2話 強いからと言って精神が強いとは限らない。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「ここは、何処なんだ?」
気絶から覚め辺りを見回す。しかしどこを見ても岩、岩、岩。俺が寝ていた場所も当然岩。
ただ全身が痛いと言うわけでは無さそうなのでこっちに連れてこられて数分ぐらいだろう。
俺は立ち上がり少し背伸びをする。気持ち的に凝っている気がするので何となくやる。
気持ちを整え真後ろを見る。さっきから青白く辺りを照らしていて空間が少し寒い気がするのは多分こいつのせいだろう。
見た目は丸いそして青い。よくラムネに入っているガラス玉に似ているが。俺の予想が正しいのであればこれはダンジョンコアに当たるんじゃないだろうか。
『マスター』
「!!??」
俺は驚き、辺りを見回したあともう一回丸い物体に視線を向ける。
(ま。こいつしか喋るヤツいなしな。)
『マスター?どうしたのですか?』
「マスターとは俺の事か?」
『はい。』
「何個か質問をしていいか?」
『答えられる質問なら。』
俺は少しだけ目を細め必要な質問を考える。
「何故、俺がここに呼ばれた?」
『マスターが呼ばれた理由は状況と条件が重なった結果たまたま呼ばれました。』
「状況と条件?」
『はい。状況とは。神様に誘われること。条件とは。身内に家族がいないこと。』
「なるほど。」
俺はその話を聞き納得する。多分神様とはあの少女だったとは思うが聞いてないから定かでは無いが。
「なら次だ。俺は何をすればいい?」
『ご自由にお使いください。』
「なに?」
『この世界はなんでも許される世界です。人を殺してもいい。反対に助けてもいい。女性を襲うのも許され、助けるのもまたひとつ。貴方が何かをするかによって世界は分岐をします。』
「・・・・」
『貴方が決めるのです。マイマスター。』
「なんでも出来るのか?」
『はい。マスターには力があります。個としての力。集団としての力。そのどちらも思いのままです。』
「分かった。最後に一つ質問する。」
『はい。マイマスター』
「俺を選んだのはお前か?」
『……。正解です。私は貴方を選びました。』
「何故。俺を選んだんだ。」
俺は皮肉げに八つ当たりげにマスターと呼ぶ丸い物体に当たる。
『貴方が過去に戻りたがっていましたから。』
「ここは過去じゃないぞ?」
『確かに過去ではありません。ですが、過去の人と会ってみませんか?』
「!!??」
俺は驚き目が泳ぐ。そして丸い物体を凝視する。それは本当なのかと。それは事実なのかと。
『貴方次第です。』
「………。フゥーー。分かった。まだ混乱はするがこれからよろしく頼む。」
『はい。マイマスター』
「それで……だな。名前をつけたいと思う。」
『名前ですか?』
「あぁ。呼びにくいだろう?」
『よろしくお願いします。』
「ヒカリ…で……どうだ?安直な名前になってしまうが。」
『いいえ。ありがとうございます。これからはヒカリと名乗らせていただきます。ふふ マイマスター』
「ヒカリはなんか人間くさいな。」
『多分なんですが……神様に作られた事によってだと思います。』
「神に?」
『はい。基本ダンジョンのコアは自我を持ちません。淡々とモンスターを出し強くしていく兵器です。』
「ならなぜ?」
『私にも詳しいことは分かりませんが…ダンジョンにはマスターは存在しないことになっています。この世界は。』
「そうなのか?普通いる前提で作られていると思ったんだが。」
『人為的に作られたダンジョンもありますが結局は機能しなくなります。老化などで。』
「なるほどな。」
『はい。その為自然的に出来たものでしか続かないためいないと思われて居るのでは無いでしょうか。』
この世界は基本自己中な奴らが多いかもな。それで国家は成り立たないだろうが冒険者は関係ないだろうし。
「ここのダンジョンの防衛はどうなってるんだ?」
『ありません。』
「………ん?すまん。聞き間違えた。もう一回言ってくれないか?」
『ありません。ここの防衛機能はひとつもありません。』
「え?冒険者が討伐に来たらどうするの?」
『一瞬で攻略されます。』
「えーーーーっ!?」
俺は少しだけ甘く見てたのかもしれない。ここにいるダンジョンコアもといいヒカリはちゃんとできるように見えてその身はダラダラ子かもしれないことに。
「ヒカリマスター権限でどうにか出来るか?」
『はい。今から一覧を見せます。』
「頼む。」
俺はヒカリに頼みダンジョンの一覧を見る事にした。果てさてどんな感じで強くできるかね。
俺が考えている間に準備はできたらしく目の前に半透明の板が出てきた。そこの中を見ると モンスター、罠、宝箱、ダンジョン改装、ステータスなどなど色々な事が一気に顕になった。
俺は少し混乱しながらもとりあえずステータスの所をタップする。しかし反応無し。俺は少し困っていると。
『マスター。手を動かさずに頭でイメージしてください。』
「こうか?」
口に出しやってみるとステータスの部分が反応しダンジョンのランクを模索する。ダンジョン自体は低く目で見るとこんな感じになった。
ーーーダンジョンーーー
名前 なし
コア ヒカリ
ランク F
階層 一階
モンスターの数 0
モンスターの種類 なし
ーーーーーーーーーーー
「ヒカリ?」
『………。仕方ないじゃありませんか。生まれたばかりですし……。』
「何も出来なかったと?」
『ま…マスターの権限で出来ませんでしたから。』
「俺が来る前からあったよな?」
『………。な…なんですか!そんなに虐めて楽しいんですか!?』
「凄く楽しい。顔が見れないのが残念だけど。」
「………。もう。知りません。」
「ヒカリ?ちょっと聞いていい?」
『ふんっ。』
「無視しないでよ。悪かったって。謝るから。」
『ホントですか?またやりますよね?』
「気おつけるよ。」
『やらない。って言わないんですか。次から喋りませんからね。』
「あぁ。」
意外と人間味のある奴だと聞いていて思った。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━