」
「ん?」
「この首輪を外してもらって王国。ヴァーパウル王国に返して頂けないでしょうか?」
なんか。嫌な予感がするな。
「何故だ?」
「今、現在ヴァーパウル王国は帝国に侵略を受けていて崩壊が近いのです。」
はーい。的中致しました!やったね。嬉しくないが。
「ハー。行ってどうする?」
「王や姫様方のお助けをしたいのでございます。」
「俺が見た感じ身体はボロボロ。体力的にもキツイ。そして寝不足気味。そんな状態で城まで落としてきた帝国軍に勝てると?」
「……。しかし行かなければ。」
「行かなければ。なんだ?」
「これまでのエルフやドワーフ。人魚に獣人の御恩が受けれなくなり、災厄の場合人間の国という国が崩壊致します。」
御恩……か。そうか。だから奴隷の中には色々な種族が捕まっていたのか。王国で暮らしていた人達が。
「そうか。だが。壊したのも人間なんだろ?」
「はい。」
「なら。もう。御恩とやらは受けれないんじゃないか?その話から行くなら王国はもう瀕死の状態。しかも挙句にそれを壊しているのは人間。不可能に近いが?」
「………。策はございます。」
「策か。」
「はい。王国には各所からの荷物が届きます。そのおかげで各国とも友好に接しており荷物が届かないと分かれば援軍を出してくれます。」
そうか。だが。多分その国も一枚岩では無いだろ。だから援軍は来ない。希望に縋るのは簡単だが事実は違う。どこの国も自国優先だ。荷物が来ないと分かれば違う国と友好を結びそちらに加担する。そちらの方が国の発展のために簡単だからな。
ただそれを俺が言うのはお盆違いなんだろうな。そもそもこの事件には俺は関わっていない。みんなの目を見ればこの方法が最善の策だと思い込んでいる。
「そうか。なら。自由にすると良い。ヒカリ。首輪を外して解放してくれ。」
「いいの?」
「あぁ。」
「分かった。」
首輪を外して解放するのはヒカルに任し、俺はある所へ。裏を支配し情報を速やかに入手出来る魔物。それは40階層。暗黒蜘蛛。
ダンジョンワープで直ぐにボス部屋へ。俺の気配に感じたらしく、じっとしている。
「暗黒蜘蛛。少し早いが任務を出す。速やかにヴァーパウル王国に潜む黒幕の情報と並列して王族の救出。そして出来ればあいつらを裏から護衛を頼む。例外としては早いが名前を与える。暗黒蜘蛛。お前の名前は、メルダーだ。」
そう言うと五メートル以上あった暗黒蜘蛛が黒い球体に変化し一秒間ずつ小さくなっていく。そしてそれは一つの人型に形成されている。
「わかりましたぁ。ますたぁー」
そう言って出てきたのは紫髪の可愛い顔した少女だった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━