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泣き疲れた子供を抱きしめてナナミは髪を撫でる。


「こんなに小さい子を…なんて酷いのかしら…」


愛しそうに優しく抱きしめなおす。


「ねぇカズキやっぱりこの子うちで面倒見てあげない?」


ナナミがカズキを見ると


「出来るなら俺もそうしたい…でも…俺たちは…」


カズキがギュッと手を握りしめた…


「この子にキチンと話して決めてもらおう…まだわからないかも知れないがちゃんと人の話を聞いて考えられる子だ、だからこそ…」


カズキとナナミは見つめ合うと寂しそうに頷きあった。



お昼頃になり子供の泣き声で目を覚ましたことを知るとカズキは急いで部屋へと向かった!


子供は朝と同じように壁とベッドの隙間で体を丸めて泣いていた…


「どうした?」


カズキはそっと声をかけて近づくと…


「カ…ズキ…」


子供は縋るように泣いた顔を向けた。


カズキは子供を抱きあげてベッドに腰掛けるとナナミも遅れて駆けつけてきた!


「どうしたの!?」


慌てて子供の様子を伺う。


「ナッ、ナナミ…」


子供はしゃくりあげながらナナミの方を見る。


「ん?なあに?」


ナナミが目線をあわせて屈むと子供に近づく…


「こわい、みた…」


それだけ言うとカズキの服をギュッと握りしめる。


「怖い夢でも見たのか?大丈夫だじいちゃんが守ってやるぞ!見ろこの筋肉を…」


カズキはそう言うと力こぶを作って子供に見せる。


「そうよ、カズキじいちゃんはすごい強いから安心していいのよ…」


ナナミが頭を撫でるとようやくホッとしたように力が抜けてきた。


「起きた事だし…少しお話してもいいかい?」


カズキが子供の顔を覗き込むと…不安そうに頷く。


カズキは笑うと


「いいか、今から話す事はちょっと難しいかもしれん。わからないことはなんでも聞いていいからな」


「うん…」


「よし、じゃあまずは坊主お前はここに居たいか?それともお母さんって人の元に帰りたいか?」


「……かえれない」


「そうか…うちに来てくれるのは歓迎だ…ただ…」


カズキが顔を曇らせる。


子供はその様子に


「ぼく…かえる」


カズキの服をパッと離した。


「いや!違うお前を拒否しているんじゃない!坊主が俺達を拒否するんじゃないかと思ってな…」


カズキは離れた子供の手を握りしめると


「俺達は今はこんなじいさんとばあさんの格好をしているが…本当は…」


そう言うとカズキは魔法で姿を変えていたのを解いた…。


そこには若々しい20代程の男性と女性が立っていた。


子供は驚いて二人を交互に見ると…


「カズ…キ、ナナ、ミ」


キョロキョロと不安そうに周りを見る。


「俺達がカズキとナナミだ」


若い男性が笑って答えると、綺麗な女性も寂しそうに笑って…


「ごめんね…脅かして」


子供に謝った…


子供はカズキの顔に恐る恐る手を伸ばすがハッとして手を引っ込める…


カズキは笑って子供の手を掴むと自分の顔に近づけて触らせる。


「本物だよ。俺達は今魔法でこの姿に変えたんだ…坊主はこの姿見たことないか?」


悲しそうに聞くが坊主にはピンと来ていないようだった…


「坊主は勇者って知ってるか?」


子供は自信なさげに頷くと


「はんざいした…って…」


「そうだな…悪い事して逃げたって話だ…そしてその勇者ってのが俺だ」


子供は目の前で寂しそうにしている優しい男性を見つめた…。

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