時を越えて。1
ここからは私、如月サクラがご案内します。
桜花爛漫!
咲き誇り、花の様に舞う私達の旅路をご覧下さい!
『い、いたた……。』
一体何が起こったのだろうか。
確か私、何かに導かれる様に無意識に紅い橋を渡って。
それから……。
起き上がって後ろを振り向いたが、隆くんと華子の姿は見当たらなかった。
それにそれからの記憶が無い。
『私、一体どうしたんだろ……。』
そう言えば、二人が私を止める声と、お姉ちゃんの子供達が、後ろの正面って歌ってた様な……。
それにここは確かに城山公園なんだけど。
そう思って振り返ってたその先に見えたその風景は、明らか漂う空気そのものから全てが違っていた。
吸った事の無い透き通る様な綺麗な空気。
車の排気ガスの匂いとか、工場の煙突から出る煙、工事の匂い。
そういった物が全く混ざって無い。
ただ、思川桜の花だけは美しく、何処か儚さを漂わせながら花弁を雪の様に舞い散らせていた。
『二人は何処に行ったんだろ……。
それに、この建物は?』
振り返った奥には、何だか時代劇に出てきそうな建物が有る。
コンクリートや鉄骨、そう言った物を一切使って無い。
それにさっきまで、こんな建物なんて無かった。
あの赤い橋も、しっかりと舗装されいた筈なのに、ただの木の橋になっている。
『それに確か、夕方だった筈なのに、いつの間にか昼間になっている……。』
私は、眼で見ている光景に頭が追いつかなかった。
『こ、これは一体どういう事……?』
『何者だっ!!』
さっき渡った橋の向こうから、時代劇の様な格好した人達が来た。
えっ? 何なのこの人達。
ドラマの撮影でもしてたのかな?
もしかして立入禁止の所にでも来ちゃった?
『何者って……。
すみません、撮影か何かなんですか? 勝手に入ってしまって。
でもこんな撮影なんてしてましたっけ?
さっきまでこんな大掛かりなセットなんて何処にも……。』
『小娘! 何を言っておる!
ここまでどうやって入ってきおった!!
それにその怪しげな格好……!』
『怪しげな?? これは普通の高校生の制服……。』
『さては間者の類じゃな!! ひっ捕らえよ!!!』
※間者、今で言うスパイ。
えっ?? 私、エキストラか何かに急に抜擢されたの?
途端にその人達が私に掴みかかって来るが、私は軽くかわした。
はっきり言って相手にならない。
しかし、演技とは思えないなぁ。
『おっ! おのれぇ~~!』
皆んなが一斉に太刀を抜いた!!
異様なまでに怪しく光り輝く刀身。
『えっ??』
ま、まさか真剣!?
嘘でしょ???
なんでそんな物持ってるの!!??
ってか本気なの!?
私の背筋に体験した事の無い様な嫌な感覚が走った。
この人達の眼付き……。
この人達は本気で私を斬り殺す気だ。
一斉に私目掛けて斬りかかって来る!!
『ちょっ! 危なっ……!』
私は一人、また一人と交わすし、隙を見て上段から切り掛かって来た男の腕を受け流し、みぞおちに打撃を加える。
『ぐっ……!』
その隙に太刀を奪う。
……お、重い。
真剣ってこんなに重いんだ。
抜身の怪しく輝く刀身をまじまじと見つめると恐ろしさを感じた。
『小娘があ~~!!』
また一人切り掛かって来る!
私は咄嗟に峰に返して応戦した!
はっきり言って、にわか仕込みの剣なんて私の敵じゃない。
私の家は古流剣術と体術を合わせた流派だ。
私は刀で敵の斬撃を捌き、体術や峰打ちで倒して行った。
すぐさま全員組み伏せた。
『はあ、はあ……。』
流石にこの人数相手では、息が上がる。
それに、この人達は本気で私を殺そうとしていた……。
嫌な感覚の汗が、私の身体中を蝕んで行く。
呼吸を整える為に、喉を鳴らした。
すると落ち着く間もなく、建物の方から更に男達が出て来た!!
『何者だ!! 早く斬れ! 斬れぇっ!』
これ以上の人数を相手では流石に部が悪い。
後退しようと間合いを開くも、余りの人数にいつの間にか囲まれてしまった!
そして皆んな太刀や槍を携えていた。
私を殺そうと言う眼をしている……。
ってか何なの!?
私が何したの?
何で見ず知らずの私を殺そうとするの!?
『こ、これ以上近づかないで……!』
じわじわと囲みが狭くなって行く。
『何をしておるっ! 早く斬らぬかっ!!』
ともかく、何とかしてこの場から逃げないとっ!
このままだと、間違い無く殺される!
そして、皆が私に斬りかかろうとしようとした瞬間、私は咄嗟に太刀を投げ付けた!!
『『『な、なあっ!?』』』
不意を突かれたらしく隙が生まれる!
囲みが崩れた!
今だ!!
私はその隙を逃さず、一気に囲みが崩れた所を駆け抜ける!
『逃すなぁ~~! 追えぇ~~!!』
公園中から私を斬ろうと大勢の人が出て来る!
私はその人達を必死にかわしながら外へと逃げ出した。
公園を出てからも必死で走った。
それにしても、確かにここは城山公園だった筈なのに。
至る所に、木で出来た柵や櫓が所狭しと至る所に在った。
頭の中が混乱して冷静に考えられない。
ともかく一刻も早く逃げないと!