160 【開拓VRβ版実況37】 人の力
※お使いのパソコン・情報端末は正常です。
セリフに数字が入力されていますが、本作品の仕様です。
船内の狭い廊下は魔法の乱れ飛ぶ嵐のような戦闘によって徐々に形を失っている。
あさっての方向に逸らされた魔法によって壁や天井、床の一部がはじけ飛び、船内からでも少しだけ夜明け前の青みを帯びてきた夜空が見える。
「おい/6 ここらで/5 休戦せんか/2 ?/6
お前は/1 貴族に/5 命令されていただけだろう。/2
エンジ殿を/3 戻してくれたら/2 /05 不問にする/2 」
防壁と魔法の弾幕と煙で視界の悪い嵐の向こうにエプヴィルが叫んだ。
開拓VRゲーム。Walkers on the Frontier。略称WotF。
舞台は十九世紀前後の科学技術を持ち、魔法が発達している世界の新大陸。
開拓者、狩猟者、学者、貴族、四つの開拓民が協力して未開の地を開拓し、拠点となる街を開き、魔物を退ける。
現在βテスト中。実況を通じて視聴者にも不具合や説明不足をチェックしてもらう方針のために、運営会社がベータテスターには実況を推奨している。
お祭りの最中にネクロマンサーに誘拐されたエンジは救助されたが、相手の能力により幽体離脱のような状態異常は継続中だ。
敵対していたプレイヤーも倒れたのだが、この通り戦闘が続いている。
「お断りします。/2
人の群れ相手なら/5 力で/4 押し切れるのが/2 /01 魔物ですよ。/3
なぜ/6 ここで/5 私が/1 休戦してあげなければならないのです/2 ?/6 」
一人でこの攻勢の相手をしているはずなのに、息も切らさず慌てるそぶりも見せずに返事が返ってくる。
「何より/6 人の提案に/3 乗るのは/2 ごめんです/6 」
交渉についてはなしのつぶてだ。
「お前の目的は/1 何だ?/6 」
「目的は/1 ありません。/3 強いて言うなら/6 とられた獲物を/3 取り返すことでしょうか?/2
もう/6 街ごと食い荒らすのを/3 我慢する必要もありませんから/2 /7 存分に暴れさせていただきます/2 」
「……あの不死者の群れを/3 作ったのは/2 /01 お前か/3 ?/6 」
「すでに/6 死んでいた/2 人間も/01 いましたが/2 /7 あれの/5 ほとんどは/6 私の餌ですね/3 」
エプヴィルがため息をついてパークサズラムに連絡する。
「パークサズラム殿/1 説得は/1 無理だ/3 /7 準備を頼む。/2
ドーエクも/1 先に/5 離脱してくれ/2 」
「……了解しました/2 」
エプヴィル達が弾幕で牽制している中、隣の船の甲板ではパークサズラムが周囲に現状を説明をしていた。
「相手は/1 魔物……/3 というより/7 凶悪犯だな。/3
エンジを/3 元に戻す/2 協力も/03 期待できない。/2
街に/3 行かれたら/2 /05 被害が/1 出る。/2 ここで/5 止めるぞ/2 」
パークサズラムの号令に反応する甲板の面々。
「倒さざるを得ないか……!/2 」
「エンジさん……/1 大丈夫でしょうか……/3 ?/6 」
ウォンバーネフがこぶしを握り、ジェンシールが心配そうに問いかける。
「僕/1 戻れないんですか?/2 」
「もうすぐ/6 日が/1 昇るから/2 /7 まぁ/6 大丈夫だろう/3 」
パークサズラムの返事はエンジでなくジェンシールの「大丈夫でしょうか?」に向けてのものだ。
エンジは現在状態異常にかかっている。ゲーム中でみると、体の方は意識不明状態。プレイヤー本人は幽体離脱のような状態。
エンジ自身は自由に歩き回れるが、ゲームの中に居る周囲の人たちには姿も見えないし声も聞こえないという状態だ。
― 無理して/6 会話に/3 加わろうとしなくてもいいんやで/2
― エンジが/1 ボッチみたいな/3 言い方/01 /7 かわいそうだから/4 やめろ/2
そんな状態で絶妙に会話が成立した感じになるのが何ともいたたまれなかった視聴者だった。
戦場になっている船内で状況が動く。
「総員!/1 脱出せよ!/2 」
エプヴィルの号令とともに廊下の弾幕が薄くなる。
ゼファージースはコンマ数秒遅れずに号令の聞こえた場所に突っ込んだ。が、複数の大剣の刃が鱗を噛んで腕を止める。
爪が阻まれると同時に煙る埃の向こうに見えたのは、廊下の左右に待ち構え、大剣を振るってゼファージースの突進を止めたエフジドルダとイドレード、そして真正面の至近距離で銃を構えていたエプヴィル。
