表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/64

時を越えて。3

宮司さんに案内されて向かった本殿は、更に神秘的な空気に覆われていた。



ここの空気は、息をするのが怖い位に澄んでいる。



ただ、何か知っている様な、懐かしい様な……。




そして、辿り着いた奥の祭壇の中心には、鏡と綺麗な玉が納められていた。




『ここだ……。』



『こ、ここは?』



霊力というのか、神力と言うのか、何かの特別な力を感じる。



『この須賀の社が祀る、神が降り立つ場所だ。』



『え? もしかして……。

か、神様が近くにいる……。』


私は何となく、人では無い神秘的な気配を感じていた。



『な、何とっ! 其方分かるのか?』



『分かるって言うか、何かそんな気がします。』



『そうか。やはり其方で間違い無いのかもしれんな。』



『間違い無い?』



『其方の汚れ無き真っ直ぐな瞳、そしてその衣でもしやと思ったのだよ。』



『この制服で?』



『先程も申した様に、その衣はこの世の物では無い。

そして異界より現れる神の巫女……。』



『神の巫女?? 私が??』



『そうじゃ。さあ、あの鏡に向かって祈りを捧げるのだ。』




んーー、祈りって言われてもなぁ。



何て祈れば良いのかな?



私は取りあえず、目を瞑って手を合わせた。




『……。』



あの、何も聞こえないんですけど……。





『……巫女よ。』


 



えっ!?


その時、頭の中に誰かの声が聞こえた。



『巫女よ……。』



は、はい。


って、私の事なの?




『そうだ。

我はこの社の主、天照大神(あまてらすおおみかみ)が弟、須佐之男命(すさのおのみこと)なり。

また逢えたな、巫女よ……。』

※天照大神、日本の総氏神。太陽。

※須佐之男命、ヤマタノオロチ退治の神話などが有名。



えっ!? あの須佐之男命っ!?



でもまた逢えたなって一体……。



その時、私の頭の中には須佐之男命の姿がはっきりと見えた。



でも須佐之男命は何故か悲しそうな声をしている。



『どうしてそんな顔をしてるの??』



『さあ、巫女よ。その目の前の(ぎょく)に手を翳すのだ……。』



須佐之男命は、私の質問を無視する様に語り掛けた。




『玉に??』



触ると何か起こるの?



だが、既に須佐之男命の姿も消え、もはや声も聞こえなかった。




『……。』



『どうであった?』



『……。』




私は無言のまま、玉の側へと歩いて行く。



『それは須佐之男命のその力を宿した大切な玉だぞ!! 触るでない!!』



私は、宮司さんの言葉など耳に入らずに玉を手の平を当てるた。



『だから、触るなと言うて……!!』




その時だった。



私が玉に触れた途端にが激しく玉が光出す!




『こ、これはっ!!』



『えっ?何なの!?』




この感じ……。



さっき、ここへ来た時に懐かしいと感じたのはこれだ。



でも何で?




『な、何なのだっ!? この光は!!』



そして光がどんどん強くなって行く!



玉が一つの光となって、私の左の手の平に集まる!




『これは……。』



私は光を握った。



すると光は一本の長い光になり、気が付くと、私の左腕には一振りの剣が握られていた。




  挿絵(By みてみん)




……とても美しい剣。



他の剣や刀とはまるで違う。




左右非対称の柄、そして光輝く程に美しく、縁が金で内側は綺麗な翡翠色。


内側の緑色を縫う様に血管の様な金細工が施されている。


片側が柄の方まで長く、大きな宝玉が埋まっている。





そして、握った手から溢れ出た光が、制服と一つなって光の衣になった!



制服も光と共に姿をを変えた。



着物の様な感じだけど、ちょっと違う。



着物と言えば着物だが、制服のスカートの様に裾が短く、靴下は現代で言うスパッツの様な物に変わっていた。




『こ、この剣は? それに制服が……。』




『や、やはり間違いなかった!!

其方こそが、あの伝説の……!』




『伝説の??』




しかし、その玉の光は須賀神社の本殿全てから、外へ溢れ出てしまっていた。




『何だ!? あの光は!!』



『あの娘が現れた時の様な光だぞ!』



『中を調べらろ!』




外から私を探す人達の大声が聞こえた。



し、しまった! 見つかった!



