ヒヨコ六匹目
俺は今、リテアの町の大図書館で魔物図鑑を開き、オスメスで価値の異なる魔物を探している。
魔物達は様々な生態を持っており、たまにそれは人間の想像など及びもつかないものだったりする。
中にはオスだけが体内に宝石を生成するなんて魔物がいるかもしれない。
ペラペラと図鑑をめくる。
これも違うそれも違う。
半日ほど探し続け、ついに俺は見つけた。オスメスで価値の大きく異なる魔物をだ。
それはアレクサンドクロ大亀という魔物だった。
アレクサンドクロ大亀はとても凶暴な魔物である。そしてメスはその体に希少魔石を生成する。
冒険者達はそれを狙ってこいつらを狩るのだが、性差が少なくてどれが見てもどれがメスなのかわからない。
だから手当たり次第に殺し、死体を割って希少魔石を手に入れようとする。
しかし、アレクサンドクロ大亀の体はとても硬く、死後に硬化して固まった体はレステン鋼製のピッケルで一日中叩いてやっと割れるとかなんとか。
おまけに極端にメスの少ない魔物なので、頑張って数をこなしたところでその中にメスが居るとは限らない。
いくら希少魔石が高値で売れたとしても労力に見合わずやる者が居ないのだ。
目当ての魔物は見つかった。早速大亀狩りに出発である。
冒険の準備を整え、俺はリテアの町を後にした。
***
「フハハハハー!」
冒険者カードを見た俺は高笑いした。
冒険者カードは冒険者ギルドから発行されるものである。そして、このカードには持ち主のギルドランクや所属等が勝手に記載される。特に所持金が管理できるのが重要で、これを持っていればわざわざ重い硬貨を何百枚と持ち歩かなくても、カードを見せるだけで買い物ができるという優れモノなのである。
もう一度冒険者カードに記された俺の所持金の値を見る。
そこには9桁の数字が並んでいた。
これはそこそこ栄えている町に大きめの家を買っても余るくらいの大金である。
アレクサンドクロ大亀狩りは大成功であった。
アレクサンドクロ大亀が生息するのはガタン川という大きな川のほとりなのだが、そこへ向かう途中俺は村がアレクサンドクロ大亀の大群に襲われている場面に遭遇した。
俺はその大群の全てを残らず退治した。
だが死後硬化によって村の中で固まってしまった大量のアレクサンドクロ大亀の死体に村人達は困った様子だった。
そこで俺は死体を遠くに捨ててきてやると村長に伝え、一体一体アレクサンドクロ大亀の死体を村から運び出した。
その運び出し中にオスメスを確認し、メスが居たら割って中の魔石を回収。それを続け、村の中の全ての死体が片付くころには十個もの希少魔石が手に入ったのである。
そしてこの希少魔石がとんでもない値段で売れて、想像した以上の大金が手に入った。
だがアレクサンドクロ大亀の大群に襲われていた村の家とかの復興が大変そうだったので少し寄付した。
やや減ってしまったが、残った俺の所持金は先ほど見た通りである。
くっくっく、クルールのやつらを見返す時がついに、ついに来たのだ。
その夜、俺はクルールの連中を高級な店のディナーに招待した。
高い店なのでドレスコードとかうるさかったが、貸し切りにして無視できるようにした。
あいつらこんな高い店に来れるような服など持っていないだろうからな。
「フハハハハー!」
かくいう俺も持っていなかった。