175 【開拓VRβ版実況40】 ラストバトル・膠着
※お使いのパソコン・情報端末は正常です。
セリフに数字が入力されていますが、本作品の仕様です。
※洪水、浸水などの表現に敏感になっている方はご注意ください
開拓VRゲーム。Walkers on the Frontier。略称WotF。
舞台は十九世紀前後の科学技術を持ち、魔法が発達している世界の新大陸。
開拓者、狩猟者、学者、貴族、四つの開拓民が協力して未開の地を開拓し、拠点となる街を開き、魔物を退ける。
現在βテスト中。実況を通じて視聴者にも不具合や説明不足をチェックしてもらう方針のために、運営会社がベータテスターには実況を推奨している。
第一定都の港湾に再び巨大な魔物が現れ、通りかかる船を襲いはじめたため、現在討伐作戦の真っ最中だ。
作戦の都合で発生した鉄砲水により、エンジは濁流の真ん中のがれきの上に取り残されていた。
一緒に居る魔王様とキューイはダメージを受けてほぼ無力化されている中、水位はまだ上昇している。このまま濁流に巻き込まれたら帰還魔法のあるエンジはともかく二人が危ない。
― 魔王様/3 急速充電とかできないの?/2
視聴者の問いを魔王様に伝えてみたが。
「エンジの魔力を/3 もらっているけど……/2 そう簡単にコントロールできる能力なら/5 苦労しないよ……。/2 /7 ここには/5 キューイも/3 街の人も/3 居る。/2 申し訳ないけど……/6 」
心なしか、顔色が悪い。
― エンジが居るから/5 大丈夫だって!/3
― 魔王様/1 エナジードレインで/4 人死なせちゃった/2 トラウマ/01 あるんだから/2 無理でしょ/6
― そこは都合よく/6 トラウマ/3 克服して/2
― このままほっといたら/5 キューイとか/1 死んじゃうから!/2
冗談で紛らわせようとしているのか、気軽に非情な選択肢を迫る視聴者達だ。
― おめーら/1 鬼か!/3 /7 ぶっ飛ばされたダメージで/4 箱庭ゲーム並の無差別攻撃発生してても/5 おかしくなかったと/6 思うぞ/2
― エプヴィルさんのアレは/1 要は/6 魔力の飢餓状態のせいで/4 発動したんでしょ/2 多分/6
― 魔王様が/1 エナジードレイン能力/3 抑えてくれてるから/2 /04 この程度なんだと思うよ/6
脱出に協力してくれた開拓者のバサップも手を出しあぐねている。
ふと、人の声が聞こえた気がしてエンジがそちらを見ると、少し離れた屋根の上に見知った人たちがいた。
― セージドと/1 マルシールア!?/1
― 避難してるのか?/2
― 屋根の上に/5 迫撃砲が/1 設置されてるから/2 /04 攻撃に/3 参加してたのでは/2 ?/6
― 無茶するなぁ/2
視聴者の見つけた通り、屋根の上に居たのはセージドとマルシールアの二人、普段はイオナの農園の先の森で木工品を作っているが、どうやら戦闘に参加していたようだ。
二人して迫撃砲と屋根の煙突の周りで慌ただしく何かやっている。
濁流の轟音にかき消されて何も聞きとれないが、こっちに向かってたまに何か叫んでいる。エンジに気付いているようだ。
二人はエンジの居る場所の上空に向かって迫撃砲から何かを打ち出した。
― 石かなんかに/5 ロープを/3 くくりつけて/2 発射したのか/2
― なるほど/6 このロープを/3 手繰り寄せ……/2 って/7 外しとるやないかーい/2
― どこいくのーん/6
ロープはエンジ達から大きく逸れた背後に伸びていった。反対側の屋根に引っかかったのか、エンジから見てやや右上のかなり上空。どうがんばっても届かない。
せっかく飛ばしてくれたんだから危険を冒してロープを捕まえる方法を考えるところだ。
― 命中精度/1 低そうな/3 武器だなぁ……/01
― リトライ?/2
「坊ちゃん!/1 そのまま/5 動くなよ!/2 」
バサップの声が聞こえるとほぼ同時に、エンジの右上の空中に引っかかっていたはずのロープが動いてエンジの真上に垂れてきた。バサップはロープの飛んでいった先を見ている。
セージド達の方のロープの端は煙突に結びついていて、ロープはエンジからそれて背後の方向に飛んで行ったのだから、背後の方の端が移動している。エンジは思わず振り向いた。