『巫女よ。

流石に神域と言えど、このままでは頭に血の登った連中は恐れ多くも此方までやって来ますでしょう。

ですが、私が何としてでも巫女とこの神域は守ります。

この先の裏手に秘密の出口が御座います。

巫女はどうぞ、そこからお逃げ下さい。』




あ、あれ?? 宮司さん、急にかしこまってどうしたの?




『私が多少なりとも時間を稼ぎます故、どうか早くお逃げ下さい。』



『でも、宮司さんは大丈夫なのですか?』



『巫女よ、お気遣い痛み入ります。

まさか奴等でも私に危害を加えると、どうなるか位は分かっておりまするので、どうか御安心下さいませ。さっ! 早く!!』



『有難う、宮司さん。

でも最後に一つだけ教えて。私はこれから何処に行けば良いの?』



『全てはその剣と巫女の思いが導いてくれましょう。』




剣と、私の思い??


まあ、取り敢えず今は逃げないと!




『分かったわ。有難う、宮司さん。』




そして私は光から現れた剣を背中に背負い、裏手から須賀神社を走って脱出した。




私が無事に脱出した後、須賀神社は直ぐに大勢の人に囲まれた。




『さあ、宮司殿!

その奥に匿っておる娘を差し出すのだ!』



『だから何度も申している様に、その様な娘などおりませぬ。』



『しらを通すつもりか!

ならば、この本殿をしらみつぶしに探すまでだ!

良し! お前達!』



『はっ!』



『各々方っ!! 神を冒涜なさるおつもりか!

必ずや天罰が起きようぞ!!

それにこの儂がこれより先の神域に立ち入る事は一切許しませぬぞ!』



『構うなっ! 皆の者、行くぞ!!』




その時、誰かが騒ぎを聞きつけてやって来た。



『お前達! 何をしておる!!

ここは須賀の社だぞ!

神を冒涜するつもりかっ!

太刀を収めるのだっ!!』


『は、はっ……。』



そして皆んな一斉に刀を収める。


きっとこの人達よりも偉い人なんだろう。



『しかし、先程のあの光はもしや……。

ところでお前達、あの娘は一体何処で見つけたのだ!?』



『はっ! 城内に光と共に急に現れた怪き者です。

刀を奪い暴れておりましたが、この須賀の社まで逃げられてしまいまして……。』



『なっ! 光と共にだと!? 本当か?』



『え? あ、はい。』



『あの娘が、先程も何やら怪しげな光を放っておりました。

きっと物の怪の類でしょう!!

必ずや探し出して斬り捨てます!』



『駄目だ! 決して危害は加えるな! 良いかっ!』



『は、は? 何故危害を加えてはならぬのですか?

あの様な事は、とても人には出来ませぬぞ!?』


 


そんな中、宮司さんはその人の方にやって来た。



『おお、これはこれは。

ご家中の方々に鬼の形相で取り囲まれてしまいまして、困り果てていた所です。』



『これは宮司殿。

我が家中の者達が大変なご無礼を致しました……。

して、宮司殿! 先程の光は??』



『はい……。

遂にご降臨なされましたぞ。』



『や、やはりかっ!!』



『間違い無く、あの娘は須佐之男命の巫女、破邪の剣の舞姫様で御座います。』



『やはりか……。

聞いたかっ!! 必ず傷一つつけずにお連れするのだ。』



『まっ、まさか……。』



『あの娘が、あの伝説の破邪の剣の舞姫だなんて事は……。』



『宮司殿を信じられないとでも申すのか?!

最早お前達には任せておけぬ! 私一人で必ず探す!』



『いっ! いえ!! 決してその様な事は……。

それにお一人でその様な事はさせられませぬ。

分かりました。我等が必ず見つけ出してご覧に入れます!』


『良し、では行け! 必ずやお連れ致せ!!

そして、くれぐれも危害は加えるなよ!!

私は今から父上の所へ赴き、事の次第を報告する!』


©︎2020 山咲 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かったです。ぜひ続けてください! [気になる点] 心理描写が少なかったと思いました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