17
「……あ~」
早朝四時頃、目覚ましに起こされた私は二度寝しようとする気持ちを何とか押し止めベッドから起き上がる。低血圧の私は早起きは苦手なので毎朝彼に起こされているが、今日はある目的のために起きなければならなかった。ガシガシと頭をかき乱し、大欠伸をしていると足元で気配がした。
「んなー?」
飼い猫の猫座衛門が物音に気付いて目を覚まし、何処か呆れた様な声で鳴く。・・・・・・なんでだろう? 何故か、また馬鹿なことをする気?って言われている気がするんだけどな。彼ならこの子の言葉が分かって非常に狡い。今度通訳して貰わないと。
「どれが良いかな? チャイナドレスにするかチアガールにするか……」
私は彼同様に多趣味で収集癖がある。漫画にラノベにヌイグルミ、ゲームにフィギュアにコスプレ衣装。鏡の前で買ったばかりの衣装を体に当て、どれが《《効果的か》》考える。
「よしっ!」
今回の衣装をバニースーツに決めた私は寝間着と下着を脱ぎ捨てると素早く着替える。片方の耳は折れていて後ろはシーム。少し胸がキツいけど、強調されている方が効果的だろうしね。
抜き足差し足忍び足、足音を殺して彼の部屋に侵入する。途中罠があったが今回はギリギリ回避。先週は足の小指を強打したから慎重にもなる。この寝起きドッキリは毎回毎回ドキドキなんだよ。毎日繰り返してたら辞書を叩き落され過ぎてパーになってしまいそうだから週一にしているけどね。
「じゃあ、今日も失礼しまーす」
声を殺して布団に潜り込み、寝息を立てている彼の寝顔を覗き込む。この安らかな寝顔が驚愕に染まる瞬間が堪らないんだよ。まあ、その内彼の理性がどうにかなって襲われるかもしれないけど? そうなったら責任取って貰うだけだし、彼を私の傍に縛り付けられるだろうからね。
今日は少し大胆に彼の頭を抱きかかえて胸に押し当てる。どんな風に驚くか楽しみにしながら私は眠ろうとして喉の渇きを感じ、枕元に置かれたコップに目を向ける。喉が乾いた時用に持ってきて、そのまま寝てしまったのか少ししか減っている様子はない。
「うん、飲んじゃえ」
躊躇せずにコップを手に取り喉を鳴らして飲む。やっぱり麦茶が最高だよ。……寝よ。
「……うーん」
朝日が窓から差し込む頃、悪戯の為にお昼寝をした私は珍しく早く起きる事が出来た。……早起きは三文の徳っていうけど、彼の驚く声で起きれなかったのは少しそんな気分かなと思いつつ違和感に気付く。抱きかかえた彼の頭が少し小さくなっていたんだ。
「むにゃむにゃ」
私の胸に顔を埋めて眠る彼はなんか小さくなっていた。具体的に言うと五歳くらい。寝間着はブカブカだ。私はショタは男だから興味ないけど、このショタは悪くないね。
「また変な能力を覚えて寝ぼけて使ったかな? ……寝よう」
それならそれで彼には変わりないし、驚く声が楽しみだと思いながら二度寝を決行する。二度寝が出来るんだか早起きも悪くないね。起きた時にまだ寝ていられるって凄く幸せじゃないかい?
