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超人達の警察学校  作者: ことなり
期待の転入生編
8/14

制裁

4月2日 23:15


バンッ!


町外れの工場地帯に銃声が響く。


「ハァ、ハァ・・・クソが!」


何かから追われている1人の青年。

額には赤い鉢巻き、右腕を負傷し出血している。

この青年にとって、この工場地帯は庭のようなもの。

路地裏や工場内部をすり抜け、逃走を図っている。

しかし、その表情には一切の余裕も感じられない。


ズンっと鈍い音が響く。


「がっ・・・」


腹を殴られた。

余りの衝撃に呼吸が止まりうずくまる。


「ゴホッ!かっ!」


男の眼前に迫る人影。

暗闇で顔は見えないが、ポニーテールに結った黒髪、そして輪郭。女性だ。

黒ずくめのスーツの左胸には、金色に輝く十字の紋章が一際目立つ。


「クソッ!死ねぇ!」


怒号と共に男が床を叩く。

その瞬間、ゴゴゴゴゴッと音を立て地震が起こる。

超能力。

この男は狭い範囲ではあるが、大きな地震を起こすことができる。

揺れにより女性の頭上から、鉄筋、ガラス辺、ドラム缶、あらゆる物が落下して遅いかかる。

閑静な工場地帯に轟音が起こる。

あたり一帯には砂埃が立ち込め、視界を遮る。

通常の人間ならば間違いなく即死、まず助からない。

だが


(あの女はこれくらいじゃ死なない!)


男はその隙にさらに逃走する。

選んだルートは工場内部、奥の壁。

見た目ではわからない隠し通路。


(ここならバレない!)


自分だけが知る、最後の逃げ道。

さらに奥に進み、繋がっている入り組んだ工場を抜ければ町はすぐそこ。逃げ切れる。


「へ〜、こんなところに隠し通路があるなんてねぇ、知らなかったよ。」


突如響く女性の声。

男はビクッと身体を震わせる。


(なんで・・・なんでわかるんだ!)


咄嗟に機材の影に隠れる。

声の主は近い。逃げきれない。


「なんでわかるかって?お前が教えてくれたんだよ。」


(訳わかんねぇこと言いやがって!)


「聞こえるか!犯罪人!お前は3人の一般市民を殺した!何が理由だ。」


犯罪人と呼ばれた男は当然返事など返さない。


「ある1人は貧困ながらも幸せな家庭を築いていた。子供は10歳になり、まだまだ人生はこれからだった。」


音のない暗闇の中、女性は一方的に話し出す。


「ある1人は診療所を営んでいた。金には拘らず、無料で診察することもあった。それ故に地元民から愛されていた。」


女性の声量こそ普通ではあるが、その声には怒りを感じさせる。


「ある1人は1人暮らしをしていた。働いた金をたった1人の妹の学業の為に貯め、空いた時間は積極的に地域のボランティアに参加。その健気で一生懸命な人柄から、地域民で彼を知らない者はいなかった。」


男からの返答はない。


「みんな今を必死に生きていたんだよ・・・なぜ殺した!!」


彼女の怒声が虚しく響き渡る。


(へっ!金さえ手に入ればだれでも良かったんだよ!お前も地獄に送ってやる!)


男は彼女を迎え撃つためナイフを取り出す。

しかし


バンッ!!


「!!ぐあああぁぁ!」


彼女の放った銃弾が男の足を貫く。

血が吹き出し、男はうずくまる。


「そうか、金か・・・」


彼女はそう呟き、男に迫る。


「て、てめぇ!殺してやる!」


男は床を叩く。

再度地震が起こり、けたたましい音が鳴り響き、工場内部の機材が彼女を襲う。

しかし彼女はそれを軽々と避ける。

まるで機材の倒れる場所が分かっているかのように、冷静に。


揺れが収まり、男の前に立ちはだかる。

鋭い眼光で男を見下ろし。

そして静かに口を開いた。


「死んであの世で詫びろ。それがお前にできる唯一の償いだ。」


「警備局・・・俺の仲間が黙ってねぇぞ!」


「ここまで追い詰められても反省の色はなしか?もう喋るな。お前の罪、あたしが裁く!」


「クソーーー!!」


バンッ!!


彼女が放った銃弾が、男の額を撃ち抜いた。

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