発足編14 校外部活動!
それぞれが自分の注文した品を食し終え、ついでに軍司リクエストのハンバーグとコーラフロートさえも仲良くシェアした鍛冶ガールらは、一息つくと急に真面目な生徒会長に戻ったまことに促される形で昨日の放課後の活動報告を行い始めた。
栞菜は権爺と共に歴史研究クラブを訪問し、快く目安箱設置の了承を得た事を報告。
まことと茜はそれぞれ生徒会と部活動に従事していたため、詳しい話を真剣に聞いていたが、咲良と四季彩、並びに姫子は昨夕の大発見を興奮気味に変わる変わる報告し始めた。
「謎のサイトを発見したのですよ! 咲良の華麗なぶらいんどたっちで!」
「そうなんです! えすけい探偵事務所というさいとでしたよね!?」
さっそく部の責任者として重要な手掛かりになり得る情報源を入手したのは私よと言わんばかりに腕組みして満足気に諸部員を見渡した咲良は、ブラインドタッチなどという高等なパソコン技術などないことは棚に上げて息巻いた。
「そう! あたしらがまさに欲しい情報が掲載されている謎のサイト! 今後はこのサイトも活用しながら目安箱と両面からの捜査に当たるから!!」
部活動二日目にして進展をみせた咲良、四季彩、姫子に諸手を挙げて喝采を送ったのは茜であり栞菜であったが、まことは己のスマホで即座に検索したSK探偵事務所のサイトにアクセスすると、唇の辺りを指で押さえて何事か考え込んでいたが、お構いなしにもう一つの大発見の発表に移ったのは他でもない、もはや大部長然とした咲良であったか。
「それにね、なんとあのうだつの上がらない足軽先生は実は妖怪とかそういった類の事にスッゴク詳しいんだよ! なんか足軽先生が顧問になった理由が分かった気がしたよねぇ!!」
咲良の熱弁にもはや大部長を支える2副部長と化した四季彩と姫子は左右から両手を合わせて咲良を見ると何度でも頷いて瞳を輝かせて同調した。
「凄い成果じゃない! これからも基本的には3人が主体となって部をやっていくことになるだろうから心強いよ!」
「そ、そうね。私達は生徒会や部活で解決部に入り浸ることは出来ないから」
茜とまことは苦渋の思いで解決部に毎回参加出来ない事を悔やんだが、栞菜は少し違った見方をしていたか。
「それでこそ解決部の幹部よ! 私は基本参加するつもりだけれど、歴史研究クラブを蔑ろにするつもりも毛頭ないから。クラブに顔を出す時に投函された物があればチェックして重大な情報があったら即座に連絡するわ!」
なるほど目安箱を設置することは考えていたが、いつ誰が中身を回収するかまでは考えていなかった。
ついでにそんな咲良達のポカミスを補うようにまこともカバンからB5用紙数十枚を取り出すと言った。
「そう、それよ。そういえば目安箱設置はいいけど、肝心の用紙がなければ書きたくてもやめちゃう人がいるかもしれないじゃない? それで昨日の夜思い立って自宅でサッと用紙を作ってみたのよ」
出来る女・まことはエクセルで作ったという投函用紙をテーブルに出して見せてそう言った。
内容はこうだ。
三条南高校、超常現象解決部です。
私達は日々生活していく中で起こる様々な超常現象や困り事などを解決するために発足された部です。
皆さんが見たり聞いたりした情報を是非とも私達に教えて下さい!
お願いします。
1、いつ?
2、どこで
3、どんな現象があったのか
4、実被害の内容
御協力感謝致します。
そのパーフェクト用紙を見た一同はキャリアウーマン・まことを尊敬の眼差しで見詰めたが、大部長・咲良は眉をヒクヒクさせながらまことのファインプレーにもんどり打って喜んだ。
「さっすがまこと! んじゃこの点線のところを切ればいいんだね??」
B5用紙一枚を中央の点線に合わせて切れば投函用紙は二枚となることを即座に理解した一同であったが、生憎とそうそう都合よくハサミなど持ち合わせてはいなかったが、またまたまことの段取りの良さに救われた。
まことは人数分のハサミまで用意周到に準備していたのだ。
それぞれはハサミを持つと今度は真剣な眼差しで一枚一枚を丁寧に切っていく。
そんな校外部活動に勤しむ鍛冶ガールらを尻目に、いよいよ軍司のお説教は佳境を迎えていたか。
何か大きな悩みでも抱えている雰囲気を醸し出していた美少女2人は、その瞳に輝きを取り戻したかのように明るくなり、何事か思い出したかのようにそそくさとお店を出て行くのであった。
「まったくあの2人は……そそっかしいんだよな。へへ」
自分のお説教が効いたのだと何やら満足気に指で鼻を擦った軍司であったが、その後地獄を味わうこととなる。
遠慮がちに専門学生風店員は軍司に話し掛け、驚くべき事実を軍司にもたらす。
「あ、あのぉ……」
「へっ? な、なんすか!? まぁあいつらも悩み多き乙女ってやつなんすかね。けど俺の言葉で元気が出たみたいで張り切って出て行ったんすよ。へへ」
得意げに語る軍司であったが、店員はその話には一切触れることなく、要件を述べる。
「あのですね、まだあのお二人さん、お会計がまだなんですよ……」
「へっ?」
「お知り合いなんですよね? お会計お願いします」
開いた口が塞がらないとはまさにこのことか、一瞬硬直した軍司であったが、慌てる素振りを見せては不覚とばかりに尻ポケットから財布を取り出すと、平静を装って金額を訊ねた。
「はい! お2人で2050円になります」
その額に遂に驚き伝票をひったくった軍司は心ツッコミをしたものだ。
(な、なにぃ!? あいつら悩んでたくせにちゃっかりケーキも食ってんじゃねーか!!)
月末に控えた剣道部の遠征費にと母親からもらっていた雉を1枚取り出した軍司は、引きつりながらもこれでお会計をと言うのが精一杯であった。
だがしかし貧乏男子高校生の悲劇はさらに続くこととなるのであるが。
つづく




