発足編5
続編ですが、この物語からも入りやすく書いていますのでお気軽に読んでみて下さいませ(*`・ω・)ゞ
ガチャと扉を開くと窓から差し込む木洩れ日が室内を程よく温めていた。
使われていなかった部屋であったか、少し埃臭い室内を進むと窓を開け、外の空気を入れたのは伴場教諭である。
ガランとした室内の中心部には会議用テーブルが二つ設置してあり、最奥には業務デスクが一つ。
それぞれが取りあえず目の前に座ると、早速今後の活動方針について提議したのは生徒会長まことだ。
「それでどうやって部を運営していきましょうか」
つい先ほど知ったばかりの新設の部の活動方針など当然イメージ出来るわけもなく、まだ備品の少ない室内を見渡しては唸るばかりのメンバー。
しかし発起人たる咲良は違っていた。
彼女は挙手と起立を同時にこなすと、そのまま両手で拳を握り溌剌と言ってのけた。
「それはやっぱり目安箱しかないっしょ!?」
令和娘4人には大体の見当が付いたが、天文娘2人は首を傾げて眉間にシワを寄せて互いを見合った。
この過去からタイムスリップしてきた姫子と四季彩の2人は、知らない事柄が降って湧くと、いつも互いをそれとなく観察して知らないのは自分だけなのか、あるいはもう1人も知らないのかを知ろうとするクセがあった。
だがそんな無益な時間こそ無駄だとばかりに人差し指をおっ立てて得意気に話し始めたのは栞菜である。
「とどのつまり困っていることや不思議なことなど気になったことを書面に書いて、あらかじめ設置しておいた箱に投函してもらうわけよ。そうすればわざわざあたしらがなんの脈絡もなく町を徘徊しないで済むって寸法よ。ね? 咲良」
その通りと俄然張り切った咲良は、何処から引っ提げて来たのか、段ボールやらハサミやらを机の上にドバンと出すと、目安箱の制作に取りかかろうとした。
その猪突猛進ぶりを当然の如く停止させたのはまことであり、茜と軍司であった。
「それはいいんだけれど……まだ他にも決めなきゃいけないことがあるんじゃない?」
「そうそう。あんたって相変わらずの猪よね」
「そうだぞ、咲良! 部長とか色々あんだろが」
「あぁ部長ね。そうだなぁ……じゃあ部長は姫ちゃんで副部長はシッキーでいんじゃない?!」
適当かよと怒号が鳴り響いた部室内で、これまた部長の意味が分からない天文娘2人に説明する栞菜と、咲良らの揉め事に介入する顧問の伴場教諭。
「えぇー!? そんな大役、姫子には無理ですよぉ……」
「わわわ私にももちろん無理です! 却下です! 却下ぁ!」
「はぁ……お前ら普段はこんなにまとまりがねぇのかよ?」
突如として口調が変わった伴場教諭を驚いたように見詰める彼女らであったが、なるほど口調も変わればどうしたものか、伴場教諭を以前から知っているような気がしてくるから不思議であった。
「俺だよ、俺!」
伴場教諭はそう言うとピカッと小さな雷を発生させフラッシュ。
次の瞬間には姿形が変化していた。
「あ、あなたは……伴峰!?」
「おうよ! 茜、全然気付かねーから面白かったぜ!!」
「ってことは海野先生は……」
伴峰の姿を見るやいなや、姫子は己の担任の海野教諭を可愛らしく覗き込むように前のめりになり、まことに次ぐ豊満な胸をテーブルに押し付けていた。
「……そう……海鏡だよ……」
その言葉と共に空気中に水滴を発生させながら海野教諭も姿を変えた。
『海鏡!!!』
「なんでぇー!? なんで八龍神の2人がここにいんのー?!」
これから何かが起こるのだと興奮冷めやらぬ様子の咲良は、テーブルをバンッと叩いて立ち上がると、目を輝かせながら美尻をプルンと振るわせつつも前のめりに2人に質問した。
「ということは……足軽先生ももしかして……」
鍛冶ガールらはこの世界に居るはずのない2人の登場に、当然足軽教諭もその八龍神なのではないかと注目したのだが、それは全くの勘違いであったようだ。
「え? えっ!? 私はただの教師の足軽ですけど……ハハハ……というかなんですか、これは……」
事態の把握も出来ぬままに突然同僚が変身したことにより、気絶した足軽教諭をシカトし、ガッカリした一同は、部の活動方針という最重要案件をそっちのけで何故伴峰と海鏡がこの世界に、しかもそれぞれの担任となっているのかを順番に詰問し始めるのであった。
「わかった、わかった! 順をおって説明すっからまずは落ち着け! おい、海鏡!」
「うん……」
伴峰は一斉に立ち上がった面々をなだめるように座らせると、海鏡と目配せし、海鏡はゆっくりと動きながら人数分のお茶の準備に取り掛かった。
それぞれは海鏡の淹れてくれたお茶を無機質な紙コップで馳走になりながら、伴峰の説明に耳を傾けていくのであった。
つづく
現代に戻ってどのように鍛冶ガールが活躍するのか、どうか応援して下さい!
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