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149 番外編

※お使いのパソコン・情報端末は正常です。

 セリフに数字が入力されていますが、本作品の仕様です。


 開拓VRゲーム。Walkers(ウォーカーズ) on(オン) the() Frontier(フロンティア)。略称WotF。

 舞台は十九世紀前後の科学技術を持ち、魔法が発達している世界の新大陸。

 開拓者、狩猟者、学者、貴族、四つの開拓民が協力して未開の地を開拓し、拠点となる街を開き、魔物を退ける。


 現在βテスト中。実況を通じて視聴者にも不具合や説明不足をチェックしてもらう方針のために、運営会社がベータテスターには実況を推奨している。



 第二定都の復興祭り。

 イドレードは第二定都の開拓者ギルドに収録されている箱庭ゲームの戦闘データを見ていた。


 事の始まりはエプヴィルが言っていた『すごいNPC』。ミニゲームの特性を利用して一時的に不死者化したエプヴィルが、もう少しで倒されるところだった。との事。

 不死者といえば近づくだけで周囲の魔力を枯渇させ、よしんば枯渇を免れたとしても理不尽な力で蹂躙できてしまうチートだ。

 話半分で戦闘内容を確認したところ目を見張った。



 そもそも、狩猟者としての基本スキルが高い。移動手段もごく自然に足跡や足音などの痕跡を消すための工夫をしていたりと、非常に板についている。

 狩猟者であれば必要なスキルと思いがちだが、この世界に居る獲物の多くは頼んでなくても向こうから襲ってくる魔物であるため、こうしたスキルを体得していない狩猟者は多い。


 箱庭ゲーム内では岩場を使って逃走しつつ、死角から現れ、エプヴィルの動脈をきれいに撫で斬りにしていた。日差しを計算して、陰に入った瞬間、暗順応で反応が遅れることも読んでいた節すらある。

 人相手なら問答無用のクリティカル。HPの高い狩猟者相手でもこれで決着がついていただろう。

 更に致命傷のはずのエプヴィルが倒れないと見るや即座に追撃に移る。

 間髪入れずにもう一方の手のナイフで胸を突いて来る、エプヴィルはそちらには反応して押さえたものの、それはフェイント、本命は返す刀の利き手のナイフ。肋骨に邪魔されない角度で刺し込みに来る、正確に心臓の魔石を狙った攻撃だ。


 この時はエプヴィルが不死者の力任せに掌底で叩き付けたため不発に終わったが。いずれも普通の人間なら対処できる攻撃ではない。


 しかし、もっと後の試合でも手強い魔物相手に首を攻撃している。

「んー……/6 これは/1 もしかするともしかして……/3 」


 生物の急所への攻撃に慣れているのだ。癖になっていると言ってもいいかもしれない。


「……パークサズラムさんなら/1 NPCの経歴とかも/3 調べられるかなぁ/2 」

 ひょんなことから好奇心を出してしまったイドレードは開拓者ギルドを後にした。



「イドレード/1 どうした?/6 」

「エプヴィルさん/1 カーマンっていうNPCの事なんですけど/3 」


 不意にヘルプキャラクターのハロウさん達が降りてくる。

「……呼んでないんだけど/2 」

『イベントが/1 発生するため/2 /04 配信を/3 停止します/2 』

 イドレードの呼びかけに、機械的にハロウさんが答えた。


「え?/6 」

「ん?/6 」

 有無を言わさぬ強制イベントに突入してしまった。しかもエプヴィルも一緒に。という事に気付いた途端、背後から声をかけられる。


「ああ/6 ガナフドラ第一んとこの/1 奇遇っすね/6 」

 当のカーマンが屋台の串肉を頬張って二人の背後に立って居た。


 NPCはイベント以外でプレイヤー同士の会話に割り込むことはない。つまり何かしらのフラグを踏んでしまったらしい。



「エプヴィルさん……/1 彼/1 怒ってます/2 ?/6 」

 恐る恐る聞くイドレードにエプヴィルが怪訝な顔で返した。

「いや/6 世間話の様だが/3 /7 何を/3 やった?/2 /6 イドレード。/1 /7 怒らせるような/2 事か/03 ?/6 」


「あんたのお話し次第っすかね/3 /7 何の話っすか/3 ?/6

 俺らに/5 仕事の/3 依頼とか/2 ?/6 」

 聞いてから返事が返ってくるまで、カーマンは肉を噛んで串から引き抜く。口調も表情もいたって普段のままだ。


 下手にエプヴィルに事情を説明すると巻き込みそうだ。

 通訳された言葉を考えるふりをして、慎重に言葉を選ぶ。

「君に/3 興味が/1 出ただけだよ。/2

 何/3 してた/2 人/01 ?/6 」

「肥えた豚の/3 屠殺っすねー/2 」


「なるほど/6 」

 イドレードは目まぐるしく生存ルートを模索する。エプヴィルの通訳を聞く限りでは、暗に示しているがはぐらかしている、逆に言えばそれ以上踏み込んでくるなという事、決定的な証拠をつかんで公表するとかしでかさなければ平気だろう。