「おい、おきろ。おきろ、はるか」
ペチペチと弱い力で頬を叩かれた私は目を覚ます。目覚ましを見ればまだ寝ていて良い時間。彼が鞄の中身を確かめたり後ろから髪をセットしてくれる等の準備を代わりにしている間に朝食を食べるようにしている何時もの起床時間まで三十分はある。
「まだ寝かせてくれよ。寝ている間、胸を触って良いからさ」
「バカいわないでよ! なぜかオレは小さくなってるんだ」
「……なーるほど」
大体今の状況を把握する。私達は互いが嘘をついているかどうか位は分かる間柄だし、何らかの要因で肉体が五歳児まで若返ったんだろうね。口調からして記憶はあるけど精神年齢も若返っていると……。
「よし! 思い切り弄ろうかっ!」
辞書を叩き落される心配無しに彼をからかう絶好のチャンスだ。まずは上半身だけ起き上がると彼を抱き寄せ、頭を撫でる。
「やめてよ。恥ずかしいよ」
「うりうり。気にしない気にしない。今日はお姉さんが遊んであげるからさ」
学校だけどこんな状況だから休みだね。でも、どうしようか。彼が病欠とかクラスメイト全員がお見舞いに来るレベルだし‥‥…私が病欠にするか。母さん達が居ないから代わりに看病するって事で……。
あっ、今日は好きな作家の電子書籍が大量に出る日だ。小さくても彼はしっかりしているし……うん、駄目だ。
「何して遊ぶ?」
遊んであげるって聞いた途端に凄く嬉しそうな顔するんだから放置とか無理だ。仕方ないなぁ。今日は私がお世話して、どうせ何かしでかしてこの状況を作ったエリアーデは刹那達に確保して貰おうか。
「キャッチボール!」
「よーし。じゃあ家の中で遊べる柔らかいボールを使おうか、庭で遊んだら近所の人に見られるからね」
まずは朝ごはんを食べよう。あっ、今日は私達だけだから彼が作ってくれるはずだったけど私が作らないといけないのか。
「朝ごはんの卵焼きは甘いの良いかい?」
「えー。オレ、だしまきが食べたい」
……仕方ないなぁ。私は甘いのが好きなんだけど、彼に頼まれたら断れないや。後で本とかも読んであげよう。……うん、なんか良いな。こんな風に私が彼のお世話をするとか。もし結婚するなら尽くしてあげようか。
「めでたしめでたし。‥‥…ふぅ」
キャッチボールを散々した後で昼食を終わらせ、今度は懐かしい絵本を読むこと七冊目、せがまれ続けて読んだけど懐かしいな。昔は私が彼に読んでいて貰ったのにさ。私の膝の上で目を輝かせていた彼はスヤスヤと寝始めている。
「はるか……」
「おや、私の夢を見ているんだね。‥‥…そういえばこの頃だったっけ。君が結婚の約束をしてくれたのはさ」
あどけない顔で眠る小さな彼を抱きしめて頭に顎を乗せる。さて、起きたら何をしてあげようか。君が望むことなら何でもしてあげるよ。
「出来心だったんだねっ! 小さくしたら能力に何か影響が出るかと思っただけなんだよっ!」
夕方、逃げようとしたエリアーデを縛り上げた刹那達が家までやって来た。如何やら昨日の内に飲み物に薬を仕込んだらしい。よし! 有罪確定!!
「悪気しかないじゃないか! 人の迷惑を考えて行動しろよ。……うん?」
袖をクイクイと引っ張られたので下を見れば彼が手鏡を私に向けていた。別に顔に何もついていないし、何の用かな?
