発足編7
発足にあたって細かい話を決めていく場面です。
さしあたってはやはり目安箱案件になります!
「ぐっどタイミングじゃ! すぐ近くにいるらしいぞぃ」
気を失ってもなおシカトされ続け、床に寝かされていた足軽教諭は意識が回復し立ち上がったが、見慣れぬ老人が相好を崩して携帯電話を優しくテーブルに置く場面に出くわした。
(ま、また知らない人が増えてる……)
「んでんで!? 誰を召喚したの!? じぃちゃん!!」
ここは異世界ですかと思わずツッコミを入れずには居られなかった軍司。
そしていつの間にか教師バージョンに戻っていた伴峰、そしてタイトスカートがやけに似合う海鏡。
ツッコミという仕事を終えた軍司はそんな海鏡を見て違和感を覚えたが黙っておくことにした。
(ん? 海鏡、教師に変身してるときは身長をちょろまかしてんのな)
普段は背も低く、黙っていれば中学生にしか見えないのだが、確かに教師の時は背丈をちょろまかし、スラッと脚の長さを強調し、バッチリメイクを施し、大人ぶっているように見受けたが、やはり口に出してはいけない気がした。
「すーさんじゃよ! 萬屋の」
『……萬屋すーさん…………』
これまたザックリと説明を加えると、ここ三条で密かに活動する裏地域活性化集団、通称・萬屋は、先の大騒動にて市民をまとめあげ、鍛冶ガールらと共に平和を勝ち取るために心血を注いだ謎の集団である。
いったい何人いるのか、そして普段はどんな活動を行っているのか、まったくの謎に包まれたオジサン集団なのである。
すーさんとはその集団をまとめるリーダーであったが、まとめているのかは甚だ疑わしい限りではあるのだが。
「なんだぁすーさんか……」
「はいはーい、呼ばれて来ましたよぉ」
「はやっ!」
咲良がガッカリするのとすーさんが例の出入り口から無造作に室内に闖入してくるのとが同時であり、すーさんを苦手とする栞菜は一歩後退しながら出現の早さをツッコむのであった。
そんなすーさんはいつも胸に秘めた己の野望を1つと言わず2つ3つと貯め込み、面白そうなことには何にでも首を突っ込む特性を持っている。
「なるほど、なるほどぉ。目安箱ねぇ。考えましたねぇ。よし、じゃあ取り合えず超常現象解決部・ものづくり支部にも設置しますか!」
どこだよそれはと軍司の安定のツッコミが炸裂したところで、咲良はまたしても瞳を輝かせて声を張り上げる。
「えー?! 出来たばっかりの部にもう支部があるの!? スゴい!!」
ついになだめ役のまことも茜も黙り込み、栞菜はひきつった顔を浮かべ、姫子は拳を握って話の行く末をぶりっと見守り、四季彩は話に付いていけず茫然自失としていたか。
「ものづくり支所ってことは、ものづくり学校ですかねぇ?」
「その通りです足軽先生! かねてから権爺さんから話は伺っており、我ら萬屋も一肌脱ごうと決心した次第! 支所にも萬メンを常時設置し、本部と支部の両面から攻めましょう」
何故か足軽教諭の名前を知っていたすーさんに、攻めるとはシュミレーションゲームじゃないんだからと軍司が絶妙なツッコミをくれたところで話は元に戻る。
「つまりはこことその支部で連携しつつ、目安箱に投函されたものを回収。そしめ気になった案件を調査するってことでいいわね?」
議長まことのまとめに全会一致で賛意を示した面々は、次こそは咲良が持ち込んだ段ボールやらで目安箱の作成に取り掛かるのであった。
「ちょっとそこっ! もっとまっすぐ! もっと丁寧に切りなさいよ!」
「えぇー? 真っ直ぐ切れてるっしょー細かいなぁ栞菜は」
「あんた相変わらず不器用ね!」
「姫ちゃんと四季彩は達筆だから目安箱と書いてちょうだいね」
「はいっ! まことさん!!」
「では四季彩式書道術を特とご照覧あれ~!」
「ふぅ~。なんとか形になったな、じじぃ!」
「これも龍神殿の協力の賜物ですじゃ」
「…………」
「いいですねぇ! 若い美少女達の青春群像は!」
鍛冶ガールらはその短いスカートから伸びる脚を組んだり、ブレザーを脱いだワイシャツからは豊満な胸がたわわるのであった。
「わ、私は何故ここにいるのでせう……」
取り残される足軽教諭はただただ立ち尽くすばかりであったが、やはり誰も答えてはくれないのであった。
つづく
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