 そう思った時、若干カーマンの声が低くなる。


「ところで/7 西の河港が/1 できる前/2 /05 西の農園から/5 あそこに/5 向かう/2 開拓船の/09 船倉に/5 旦那を/3 放り込んだの/2 /01 あんたっすよね/3 」


「……との事だが/3 /7 イドレード?/1 」

「あー……/6 」

 やらかした。おそらくもう一つの地雷。


「いや/6 エンジさんに/5 悪さする/2 気は/01 なかったんだよ/2 」

 NPCの言葉が分からないイドレードにとっては大学の授業にたびたび出ているエンジの様な実況には、たまに思わぬ情報が転がっている。

 それを期待して見に行った時にちょうどやっていたのがスライム養殖のあの一件だった。

 エンジ本人は忘れていたかもしれないが、ちょうど西の大河の霧の森攻略に乗り出していたイドレードには瘴気を克服し得る手段として刻まれていた。


 そんなわけでイオナの農園で学者や開拓者のNPCを介して、なんとかエンジを船倉に運ばせたのが真相だった。


 ああでもしなければ第一定都に引きこもったままで重い腰を上げてもらえなかっただろうし、終わり良ければ総て良し、と今でも思っているが、それを言ったら殺されそうだ。

 沈黙が重い。


「あんたは/1 仕事は/5 真面目っすからね/3 /7 第二定都の奴らも/3 何度も/6 助けてもらってるし/2 」


 カーマンはおそらく設定上で一般市民のNPCを介した特殊な情報ネットワークを持っている。彼と情報を共有している人物が多数居る。イドレードがイオナの農園でエンジを貨物室に連れていくように学者に言づけていたのを見ていたNPCが居るのだろう。もしくはNPC当人か。

 エンジを狙ってきた暗殺者達を返り討ちにし、今のイドレードの動向に気付いたのも、この情報網と実力があっての事だろうが、それを詮索する余裕はイドレードにはない。


「ただ/7 旦那を/3 どうこうしようってんなら/2 /05 話は/1 違ってくるすけど/3 」


「エンジさんに/5 危害を加える/2 気は/01 ないし/2 /7 何か/3 詮索する気もないよ/2 」

 努めて冷静に言い切った。

 エプヴィルもイドレードの物言いに引っかかりは感じたようだが、納得はしたようだ。

「独断専行は/1 認めているが/2 /7 ガナフドラ内で/5 やってくれ/2 」

 丁寧に翻訳した上で釘を刺された。


「了解っす/6 /7 まぁ/6 お仕事の依頼が/1 あれば/2 /05 受けるっすよ/2 」

 カーマンは普通の調子で、串を片付けるとイドレード達の横をすり抜けて開拓者ギルドに向かっていった。


 イドレードのハロウさんがアナウンスする。

『特殊イベントが/1 終了しました。/2 /7 『暗殺依頼』を/3 行えるようになります/2 』

「いや/6 言葉通じないから/4 無理でしょ……/3 」

「どうした?/6 イドレード/1 」

 エプヴィルの反応を見るに、今のアナウンスは彼には聞こえていないようだ。


 アナウンスは続く。この二つ目のアナウンスはエプヴィルにも伝えられたようだ。

『イベントが/1 終了しました/2 /7 配信を/3 再開できます/2 』


「はぁ/6 」

「おい/6 我は/1 何に/3 巻き込まれたんだ。/2 なぜ/6 今/5 西の開拓の時の事が/1 出てきた?/2 」

「気付かないなら/5 大丈夫です/3 」

「…………今更だが/6 エンジ殿に/3 謝りに行くぞ/2 」

 エプヴィルが先を歩きだす。



 イドレードは少し遅れてその背中についていきつつ、ぽつりと呟く。

「このビルド/1 結構/6 気に入ってるんだよな……/2 」


 ベータ版でまだ一年もたっていないが、キャラに愛着がわいている。

 うっかり変なところで口を滑らせて刺されないように気を付けたい。


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