60
ラルクはお腹がなる音で目が覚めた…
なんだかいい匂いがする…
見るとエイトが鼻歌を歌いながら朝食の用意をしていた。
ラルクはそばによって手元を見ながら
「おはよう、早いなエイト…昨日は寝たのも遅かったのに」
「ラルクおじさんおはよう、なんか早く起きちゃって…はい!昨日の残りでサンドイッチだよ」
エイトがスープと照り焼きサンドをラルクに出すと
「もうスープもこれで終わりだからね」
「ふーん…あんなに作ったスープがもうないのか…」
ラルクがエイトをじっと見つめると
「う、うん…だってほら…ジャックもラルクおじさんもたくさん食べたよね…」
エイトがそっと目を逸らした。
なんかソワソワと様子のおかしなエイトを笑って見ながらラルクは照り焼きサンドをガブッとかじるとあまりの美味さにおかわりを要求する。
エイトは嬉しそうにラルクとジャックに照り焼きサンドを作っていた。
朝食も終えて火をおこした所を片付けると出かける準備を整える。
「お、おじさん…昨日の人達はどうするの?」
エイトが気にしていない素振りを見せながらこっそりと聞くと
「ん?あいつらか?そうだなぁ…町に届ければ報奨金が貰えるかもしれないが戻るのは面倒だし、捨てておくか」
「捨てる?」
「そのままにしておくって事だ気がつけば逃げるなり復讐するなりするだろ」
「復讐…」
エイトの顔が曇ると
「その時はまた返り討ちにしてやりゃいいだけだ、そんだけの度胸がありゃいいけどな」
ラルクが笑うとエイトは黙って頷いた。
盗賊を見に行くことなくラルクが先に歩いていると、少ししてエイトが声をあげた。
「あっ!おじさん僕さっきのところに鍋忘れて来ちゃった!取ってくるから先に行ってて!」
エイトが慌てて来た道を戻ろうとすると
「なんだ、なら一緒に戻るか?」
「ううん!すぐだから大丈夫!」
エイトはそう言うと急いで走って行った。
エイトはこっそりと盗賊達の所に行くと、盗賊達は相変わらず体を休めていた。
「みんな…大丈夫?」
エイトがそっと話しかけると…
「あっ!坊主!」
盗賊の一人がエイトに気がついた!
「僕達もう行く事になったから、おじさん達は…どうするの?」
「俺達は…どうするかな…」
これからの事を考えて途方にくれると
「また…悪いことする?」
エイトが心配そうに聞いてくる。
「いや!もうしない!あいつみたいに馬鹿強いやつがいるからな…もうやめておくよ」
盗賊達の言葉にほっとすると
「そっか…よかった!」
エイトがニコッと笑顔を見せた。
「坊主も早く戻れ。あいつらが心配するぞ…それといきなり襲って悪かったな…」
盗賊の#頭__かしら__#がエイトに頭を下げる…
「ううん…僕もやりすぎてごめんね」
痛々しそうに肩に巻いてある布を見つめると
「この程度の怪我はよくある事だ!気にすんな。それに手を出したのは俺が先だからな」
「そうだ、悪いのは完全に俺達だ!」
みんながボロボロになった体を大丈夫だと強がって見せつける。
「また俺達みたいなのがいたら徹底的に懲らしめてやれ!」
「うん!」
エイトが素直に頷くと
「そうだ…今回の礼にお前にこれやるよ」
そう言って#頭__かしら__#が鞘に入ったナイフをエイトにポンと投げる。
エイトはそれを上手にキャッチすると
「ほら、行け!」
盗賊達がじゃあなと手を振る。
「で、でも…」
ナイフをどうしようかと迷っていると
「それは俺には小さいからな、お前ならちょうどいいだろ。切れ味も結構いいから自分の身を守るのにでも使ってくれ」
見ると確か小振りでエイトにちょうどよかった。
「ありがとう!おじさん達も気をつけてね!」
エイトは笑顔で手を振ると盗賊達に渡して置いた鍋を持って急いでラルク達の元へと戻って行った。




