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 皆様ご機嫌よう。未だに主人公の名前さえ決めていない愚物(作者)のせいで名乗りが遅れました。私の名はエトナ、鬼姫族の長であるアリーゼ様にお仕えする従者の片割れで御座います。では、本日はそんな私の日常をご覧頂きます。


「起きなさい、クレア。朝ですよ」


「へいへい、分かった分かった。後五分・・・・・・」


 朝早く起床した私は先ず身だしなみを整え、次に朝が弱い同僚のクレアを起こす。何度も揺するも毎朝の事ながら効果が薄く、仕方がないので壁に立て掛けておいた金棒を脳天に振り下ろす。


「・・・・・・毎朝毎朝殺す気か」


「其方こそ毎朝毎朝懲りませんね」


 どうも彼女とは相性が悪い。共にアリーゼ様の御側付きとして幼い頃よりお仕えした仲ではありますが、言葉使いやら日頃の態度やら物申したくなることばかりです。ああ、本当に品のない御方って嫌ですこと。


「早く着替えなさい。アリーゼ様をお起こしに参りますよ」


 主をお起こしするのも我々の役目。クレアがメイド服に着替える間、私も モーニングティーの準備を進める。さて、行きましょうか。


「なあ、エトナ。最近服がキツくなったんだけど・・・・・・」


「不摂生が祟ったのでは? 我慢なさい」


 彼女のだらしない生活態度は目に余ります。間食に隙を見ての昼寝に毎食の暴飲暴食。アリーゼ様の品位に響くと何度口を酸っぱくして注意しても直らないのですから。


 その様なことだから胸に脂肪がブクブクと付いていくのです! 私はどうなのかと? スラッとした高身長に無駄な肉の少ないシャープな体つき。全く問題有りません。ええ、全く有りません!!






「またですか……」


 ノックをしても返事がなく、テレビの音が聞こえるばかり。まさかと思ってドアを開けてみればアリーゼ様はソファーで眠りこけて……いえ、これは。


「気絶してんな」


「恐らく興奮のし過ぎですね」


 電源が付きっぱなしになっているテレビに映し出されているのは婿殿との子作りの参考にしようと取り寄せたAV、乱行物と呼ばれるジャンルですね。


 このお方はなんと言うか……純情なのです。この間も初対面の婿殿にキスして帰った後でベッドで悶えて転がっていました。プライドからか余裕のある態度を演じていますが内面は、という奴です。……ああ、情けない。誇り高き鬼姫族の長だという自覚を持って欲しいものです。



 さて、此処で我々の一族がどの様な存在なのかをご説明致しましょう。まず話すべき事は滅亡間近という事です。実は此処に居る三人を除き全滅しています。いえ、過去に先祖が追放でもされて何処かで生きている可能性もあるのですが。


 我々は高い戦闘能力を持ち、生まれてくるのは全て母親と同じ種族で性別も女ですが、父親の能力や性質を受け継ぎます。より強い子孫を作る為に強い男を求める性質があるのですが、ええ、もうお判りでしょう。理想が高くなり過ぎて子孫を残さずに数を減らしたのですよ。妥協? そんなの出来る筈が有りません。欲しいと思わえない男を受け入れるなど有り得ませんし、とある性質上諦めもしません。



「別に無理してまで人間の嗜好を理解しなくても……」


「断る。私は奴に喜んで貰いたい。その為の努力を惜しむ気はない」


 アリーゼ様を起こし、その身を心配して進言しますが効果は有りません。これこそが我々の厄介な性質。欲しいと思えるほどの相手を諦めない為、一度欲しいと思った相手に……熱烈な恋心を抱くのです。その恋愛観は各々違いますが、アリーゼ様のそれは少々厄介な物のようです。


「もう攫って関係持てば? 一度抱かれたら大丈夫だって。後から好きな様に染め上げれば良いじゃん」


 クレアの様に相手に尽くさせる、自分好みに変える、というのでしたら良かったのですがね。え? 私達二人は相手が決まっているのかですか? 当然婿殿です。アリーゼ様に認められる程の強さであり、この前挑んで見事に負けましたので。