「旦那ぁ!/1 そいつに/3 掴まれ!/2 」
反対側の、かなり背の高い建物に居たのはいつもの狩猟者NPC三人組。
カーマンがベルトにロープを通して滑空してくるところだった。アードットとベクローがロープを支えている。
― オオコウモリ?/1
― ジップラインと/3 言っていいのかどうか……/2
― 消防署の訓練で/5 似た奴/3 見た/2
― これ/1 ぶつからない?/2
― 魔王様と/1 キューイは/1 いいとして/3 /7 エンジ/1 置いてきぼりになるんじゃない?/2 NPCは/1 プレイヤーに/3 触れないでしょ/2
― PC→NPCの接触は/1 意外と/6 大丈夫だから/3 /04 エンジが/1 カーマンを/3 掴む分には/2 /05 問題ないはず/3
視聴者の懸念とは裏腹に、滑空の勢いそのまま、カーマンがエンジごと三人を抱え上げると、アードット達がロープの張力を調整して一気にマルシールア達の居る方まで滑空していく。
バサップが口笛を吹いて何か言っているのが聞こえた。
NPCは原則プレイヤーに触ることができない。ただしPC間では例外的に数秒以内にダメージを受ける事がほぼ確定している場合は緊急避難として抱き上げたり突き飛ばしたりできる。
NPCはプレイヤーに接触してくることはめったにないためほぼ未検証だったが、今回はその例が適用されたようだ。
サリーリルカが水に落ちたイグドナとエフジドルダを救助した時と同じだろう。
滑空している一瞬の間に、エンジは今しがた自分たちの居た足場が流木に押しつぶされて濁流に呑まれるのを見た。しがみついたエンジの手が震え、冷や汗で滑る。
「おおお!/6 楽しかったよ/3 今の/5 」
「きゅーい!」
無事に屋根に着いてはしゃぐ魔王様とキューイだが、見てる方もやってる方も生きた心地がしなかったというのが正直なところだ。
ようやく屋根の上によじ登ったエンジはほとんど力が入らなかったが、セージドとマルシールアにようやく一言お礼が言えた。
「もー!/6 びっくりしましたよ!/2 」
「は~、/6 ロープが遠くに外れた時は/5 どうなるかと思った/2 」
― 意図して投げてくれたんと違うんかい/2
― 正直でよろしい/6
「カーマンさんも……/1 ありがとうございます……/6 」
息も絶え絶えに、エンジはようやくそれだけ言えた。
「礼なら/1 頑丈なベルトと/3 ズボン/3 作った/2 フロード第十一に/03 言ってほしいっす。/2
今までの/5 なよっちい/9 木綿じゃ/05 この人数/3 支えられなかったっすよ/2 」
向こうの屋根から様子を見ていたアードットとベクローは軽口を叩いていた。
「あいつ/1 結構/6 ええかっこしいだよな。/3 真っ先に/5 すっ飛んでくしよ/2 」
「わしらの中で/5 一番/6 身軽で/3 素早いから/3 /04 仕方ないわな/2 /7 この見せ場は/3 譲るわな/2 」
不意に身も凍るような咆哮が聞こえ、エンジ達は一瞬身をすくめた。
巨大な魔物は土石流に巻き込まれ、破城槌のようなボートにどつかれて爆破され、逃走防止に設置された結界にぶつかって止まったようだ。
― バリヤー?/1
そう、散々な目に遭った魔物の周りには上流からの鉄砲水によって大量の水があった。
水深はそれほどでもないが、今、魔物はそれを魔法を使って竜巻のようにまとい、砲弾と狩猟者達を寄せ付けないようにしている。
ただでさえ鉄砲水によって足場はめちゃくちゃだ。そしてこの水の壁により狩猟者が近づくのが難しくなっている。
竜巻状に荒れ狂う水に当てられて瓦礫が舞う。
「あと/6 一発でも砲弾を/3 当てられれば/2 多分/6 倒せます!/2 」
「上は/5 空いてる!/2 撃て!/2 」
楽団の指揮に合わせて艦砲射撃が始まるが、曲射のため速度が落ちた砲弾は魔物が立ち上げた水柱に弾き飛ばされる。
不意に狩猟者が気付く。
「砲撃を/3 止めろ!/2 砲弾が届かない上に/5 砲弾の火焔魔法の魔素を/3 吸収されてる!/2 回復するぞ!/2 」
あと一撃が入れられないまま、時間だけが過ぎ始めた。