ほぼゼロ距離にあるエプヴィルの銃がゼファージースに向かって火を噴く。抑えているとはいえ、巨大なクマの魔物の体力をほぼ奪い去った砲撃だ。
正確に胸を狙ってきた銃撃をとっさに両腕で防いだゼファージースだが、腕を貫通し、胸にやや深めのダメージを受け、数メートル後ろに吹き飛ばされる。
しかし、吹き飛ばされたものの、ひるんでいるわけではない。
「所詮は/6 人の力/3 ……こんなもので……/3 」
薄笑いを浮かべつつ睨む先、エプヴィル達はゼファージースに背を向けて走っていた。しかし人間の走る距離、ましてや一人は魔力を消耗した貴族。一瞬で追いつける。
その瞬間、ゼファージースの視界が白く染まった。
強烈な轟音、劫火に包まれる。
「っ……なっ/6 ……これは……/1 」
しかも劫火は絶え間なく降り注ぐ。
「少し下へ!/5 下の階に/5 落ちましたわ!/2
エプヴィル様達は/1 離れています!/2 遠慮は/1 いりませんわ!/2 」
目標地点に向けて大砲を撃ちこみつつニスミハが叫ぶ。
「ケビン、/1 肋材を/3 折っておいてくれて/2 /04 助かったわ/2 」
「助かった?/2 嬉しい/6 」
イオナの呼びかけに回復薬を飲みながらケビンが答える。
「あの船/1 もうすぐ/5 分解しそうだが/2 /7 大丈夫か?/3 」
「海に落ちたら落ちたで/5 水中爆発の方が/1 効くかもしれませんよ/2 」
「悪いけど/6 街の人達を/3 襲われるわけにはいかないからね!/2 」
「まだまだ/6 撃てます!/2 」
「魔力/1 減ってきました!/2 」
「マルシールアさん!/1 交代します!/2 」
周囲の船の砲台から、魔力の高いメンバー、主に貴族と学者による集中砲火だった。
― 魔導榴弾砲か/1
― 連射が/2 えぐい/6
― ミルフマさんの/9 威力強くない/3 ?/6
― そういえば/6 ロケランとか/3 言われてたな/2
― 以下/5 やったか!?/3 禁止/2
その時、フッとエンジの目の前が暗くなる。
― え?/6
― え?/6
― ん?/6
― なんだ?/6
「ぼっちゃま!/1 」
「エンジ様!/1 」
次に見えたのはマリノキアさんとジェクルさんの心配顔。
砲撃の音は近くから間断なく聞こえてくる。
― 船の中か/5
― エンジ/1 戻れたんだ!/2
― いつものー!/6
― やったか!?/6
― やったな/2
エンジは思わず起き上がる。
「マリノキアさん……/1 ジェクルさん……/1
危ないところに/5 来させちゃって/2 すいません……/6
僕が/1 しっかりしてないから……/2 」
― ああそうか……/6 二人は/1 非戦闘員NPCだもんな……/3
「そんなことはありませんよ!/3 ほんとうに/6 よくぞ/6 ご無事で……/3 」
マリノキアさんが目頭を押さえた。
ふと、最初は錯覚かと思ったが、エンジは大きな魔力が上空に移動したのを感じた。思わずベッドサイドに置いてあったステッキを掴む。
そうしている間に、急に砲撃の音が止んだ。
エンジは上空の気配が攻撃してくるそぶりを見せないかを慎重に探った。
少し時間は戻って船の甲板。
「首尾は!?/6 」
味方の甲板に移れたエプヴィルは状況を確認しようと叫んだ。
「レーダーを/3 見る限り/2 /04 順調に/6 ダメージを/3 与えておりますわ!/2 エプヴィル様!/1 」
ニスミハが返す。
「姿とらえられた時しか/5 HP/3 見えないけど/2 /7 結構/6 効いてるぽい/2 」
ロアセフィも返事する。
その時、標的の船の火焔の中、一瞬渦巻いた炎から何かが上空に飛び出した。
かなりの高高度に昇り、一足早い朝日を浴びる生き物。目測ではそこまで大型ではなく、空をゆっくりと旋回する。
「……竜?/1 」
白の鱗が陽光を反射していた。
「あれは/1 例の人型の魔物じゃないか?/3 体力も/1 減っているし/2 」
「え?!/6 もしかして/6 激昂状態!?/3 」
エフジドルダとイグドナのコメントに甲板の全員が慌てて戦闘態勢に入る。
「大砲での/4 対空射撃は/1 無理だ!/3 角度が/1 足りない!/2
貴族の人は/1 船内に/5 避難してください!/2 」
イドレードが号令をかけ、甲板に上がった狩猟者全員に緊張が走る。船内に避難したメンバーも固唾をのんで竜の動向を見守った。
しかし、竜は船団の上を旋回した後、北の空へと飛び去って行く。
海は静けさを取り戻し、朝日に照らされた黒こげの廃船だけが残された。