「まさか二人掛かりで負けるなんてな。彼奴を好みに教育するのが楽しみだぜ」


「……主君の夫になる方だという事をお忘れなく」


 なんでこう私の相方は自分の欲望に忠実なのでしょうか? あくまで私達はオマケ。尊き血筋を残すついでに、一人でも多くの同族を増やす為に体を捧げるのです。ええ、それだけですとも。私心など関係有りません。





『だ、駄目です旦那様! すぐ横でアリーゼ様がお眠りに……ひゃんっ!?』


『只今掃除中ですのでもう少しお待ちを。せめて寝室で……あぁっ!』


『お仕置きですね。ええ、潔くお受けいたします。では、どうぞお好きに辱め下さい』


『お任せ下さい。アリーゼ様がお留守の間、その分私がご奉仕を……』





 ええ、私は私事を切り捨てすべき事に励むだけで御座います。では、早速ですがやるべき事が御座いますので部屋に戻らなくては。



「下着を換えて参ります。少々お待ちを」


 何やら呆れ顔を向けられましたが失礼ですね。私は必死で滅私奉公をする忠臣ですのに。






「ただ今戻りました。・・・・・・どうかなされましたか?」


「奴からの指令だ。ああ、忌々しい」


 少々拙いことになった下着を交換して戻ればアリーゼ様達は不機嫌そうな顔になっており、私に封筒を差し出します。開いて中を読めば一方的に、婿殿と神野遥を見張れと言う命令が書いて有るのみ。ああ、非常に不愉快です。


「今に見ていろ。いずれ殺してやる」

 

 手紙の送り主はアリーゼ様が所属する組織『百鬼夜行』の首領にして・・・・・・一族の仇。私達以外の者は殺され、私とクレアを人質にしてアリーゼ様に隷属の呪いを施した相手。ええ、何時か必ず殺してやります。



「ところで思ったのだが、奴の好みはどのようなのか調べた方が良いな。お前達の相手もして貰う必要があるし、一人は怖いから最初は四人でと思っているが・・・・・・」


「お任せください。私が調べて参ります」


 忠義を誓ったアリーゼ様の為、励ませて頂きます。


「じゃあ、私はお茶菓子の味見でも・・・・・・」


「貴女は屋敷の掃除です、草むしりもお願いしますね」


「では、私は引き続いて勉強だな。しかし人間は貪欲だ。結婚イコール子作りなのが私達の一族だが、此処までバリエーションが有るとは。よし! 次は緊縛物を・・・・・・」


「ご自重下さい、お願いいたします」


 ああ、どうして私の主と同僚は・・・・・・私がしっかりしなくては!








「いいんちょー? 凄く優しいよー」


「ふむふむ。それで何か女性の好みに関する情報は?」


 夢の中、それは人がもっとも隙を見せる場所。夢魔の父を持つ私には他者の夢の中に入るなど朝飯前であり、こうして婿殿が所属する組織の後方部隊の少女に話を聞いています。


 しかし彼女が居る支部は随分と変わっているようですね。事前調査に後始末、傷の手当てに実行部隊の送迎等を行う後方部隊は実行部隊に随分と下に見られていると以前の調査で知ったのですが。


 ・・・・・・実際、夢を通して見た彼女の記憶では父親が誰かは不明だそうですし、他の支部でも後方部隊の扱いは悪いとか。ですが婿殿のお父様が支部長を務める支部は随分と違う模様。


「えっとね、やっぱり放っておけないタイプじゃないかなー? 神野さんとか、轟さんとか、お世話されてるもんねー」


「参考になりました。世話を焼かずには居られない保護欲を刺激するタイプですね」


 ならばアリーゼ様の素を見せれば解決です。あのグイグイとエロに突き進む女性を気取った純情で情けないお姿をお見せしましょう。ちょうど隠し撮りした映像が秘密のフォルダーに存在しますから。