「……それでどうやって戻すんだい?」
「そりゃあもう、普通に成長するのを待つ……冗談なんだよっ!?」
刃を呼び出して突き付ければ直し方を話し出す。普通に二十四時間で戻るらしい。じゃあ、明日の朝には戻っているのか。
「……では、神野さんでは心配なので私がお世話します」
「私がしてあげるよー」
刹那と鹿目ちゃんが彼に手を伸ばすけど、彼は私の服を掴んで顔を横に振る。
「オレ、はるかがいい。しょーらい、オレのおよめさんにすんだから」
二人の表情が固まる中、私はついつい彼を強く抱きしめて頬擦りする。小さい君は可愛いなあ。でも、何時もの彼と早く会いたいよ。君が居ないと私の精神が持ちそうにないからね。君が居ないと本当に寂しいなあ……。
さて、じゃあ夕ご飯にしようか。
「何が食べたい?」
「グラタン!」
「よしよし。じゃあお姉さんが作ってあげよう。子猫ちゃん達も食べていくかい? ああ、そこのお前は縛られている馬鹿を持って行ってくれ。埋めるなり犯すなり好きにすれば良いさ」
「しないからなっ!?」
「私にも人権はあるんだよっ!?」
さて、雑音は無視して作るか。マカロニや玉葱はあったけどホワイトソースは無かったな。まあ全部作ればいいか。
「私も手伝うねー」
「お姉ちゃんはオレと遊ぼう!」
「私も貴女と遊びたいです!」
助かった。さてさて、恐怖の大王がキッチンに降臨する前に作ろうか。
「ほら、動かない動かない」
夕食後、二人をお風呂に誘ったけど断られた。代わりに自分達が彼をお風呂に入れるって言ったけど流石に譲れないよ。今は髪の毛を洗ってあげたので次に背中を洗ってあげている。昔は一緒に入ってたのに、急に別に入る様になった時は寂しさで泣いたっけ。
「次はオレが背中をあらってあげるね」
「そうかい? じゃあお願いするよ」
ぎこちない動きで私の背中を洗う彼。ふふふ、こんなタイミングで戻ったら面白そうなんだけどな。
「私の肌は綺麗だろう? 結婚したら触り放題だぜ」
「うん! ぜったいにはるかとけっこんするね」
うん。流石の私も恥ずかしくなったぜ。本来の彼もこのくらい素直ならなあ。あっ、そうそう。この機会に聞いてみよう。
「君って好みの見た目はどんなのだい?」
「はるかだよ」
「オッケー。これは面白くなりそうだ」
良いネタゲット。さて、そろそろ入ろうか。私は幼い彼を抱き締めてお風呂に入る。結婚したら立場が逆になるのかな?
お風呂からあがり、寝ている間に元に戻るだろうとブカブカの寝間着を着せた彼を抱き締めてベッドに入る。何も言わずに私の手を握ったけど、多分これは私が彼の手を握るのが好きだからだ。まったく、彼には勝てないぜ。
「やあ、お早う。昨日は楽しかったね」
翌朝、目を覚ませば彼は元に戻っていた。顔を背けているけど昨日の記憶はバッチリ残っているのか。面白いなあ。
「……世話になった」
「気にするなよ。君と私の仲じゃないか」
照れちゃって可愛いぜ。やっぱり君と一緒にいる時間が一番好きだな。……ハーレムは絶対に諦めないけどね!
「またか……」
朝起きれば同じベッドの中で遥がスヤスヤと寝息を立てて気持ち良さそうに眠っている。昨日小さくなって世話をして貰ったばかりだから気が咎めるが……。
「おい、起きろ」
だから今日だけは猶予を与える。何度か声を掛けてベッドから出ていかなければ辞書を頭に叩き付ける。体を揺すってもムニャムニャと言うだけで起きる様子は無かった。よし、罰の時間だ。
前回は用意してあったのを遠くに移されたので、今回は枕元に隠してあった辞書を手に取り遥の頭に叩き付ける。
「みぎゃっ!?」
相変わらず美少女台無しな悲鳴と共に起き上がった遥だが、どうも様子がおかしい。涙目で頭を押さえて体を震わしていた。まるで泣き虫だった頃の此奴が泣き出す時のように。……いや、まさか。
「……ふぇ」
間違いないっ! 慌てて泣き止ませようとするが間に合わない。何時もの飄々とした態度が消え去り、幼子のように遥は泣き出した。
