発足編16 出動、鍛冶ガール!
「あ〜もしもし!? 咲良ちゃん、大変だ妖怪が本寺小路に現れた!」
「えぇ〜!? 本当?! 分かった、ちょうどみんな一緒だから急いで向かうよ!」
すーさんと咲良の通話はそれで終わり、咲良は事の次第を今をときめく美少女集団、鍛冶ガールらに伝えた。
「みんな集まっている時に現れるなんて好都合ね!」
「茜の言う通りだわよ! さぁ本寺小路に急行よっ」
茜と栞菜は即座に立ち上がると、何故か支払いそっちのけで店を出ようとしたが、それを引き止めたのは姫子であり、四季彩であったか。
2人は龍神・海鏡こと海野教諭が新たに手を加えた火花のイヤリングを渡されていたからだ。
それぞれのイヤリングをテーブルの上に出すと、2人は交互に、そして手短に話を始めた。
「あのね、海野先生が火花のイヤリングを改良してくれたらしいの!」
「そうなのです! さぁ皆さん、ご自分のイヤリングを手に取って下さいまし!」
天文娘ズに言われるがまま各々は己の属性の色をして輝くイヤリングを取ると、姫子は更に一言付け加えた。
「いいですか? それぞれが持つイヤリングを指で弾いてみて下さい! 私からいきますよぉ」
姫子はそう言うと自身の属性である水色に輝くイヤリングを手に取ると指で弾いた。するとどうだ、姫子は揺蕩う水流に包まれ、次の瞬間には作務衣姿となり、腰には神器・黒鋼を収納する腰袋を装備していた。
つまりは鍛冶ガール達のフル装備姿へと早変わりしていたというわけだ。
「おぉ!! スッゴい! 本当に変身したみたいじゃん!! あたしもやってみよぉ」
「私も!」
咲良はワクワクしながら、姫子と同じように爪弾き、真っ赤な炎に包まれ、まことも微風と共にフル装備へと姿を変えた。
「なるほど、いちいち着替えていたんじゃタイムロスだわね! じゃあ、あったしもっ」
「私もやってみる!」
栞菜は輝く閃光、茜はピカッと落雷を受けたかのようにフル装備へと変身。
5人全てが変身したところで、四季彩もまた指でイヤリングをカランと鳴らす。
四季彩だけは作務衣ではなく、巫女スタイルであり、紅白にくっきり別れた上下に、これまた咲良達とは違う神器である矛を背に備えたスタイルであった。
それぞれはこれまでお揃いの作務衣であったはずが、柄も丈も様々に変貌を遂げていたことに驚いたが、今は妖怪・千秋楽から町を守ることが先決であると判断し、即座に店を出ようとしたところで、旧友のお会計を済ませ、ゲッソリと無気力に戻って来る軍司と鉢合わせとなった。
もはや軍司のハンバーグを喋んだとか、コーラフロートで喉を潤したとかはこの際なかったことにしたいようにしか見えなかったが、咲良と茜は更に過酷な任務を軍司に告げた。
「あっ軍司! 妖怪が現れたんだよね! あたしら先にいくからみんなの荷物よろしくねっ」
「はぁ〜!?」
「頼んだわよ! マネージャーでしょ!? それとお会計もお願いね!!」
「ちょっ……はぁ〜!?」
咲良と茜は言いたいことだけ述べると、そそくさと店を後にし、申し訳無さそうにまことがあとを追いつつ、言葉を付け足した。
「念の為、海野先生と伴場先生、それに足軽先生にも連絡を取ってね! 目的地は本寺小路よ」
「へっ?」
「バッカねぇ! 先生達ならマイカーでぶぃ〜んてもんよ。チャンバラ君もそれに乗せてもらって来なさいよって意味よ」
「くっ……カ、カンナムゥゥ!」
風雲急を告げる事態により、膨大な任務を一気に背負った軍司は立ち尽くして自分をチャンバラとナメてかかる栞菜を悔しそうに呼ぶことしか出来なかったが、後輩筋に当たる天文娘ズのぶりっ子代表の姫子と丁寧な口調の四季彩に頼まれると先輩面しない訳にはいかなかったか。
「軍司さん、お願いします!」
「こんなことを頼めるのは軍司さんしかおりませんわ! そのお会計とやらもお願い申し上げますの!!」
「ぐっ……ま、まかせろ後輩! さぁさっさと現場にいけ! 俺の屍を乗り越えてなぁ!!」
しかし既に鍛冶ガールらは店を出ており、その言葉を聞く者は店員とマスターしか居らず、取りあえずは顧問3人衆を呼び付けてから、自分が注文したハンバーグとコーラフロートを堪能しようとしたが、生憎とそれらは全て鍛冶ガールの腹の中に納まっていた。
「あ、あいつらぁ〜……」
そんな軍司に同情したマスターと店員であったが、商売であるが故に心を鬼にして伝票を軍司に突き付けていくのであった。
「…………はぁ〜!?」
一方、鍛冶ガールらは栞菜の機転により、コーヒー屋のビルの屋上へと駆け上がり、本寺小路の位置を確認していた。
雲一つない澄んだ空には満開の星空が映し出され、夜の繁華街、本寺小路が煌々とネオンを醸し出していた。
「よし! あそこだ。出動! 鍛冶ッガールゥ!!」
『おう!!!!!』
飛空が得意な姫子とまことは、水の絨毯と風を駆使して全員を運ぶようにして現場へと急ぐ。
「きっもちいぃ〜! 待っててよぉ、妖怪・千秋楽!!」
咲良の溌剌とした声は夜の町にこだましていくのであった。
つづく