 では、次は性癖を調べましょう。早速婿殿の夢の中に向かいますが、趣味嗜好は記憶を読みとってもあやふやな時が多い。ですが忠義を誓った主君の為、やるしか有りません。






「・・・・・・仕方がないので体を張りましょう。さあ! きつく縛って吊した私を犯しますか? それとも服を破り捨て組み伏せて無理矢理? 犬のような格好をさせ、尊厳を奪った上で自ら純潔を捧げさせますか? ああ、卑猥な言葉でねだらせるというのも有りです、興奮します。 さあ! 覚悟は出来ていますのでご命令を! 主君の為ならどんな屈辱にも耐えましょう!!」


 早速婿殿の夢に入った私は荒縄や破りやすい服、各種道具を取り揃えて覚悟を決めます。ああ、どんな目にあっても心は主君の物。決して欲望に屈したり致しません。堂々と、くっ殺せ、と言ってあしあげますとも。


 では、ハーリーハーリー! どんな目に遭うか妄想・・・・・・想像しただけで興奮・・・・・・恐ろしいですが仕方有りませんよね。


「今すぐ帰れ、もう来るな。・・・・・・貴女はマトモだと思ったんだがな。俺も見る目が無い」


「あれ? 夢の中なのにどうして意識がしっかりと? まさかその手の能力も・・・・・・」


「良いから帰れ!」


 視界が光に覆われ、やがて視力が回復すると私は夢から追い出されていました。







「これが放置プレイですか・・・・・・」


 婿殿はかなりのサドであったと報告せねばなりませんね。さて、その前に下着を新しいのに交換しないと……。



「ああ、まったく忙しいですが仕方有りません。主と同僚が変人ですし、唯一まともな私がしっかりしなくては……」
















「・・・・・・一体どうしたんだい? 随分と疲れた様子で膝枕をしてくれなんてさ」


「何も聞かないでくれ。こうしたら落ち着くんだ」


「はいはい、分かったよ。満足するまで私の膝を堪能したら良いさ。でも、私も君の寝顔を堪能させて貰うよ。……って、もう寝てるよ。……疲れたら何時でも言ってくれ。私に出来るのはこのくらいだからね」




~オマケ~



「教えて! 遥さん!! 今日は私達の評価表についてだ」


「基本の五教科と家庭科、先生のコメントを紹介しよう」




 委員長


『国5 数5 理5 社5 英5 家5』


「昔から勉強はできるよね、君って。私もお世話になってるし、テスト前には勉強会を開いているとかお人好しな事だよ。私と二人っきりで勉強したくないのかい?」


「いや、別に? 先生のコメントは『私達も頼りにしていますが、もう少し肩の力を抜きましょう』、だそうだ。恐縮の限りだな」


「いや、だから肩の力を抜こうよ。私みたいにさ」


「お前は抜き過ぎだ」


 神野 遥


 国3 数5 理5 社4 英語4 家5


「……どうも心理とか男の事とか理解出来なくてね」


「『もう少し節度を持った行動を』だそうだ、馬鹿者が」


「別に良いじゃないか、成績なんてさ。もしもの時は君に嫁げば良いんだし」


「俺を現実逃避の材料にするな。では残りの三人を一気に紹介だ」



 轟 刹那


 国5 数3 理3 社会3 英3 家2


『問題行動は有りませんが、もう少し団体行動を心掛けましょう』



 焔 伊吹


 国3 数4 理4 社3 英3 家3


『少し落ち着きが有りません。まず深呼吸してから行動を』


 田中 由愛


 国3 数3 理3 社3 英3 家3


『特に可もなく不可もなし。もう少し自己主張をしてみましょう』





「こんなもんか。……おや? もう一枚紛れ込んで……」



 治癒崎


 国5 数5 理科5 社5 英5 家1


『料理だけは二度と作らない様に』

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