ヒヨコ四匹目
クルールのメンバーを見回す俺。
「ん?」
メンバーの中に俺の知らない奴がいる。重装備だ。前衛だろう。
「ああ、こいつはブライン。前衛を担当してもらうことになった」
「どうも」
ブラインは俺に頭を下げた。
なんだそれは。
「俺の戻る場所は無いって言いてーのか?」
「いいや、前から前衛は増やそうと思っていた」
「何が言いてーんだ?」
「そのままだが。ところで、お前あのスキルは使ってるのか? 何か良い活かし方が見つかったか?」
「うっ」
「その様子だと見つかっていないみたいだな」
「ぬぐぐっ」
「まあそうだよな、あんなスキル役に立つはずがない」
「うるせーうるせー」
俺は椅子から立ち上がり、その場で地団太を踏んだ。
「わかったわかった暴れるな。じゃあな」
ロードゥ達はカウンターテーブルから離れ、別のテーブルに座って酒などを注文しだした。
「くそがー、ばかにしやがってー!」
俺は勘定をカウンターテーブルに置いて店を出た。
かなり飲んだので酔っている。
千鳥足で歩く俺。
途中で絡んできたゴロツキどもを半殺しにしつつ、俺が向かったのは冒険者ギルドである。
掲示板に貼られている依頼書全てに目を通していく。
ヒヨコスキルが生かせる依頼が無いか探すのだ。
大至急ヒヨコのオスメス判別を求む、とかないだろうか?
「ん?」
目にとまったのはサラマンダーの幼体のメス求むという依頼である。
サラマンダーとは、魔物の種族名である。
そして魔物とは、町や村を出るとその辺をうろついてて、たまに襲いかかってくる奴らである。
かなりの高額報酬だというのに、その依頼書は最初に貼られた日からかなり月日が経っていた。
理由はわかっている。
サラマンダーのオスメスの判別はパっと見の外見からでは不可能である。判別するには性器の形状を見る必要があるのだが、幼体の場合性器が体内に収納されており、腹を切ったりして確認するしかない。そんなことをしたら幼体が可愛そうである。
このような依頼を受ける者は鬼畜の称号を得てしまうであろう。だからこの依頼書は誰にも受けられずに残ってしまっているのだ。
だが俺には進化したヒヨコスキルがある。今やヒヨコスキルはヒヨコ以外のオスメスの判別が可能なのだ。
俺はその依頼書に手を伸ばす。すると周りが騒ぎ出した。
「お、おい、あいつあの依頼受ける気だぞ!」
「本気かよ!?」
「鬼畜だ! あいつは鬼畜野郎だ!」
早速称号が得られたようである。
依頼書を手に取り、受付に持っていく。
「ケッ!この鬼畜野郎が!」
いつも優しいはずの受付のお姉さんの対応が凄い。
俺はゴミでも見るかのようなその視線にゾクゾクした。