「ふぇえええええええええんっ!! いたいぃぃぃぃぃぃっ!! ぶったぁあああああああああああああっ!!」
「お、落ち着け。悪かった、謝るからっ! ほら、よーしよーし!」
両手を目に当て泣き続ける遥を抱き寄せて頭を優しく撫でる。徐々に泣き声は小さくなり、グスグスと泣き続けているが少しは落ち着いたようだ。相変わらず世話が焼ける奴だな。
「大丈夫か?」
「……ぶたない?」
「ああ、俺はお前をぶたないよ。遥は良い子だからな。そうだ、朝ご飯にしよう。卵焼きを作ってやる」
「うん! はるか、あまいのがいい!」
幼さを感じるが満面の笑みの遥を見ると此奴が美少女だったと嫌でも思い出させられる。そのままキッチンに向かおうとしたが袖を掴まれて振り向けば此方の様子を窺うように手をそっと差し出された。不安そうな顔だったが、何も言わずに手を取ると一転してパァッと明るい表情だ。
「遥。俺の手を握るのはそんなに好きか?」
「うん! だから、はるか、ぜったいにおよめさんになってあげるね!」
……流石にこの見た目で言われると恥ずかしいな。しかし、今日は土曜で良かった。あっ、午前中にミーティングで皆が集まるんだった……どうすべきだろうか。
「‥‥うぅ」
「ウィンナーを食べたんだからピーマンも食べろ。よし、いい子だ」
「うん!」
叱れば落ち込み、褒めればすぐに明るくなる。幼さを取り戻した遥の扱いは昔の通りで助かったと思いつつ口元を拭ってやる。
「いやー。手慣れてるんだね」
「まあ、物心つく前からの付き合いだからな」
「……ところでそろそろ頭に血が集まり過ぎて拙いから降ろして欲しいんだよ」
「皆が来たらな。遥、見たら馬鹿が移るぞ」
電話で呼び出し逆さ吊りにして天井からぶら下げたエリアーデを放置し、遥の世話を続ける。昔と違ってこう言った世話は焼かなくてよくなったのだがな。いや、精神的な疲労よりはマシか……。
「それにしても二人は本当に仲良しね。うちの子の事、本当によろしく頼むわ」
「出来れば結婚はご勘弁お願いした……冗談だ、泣くな遥」
「……ほんとう? およめさんにしてくれる?」
「ああ、絶対にしてやるから泣くな」
流石に着替えの世話まで焼くのは抵抗がある(食事は俺と一緒がいいと言って聞かなかった)のでオバさんに来て貰ったが、明らかに娘を俺に押し付けようとしている。いや、そもそもウチの両親も遥の両親も俺達がそういう関係だという認識だったな。
冗談交じりに断ろうとするが、またしても遥が泣き出しそうなので慌てて否定するが、確実に外堀を埋められて行っているな、俺。ガクリと肩を落とす俺を見て不思議そうに首を傾げる遥。
この頃の此奴は素直で気弱で甘ったれで俺の背に隠れながら何処にでも付いて来た。今は飄々とした態度で色仕掛けを交えて俺を揶揄い、身内を除く男を毛嫌いして見た目のいい女子を口説き、俺の隣でヘラヘラ笑っている。
さて、何かどうしてこうなった?
「どうも此奴も俺が飲まされた薬を飲んだらしいのだが、俺に合わせて調合したから、一日遅れで精神だけ幼くなったらしい」
「……委員長、一つ聞かせてください」
エリアーデから遥について聞きだした内容をミーティングで集まった皆に説明した時、轟が真剣そうな顔で訊ねてくる。その視線は俺に背中に隠れてビクビクと皆の様子を窺う遥に注がれていた。他の皆も奇異なものを見るような視線を注ぎ、注目されることによって遥は怯えていた。
「いや、俺もどうしてコレがアレになったかサッパリ分からない。突然変異だと思ってくれ」
「……成程」
質問されなくても流石に何を聞かれるか分かったが、正解だったようだ。しかし馬鹿で傍若無人とはいえ遥はそれなりに頭も良いからミーティングに不可欠なんだが今の此奴では役に立たないな。
「おい、エリアーデ。時間経過以外に戻す方法は有るか?」
「ちゃんと解除薬を作っているんだね。でも、ちょっと問題があって……」
差し出された七色に輝く液体が入った瓶を見た遥は、俺の背中に隠れると服を強く掴んで涙を目に溜めてフルフルと顔を横に振っている。これではとても飲ませることは出来ないな。仕方ないからミーティングを始めるか。
「遥、居るだけで良い。だから俺の後ろから出てこい。流石に気になる」
「……出てこなきゃしかる?」
「叱らないさ。俺がついているから安心して座れ」
「……うん」
そっと手を伸ばすと怯えながらも遥は俺の後ろから出てきて……俺の膝の上に座り込んだ。と、轟の目が怖い。それに治癒崎の笑顔も何時もと何かが違う気がするんだが。やはり不真面目に見えるか……。
「遥、退いてくれ」
「やっ!」
……あっ、厄介なパターンだ。こうなった遥は頑として言うことを聞かない。俺にもたれ掛かりご満悦な様子に二人の機嫌が悪くなって行くし、焔は居心地が悪そうだし。
「……退かないなら嫌いになるぞ?」
仕方がないので奥の手を使う。たちまちプルプルと震えだした遥の目尻に涙が溜まり、俺は素早く耳を閉じる。次の瞬間、遥が大声で泣き出した。
「ごめんなさぃいいいいいいいいっ!! きらわないでぇええええええええええええっ!」
割れるような大声でワンワン泣き出す姿に三人は面食らっているが、これが幼いときに俺を怒らせた後に何度も見せた姿だ。結局、この後で俺が折れて慰めてきたのだがな。
「あーもー、嫌わない嫌わない。大好きな遥ちゃんを嫌いになったりするものか」
「……ほんとうに?」
「本当本当」
「じゃあ、けっこんしてくれる?」
「ああ、結婚しよう」
漸く泣きやんだ遥は俺の隣に移動し、嬉しそうに手を握って来る。このままでも良いと思ってしまうが、やはりどんな結果であれ遥が歩んできた人生を否定したくないので元の遥に戻って欲しい。エリアーデから瓶を受け取ると蓋を開ける。ハッカの飴のような匂いがした。
「これを飲ませれば良いのか?」
「あっ、うん。でも、君の口移し限定なんだよ。元々君用に作った薬だし、それ以外は効果ゼロなんだねっ! げふぅっ!!」
反省の色のないエリアーデの後頭部に鋭い蹴りが叩き込まれる。エリアーデの背後で轟は何時もに増して感情が読みとれなくなっていた。
「……時間経過を待ちましょう」
「さんせー」
「うん、それが良いと俺も思うよ……?」
無表情の轟に何時も以上に笑顔が明るい治癒崎、そして怯えた様子の焔。三人の意見も一致したし俺も口移しは抵抗有るので待とうと思ったが横から瓶を奪われ中身を口に突っ込まれる。煮詰まった照り焼きソース見たいな味に思わず顔を背けた時、目の前には目を瞑ってキスを待つように唇を突き出す遥の顔があった。
これは口移しをしろという事らしいが……。
「……むぅ」
躊躇したのが気に食わなかったのか不満そうな声と共に頬を膨らませた遥が俺に抱きついて無理やりキスをする。少し口の隙間から漏れたが問題無く遥は薬を飲んだ。
「……ところでエリアーデさん。口移しに理由は有りますか? 流石に唾液が必要と言うのなら入れれば解決ですし」
「それは盲点だった……がふっ!?」
左右の脇腹に治癒崎の拳が叩き込まれる。挟み込むように撃ち込まれた拳が効いたのかエリアーデは悶絶し、遥も薬が効いたのか普段の飄々とした表情に戻っていた。
「世話になったね。何かお礼をしようかな?」
「いや、構わない。昨日俺も世話になったし……なんだかんだ言って今のお前が好きだからな」
素直な感想に遥は一瞬面食らい、続いて俺の首に手を回すと体を近付け、俺の頬に唇を当てた。
「私の気持ちさ。受け取っておいてくれ、未来の旦那様……なーんてね」
「……」
何時もなら寒気がするなど文句を言うところなのだが、今日は言わないでおこう。何故か言う気が起きなかったからな。さて、ミーティングを……ひぃ!?
顔を向けるとそこには修羅が居た……放置は拙かったか。
それから数日後のこと、俺は勉強を見て欲しいと頼まれて治癒崎の家まで向かっていた。
「いいんちょー、今日は宜しくねー。……色々と」




